みなさま
毎度毎週お騒がせします。
第102回広島デモの報告です。
今週は私どもの仕事の関係で、チラシ作成を早々にはじめました。
テーマは「なぜ原発をやめられないのか?」
哲野が前から一度チャレンジしてみたいという角度でトライしてみることにしました。
それは日本に原発など核事業を継続させたいという国際的な圧力の観点がひとつ。
現実に現在は核分裂炉から核融合炉とさらに恐ろしいステージに国際的には進んでいます。
ご承知の方も多いと思いますが、核融合炉はこれまでとは桁違いにお金のかかる事業で、
アメリカを中心とした国際協力で開発中です。
今の時点で日本に核事業から手を引かれるのは
核融合炉開発だけではなしに
非常に困った事態になることは容易に想像が出来ます。
そこで、歴史的に核開発の流れを辿りながら
1.戦後核開発は国連主導で進んできたこと
2.核開発は戦後国際社会の共通課題となっていること
3.その流れの中に日本が位置づけられていること
4.したがって日本に核開発継続の国際的圧力が働いていること
などを俯瞰してみようという観点です。
ただ、アメリカなどは日本に核燃料の再処理事業はやってほしくないようで
そのアメリカの事情はいつぞや原子力資料情報室の伴さんが
原子力委員会で講演した通りだと思います。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei2004/sakutei25/siryo3.pdf
さらに今回のチラシのもう一つのトピックは
放射能安全神話(低線量無害論)の浸透が日本の原発事業を生きながらえさせている、
言いかえれば原発がやめられない隠れた真の理由は
放射能安全神話にあることをみてみたい、という点です。
中川保雄の『放射線被曝の歴史』を読んだとき
中川保雄が「日本の反原発運動はICRP批判から始めるべきである」という意味合いのことを
書いていて、衝撃を受けると同時にこの言葉の意味をじっくり考えてみた結果が
放射能安全神話が日本の原発を生きながらえさせている、という結論となりました。
チラシ自体はあいも変わらず文字と表ばっかりで一般受けしないだろうな~と思いながらも作成しました
いつもよりさらに減らして25部準備して持っていったところ、
警察の方に渡したのも含め、9部しか売れなかったという惨憺たる結果となりました。
9部の中身も最近いつもチラシを取りに来てくれる固定客の方が4人。
事務所が風通しがわるいため涼もうと思って早めに集合場所に行きました、が
結構風もなく、当て外れでした。
台風は広島から外れ(哲野が事務所の掃除をしたせいです)
全く雨が来ると感じさせない、美しい夕空となりました。
▽デモ後の夕空です
待っていると大歳さんが登場。
チラシの内容で喋っていると警察の方が来られたので指令書の確認。
そうこうしていると、じゃけえさんが現れました。
4人で出発です。
▼今回のチラシ
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20140711.pdf
▼今回のプラカード
スピーチトップバッターは大歳さん。
哲野とスピーカーを持った網野がそれぞれプラカードを持って先頭を歩きます。
じゃけえさんがチラシ撒き。
大歳「今回のチラシのテーマは「なぜ原発をやめられないのか?」ということでお配りしています。
「なぜ原発をやめられないのか?」という問いには
視点どこにおくかによってさまざまな答え方があると思いますが、
今回のチラシでは、この問いに対して時間的にも空間的にも
非常に長くて大きな視点で解説がされています。
ぜひご覧になってください。
核開発は原子爆弾を生み出したマンハッタン計画がそのスタートになっています。
人類の歴史は戦争の歴史といっても過言ではないぐらい
人類は数々の悲惨な戦争を体験してきました。
「なぜ人間は戦争をするのか?」という哲学的な問いには、
それこそ本が何冊も書けるほどの大きなテーマですが、
近代に関しては、それは経済の延長で起こされるといってよいと思います。
例えば、表面的には民族・宗教的に争っているように見える戦争も、
それは石油や天然資源をめぐる利権の争奪戦であったりするものです。
石油が自分の国からあふれてくれば、それを売って外貨を稼げる、
自分たちで消費すれば電源や動力源が得られる、
これによって工業力や生活水準を向上できる、
このようにして国の力を上昇させれば軍事力も強化できる、
軍事力を強化できれば周辺国にたいして優位性を保つことができる、
ということで資源を持つことが戦争を起こすのに、
いかに大きな動機となるかが理解できます。
この意味において第二次大戦中には開発された
核のエネルギーは軍事的にもエネルギー分野においても
革命的なものになるはずでした。
そしてそれは成功したかに見えました。
核のエネルギーは石油とは比較にならないほどのエネルギーを取り出すことができる、
それによって平和で豊かな生活を得ることができる。
世界中の人たちがこの新しい技術に注目しました。
しかしこれははっきりいって幻想でした。
核開発には民間企業や金融機関だけでは
どうにもならないほどのお金がかかりました。
これは国家予算を使わなければならないほどのものです。
原発の中心技術となるのは核分裂反応をめぐる諸技術ですが、
こうした技術はすべて特許化・利権化されていて
米国では、連邦政府以外、民間ではGEやウェスティングハウスといった
マンハッタン計画以来の一握りの企業群がこの特許を押えています。
つまり米国市民の税金で開発された技術の特許を
民間企業が持っているということになります。
(後記:これは核技術だけではなく米国の軍産複合体性に特徴ですが、
お金がかかる基礎研究を税金で賄い、
利益が見込まれるところでそれが企業のものになっていく構図となっています。)
東芝の子会社になったウェスティングハウスの開発した原子炉を東芝がブルガリアに原発を納入すれば、
それだけで、旧ウェスティングハウスのには特許権を扱う子会社、
ウェスティングハウス・ライセンシング・コーポレーションに特許料が入ります。
このようにして私たち日本人の支払っている電気料金の一部も
GEやウェスティングハウスに流れていっています。
ウェスティングハウスは、原子力潜水艦や原子力空母に搭載される、
民生用原子炉とは比較にならないほど高いスペックを持つ加圧水型原子炉を開発しました。
このように原発マネーのお金の流れを見ていくと、
そこには米国もしくは米国軍産複合体制を頂点とする収奪システムがあるのがわかります。
日本の原発メーカーが途上国に原発を売りまくれば、
この収奪システムはどんどん拡大強化されていきます。
核のエネルギーが開発されても、石油をめぐる対立がなくなったわけでもなければ、
電気料金が格段に安くなったわけでもありませんでした。
資源や技術を持つ者だけが独占的・支配的にふるまうことができる経済構造は、
原発が増えるにつれ弱まるどころか、どんどん強化されていきます。
いま日本の中で原発を推進している勢力とは、
この巨大な構造の中で少しでも自分たちのポジションを高めたいと考えている人たちです。
しかし、日本でも米国でも原発を持っているどの国でも、
その原発推進勢力がひた隠しに隠していた問題が、放射能問題。
さらに詳しく言えば低線量内部被曝の問題です。
ここが彼らのアキレス腱です。
私たちがしつこくこの問題を扱うのもこのためです。
チラシでは詳しくそのことに触れていますのでどうかご一読ください。」
次にじゃけえさんにマイクが渡ります。
じゃけえさんはチラシの内容を要約してスピーチ。
また、第1回「なぜ原発をやめられないのか」のチラシの内容も紹介しました。
じゃけえ「…そして広島に原爆を落とした当日、アメリカの大統領は
これからは核エネルギーの平和利用を推進していく、という意味合いの演説をしています。
つまり、先に核の産業利用を念頭に置いたうえで、
原爆の開発を行い、広島に投下したのです」
と付け加ええました。
次のスピーチは哲野です。
哲野は低線量内部被曝問題に触れて、
哲野「政府や厚労省、被曝問題の専門家と称される人たちは
低線量被曝は人体に影響があるという科学的証拠はないと言っています。
ところが、低線量被曝は言いかえれば低線量の内部被曝は人体に深刻な影響を与えるという
科学的証拠は山のようにあるのです。
その一部を今お配りしているチラシにご案内しております。
中で、最も興味深い証拠は、ドイツ連邦政府が実施したKiKK研究です。
意味合いは「原発周辺の小児がん研究」ということになります。
▼
http://www.bfs.de/en/bfs
この研究は2003年から2007年の間にドイツの全ての原発周辺5km圏の子どもたち
この場合、子どもたちというのは5歳以下をさしますが
白血病などの小児性がんについて調べた研究です。
結論から言うと、原発5km圏では小児性白血病が有意に増加している、という内容です。
面白いのは、このKiKK研究を批判しているICRP派の学者、例えば日本では
前の原子力安全委員長代理、松原純子氏などは
このKiKK研究はデタラメだと主張しています。
松原氏によれば、この地域の被曝線量は年間で1.9μSv程度にしかすぎない、
この程度でがんなどが発生するはずがない、と主張します。
それでは松原氏がなぜ、そんなはずがない、と言うかというと
ICRPのリスクモデルに照らして言っているのです。
松原氏によれば、小児性がんを発生するためには最低でも
年間被曝線量2~30mSv以上なければおかしい、と主張します。
言い換えればICRPのリスクモデルからいえば、1000分の1以下の線量で小児性がんが発生し
松原氏はそんなはずはない、と主張していることになります。
しかし目の前の事実は、小児性がん(白血病)は有意に発生しているのです。
しかし松原氏は目の前の事実を否定しICRPリスクモデルは正しい、と主張しているわけです。
それではICRPリスクモデルは何か具体的な根拠があって出来上がっているのかというとそうではない。
そのリスクモデル自体がまだまだ仮説の域にとどまっています。
ですから、真に科学的な態度は、目の前にある事実を承認し、
じぶんたちの仮説が間違っていると認めることなのです。
数μSvでいったい、小児性がんが発生するんでしょうか?
KiKK研究を信じるならば、発生していることになります。
またこのことは科学的にも裏付けられる話です。
というのは、この数μSvが内部被曝で発生したものとすれば
(実際そうなのですが)ICRPのリスクモデルは内部被曝を100分の1から1000分の1過小評価している
とする科学的研究が山ほど存在するからです。
内部被曝と外部被曝が同じリスクであるとするICRPモデルが
間違っていて、実際には100~1000倍、私は1000倍なんてもんじゃなくてもっと大きいと思いますが
正しいとすれば、それにほぼ合致する事実をKiKK研究は科学的に裏付けたことになります。
100mSv、いや、1mSv以下の極低線量被曝で健康損傷をしているとする
科学的根拠は今日では山のようにあるのです。」
次に網野にマイクが渡ります。
網野は内部被曝の問題を中心にスピーチしました。
網野「…内部被曝と外部被曝は全く違うメカニズムで発生しているというのは
アメリカは1945年、広島・長崎の原爆投下以前にすでにある程度わかっていたことでした。
兵器級プルトニウム製造、兵器級ウラン製造(ウラン濃縮)の工場がすでに出来ていたわけですが
ここの労働者に様々な病気が内部被曝で発生していることがわかっていたからです。
1946年にこうした核施設労働者の被曝上限を決めるためにアメリカに放射線防護委員会がつくられましたが
この時、外部被曝を検討する第1委員会、内部被曝を検討する第2委員会と明らかに
内外被曝を区別して研究・調査が進行しました。
今日から見れば、正しい処理です。
外部被曝委員会は早々と結論を出したのですが、
内部被曝委員会は結論を出しませんでした。
なぜ内部被曝委員会が結論を出さなかったのかは色々議論のあるところですが
結果としてこの放射線防護委員会は、
内部も外部も同じ健康リスクという、とんでもない結論を出し
この結論がそのまま1950年に成立するICRPに引き継がれていくのです。
その科学的外観を装うため、広島・長崎の原爆被爆者寿命調査が用いられましたが
その調査は高線量外部被曝にはよくあてはまる結論でした。
が、内部被曝、とくに低線量内部被曝には全く当てはまらない調査であり研究でした。
ICRPは低線量被曝で健康に害あると言う科学的証拠はない、と主張していますが
これは正確に言えば、科学的証拠がないのではなくて
『低線量内部被曝については調べてないのでわかりません』という意味です。
みなさん、言葉にごまかされ、騙されないようにしてください。
私たちが無知だと思って、なめてかかっているのです。
無知でない事を示してやりましょう。」
あと網野は、低線量内部被曝によってウクライナやベラルーシでチェルノブイリ原発事故を知らない
次世代(ポスト・チェルノブイリ世代)の健康影響が深刻になっていることを考えれば
いま、フクシマ事故の影響で日本全体が内部被曝の危険に曝されていても、
いま、手を打てば、将来の被害を最小限に抑えることができる、と強調しました。
元安橋に帰ってきてデモ終了。
ベンチで4人でだべっていると、元安川に珍しい光景が出現しました。
広島の住吉神社(加古町)の船渡御神事に出くわしたのです。
船渡御はご神体を海や川に戻すという神事で、全国の住吉神社に共通した神事です。
この一帯は、今は広島平和公園として川沿いの岸には民家などありませんが
原爆が投下される前、この一帯は広島随一の繁華街で、岸辺にはズラリと色街も含めて
様々な民家が密集していました。
▼その様子は、広島平和記念資料館のジオラマで想像することができます。
(広島平和記念資料館の1Fにあるジオラマの一部)
ですから、かつては広島市民はこの民家の窓から夕涼みがてら、食事をしたり酒を呑んだり
おしゃべりしたりしながらこの船渡御神事を眺めたことでしょう。
4人ともそんな光景を想像しながら目の前の住吉さんの船渡御神事に見惚れておりました。
哲野「今日はもうけものしたねえ・・。」
全員がうなづきました。
以上ご報告を終わります。