中国新聞12月15日朝刊に提訴方針決定の記事が掲載されました。
広島で毎週金曜日18時から、元安橋東詰をスタートして歩いています。(休止中)
新聞の初歩的なトリック-網野と哲野の会話-
網野が9月5日付けの朝日新聞(大阪本社版)の「九電、9月中間期黒字へ」「川内再稼働で改善」という記事を読んでいて、
網野:九電のこの記事、なんかおかしいんだけど…
哲野:どれどれ?おじちゃんが見てあげよう。この記事がどしたん?
網野:川内原発再稼働で収支改善して黒字になったというんだけど。
哲野:キミ、アホか!
網野:(ムッとして)何よ、その言い方!物言いに気をつけてよ。
哲野:これ、初歩的なトリックよ?気を悪くするのはしょうがないけど、僕が言うとおりやってごらん。そのあとで怒るんなら怒ってもいいけど…
というわけで哲野が作れといった表が次の表です
網野:作ったわよ。これがどうしたのよ。
哲野:その数字は、朝日新聞の記事通りだろ?
網野:そうよ。それ見ながら作ったから。
哲野:じゃ、対前年改善額を入れてみろよ。
と、いわれて作ったのが次の表です。
網野:作った。意外と大きく改善してるのね。
哲野:川内1号機の利益改善寄与はいくらと書いてある?
網野:110おくえん~。
哲野:表に入れてごらん。
で、出来上がったのが次の表です。
哲野:それじゃあ、もし、川内1号機が稼働しなかったとしたら、経常利益の改善はどれくらいになる?
網野:えーと対前年改善額から1号機の寄与を引けば出るよね?
哲野:そうなるよな。
で、出来上がった表が次の表です。
哲野:この表じっと眺めてごらん。何が言える?
網野:これ、川内1号機が稼働しようがしまいが、大幅な改善じゃん!
哲野:記事を一目みたらわかるじゃん、これくらい。
網野:哲野は一目みたらわかるの?すごぉ~~い。
哲野:アホか!実社会でビジネスやっとる人間だったら、一目見たらわかる!数字眺めながら頭で表組みしてるんだから。キミだって、最近見積作らせたり、営業交渉行ったりしてるじゃない。こういう表組みが頭で組めないということは、まだ経営の頭になっていない、ということだよ。世の中の実社会で働く人間というのは、こんなことしょっちゅうやってるの!一目見たらわかるっていうの!凄くもなんともないの!
網野:これが一目見たらすぐわかるんだったら、なんでこんな記事になるの?
哲野:この記事、どこを嘘ついてる?
網野:だって、川内原発再稼働で九電が黒字になったって言ってるじゃん。
哲野:どこで言ってるの、そんなこと、よく読んでごらんよ、どこにもそんなこと書いてないから。
網野:でも見出しに「川内再稼働で改善」って書いてあるじゃん!
哲野:だから初歩的なトリックだって言ってるじゃん。新聞がしょっちゅう使う手じゃん。記事を注意深く読む人なんか、ほとんどいない。見出しを見てまず頭に予断をすり込む。それからその予断から読者に記事を読ませる。読者は思い込みがあるから、見出しのようにその記事を読んで結局残るのは印象だけ。もう18世紀から新聞が使い古している手だよ、これ。
網野:なるほど~。いつも注意されてるわね、言われてみれば。
哲野:だろ?反原発運動やってるわけだから、僕たちは。まず素直に読んで、素直に理解して、おかしいところをキチンと見つけて、それを指摘できるようになっておく、と。これが習慣付かないと、いつまでたっても新聞に誤魔化されっぱなしになっちゃうだろ?これでも怒るかね?アホといわれて。
網野:アホだなぁ私。
哲野:次にこの記事、非常におかしい。110億円の黒字寄与だと言っている。これ、何が根拠なんだろうか?
網野:そういえば、書いてないね、これ。
哲野:うん、書いてないのよ、それが。肝心要の話が。9月期ということは、中間決算だから、2015年の4月~9月の6ヶ月間。まだ9月が終わってないから、この中間決算は予想ということになる。川内原発はいつから再稼働する?
網野:9月10日か11日でしょ?
哲野:今の予定ではそうだ。ということは、9月期中間決算のうち、川内1号機が寄与するのはわずか20日間でしかない。それで110億円の黒字寄与?ちょっと信じられない話だね。
網野:9月1日からの1ヶ月間かもしれないじゃない。
哲野:それはありえない。
網野:なぜ?
哲野:川内1号機の使用前検査の最終合格証がおりる予定になってるのはいつだ?
網野:今の予定では9月10日か11日。
哲野:そう。じゃあ、その前に営業運転開始されたら何が起こる?
網野:原子力規制委員会の規制基準適合性審査合格前に営業運転が始まることになる。これは原子炉等規制法違反になる。
哲野:だろ?だから、営業運転はどんなに早くても9月10日以降じゃないといけない。規制基準適合性審査合格前の電力を売って、それを決算に繰り込めば、これはバンとした炉規制法違反だよ。
網野:そうだよねえ。ということはやっぱり9月1日から、ということはないのか。
哲野:だから、20日間の稼働で110億円の利益と、この新聞は書いている。もっともこの記事を書いた記者が、この問題に注意を払っているとは思えないけど。九州電力が発表したそのままを書いているはずだ、これは。面白いのはこの記事が経済欄に出ているということだ。こんな裏も取ってないような曖昧な記事をよく経済欄に載せるよ、この新聞も。相当いい心臓をしている。だから経済人は経済記事を一般紙で読まないんだよ、バカバカしいから。専門紙か、日本経済新聞で読んで情報を取る、とこういうことになっとるわな。やっぱり。
哲野:それと、この記事は極めて重大なことを書いていない。2年間以上、九州電力の原発は売り上げに寄与していなかった。売り上げゼロだ。ところがその売り上げゼロの原発に九州電力がいくら金を使ったか。たとえば、2015年3月期の有価証券報告書を見てみると、原発の維持費だけで12ヶ月間に約1360億円(その前年は約1320億円)の金を使っている。今期は稼働を開始したので、おそらくは1600億円くらいになるだろうな。だから、前年に使った1360億円はまるまる赤字要因。原発持ってなきゃあ、前年だって楽々黒字だったんだよ。このことを全く書いていない。ま、この新聞は電気事業連合会の御用新聞だからね。電力会社に都合の悪いことは書かない。
網野:原発関係ないじゃん!で、なんで今期、中間決算でこんな大幅な黒字になったの?
哲野:やっぱり第一番目の要因は料金値上げだったよね。
料金値上げの寄与がすごく大きい。まだ今期の有価証券報告書の分析をしてないんだけれども、間違いない要因は九州電力がコストの高い火力発電から、コストの低い火力発電に主力を切り替えつつあることが大きいだろうね。九州電力の火力発電っていうのはこれまで石油発電、ガス発電、ばかばかしいくらいの高コスト体質だった。それを、コストの安い石炭発電に極力切り替えた、これが大きいだろうね。
次の要因は、電源開発からの供給に全面的に依存したことが挙げられる。電源開発から購入する電気は1kW/h約9円と、非常に安い。九州電力が自分のところで作る電気よりはるかに安い。だから利益改善のためには電源開発からの電気をどれだけ買うかが大きな問題になる。
網野:電源開発の火力発電所ってどこにあったっけ?
哲野:長崎県の松浦発電所(1号・2号機で200万kW)、松島火力発電所(1号・2号機で100万kW)の2カ所で300万kWの供給能力がある。ただし、2014年3月に松浦の2号機が事故を起こして、しばらく発電能力が約150万kW弱になっていたけど、2015年6月に完全復旧して今は合わせて300万kW体制になっている。
次に大きな要因は、世界的にここ1年間、原油価格が、これもう暴落といっていいくらい、価格が下がった。このため引きずられてガス価格や石炭価格も下落した。この要因も大きいと思う。
網野:じゃあ、原発なしのほうが、経営的には楽ってことよね。
哲野:特に今年はそう言えるよ。というのは、朝日のこの記事をよ~く見たら面白いんだけども、九州電力は中間期で凄い黒字を出す。だから、通期(2015年4月~2016年3月)ではもっと大きな黒字になるはずだ。ところが、社長の瓜生さんは今の経営効率を続けるなどすれば、黒字化は可能だ、とえらい控えめな事を言っている。ちなみに前期は経常損失が736億円、純損が1146億円だった。今の勢いで行けば、黒字が経常利益で2000億円近くになるはずだ。なのに、社長の瓜生さんは黒字は可能だ、と言っている。可能どころかもう確約状態じゃないか。
網野:なんでこんな控えめなことを言ってるの?
哲野:実は、今期の今までの数字には、川内原発を規制基準適合に持って行くための対策費用が含まれていないんだと思う。
網野:それって、規制基準適合性審査の、工事計画変更認可に伴う工事のことだよね?
哲野:そうそう。この工事はまだ終わってない。だから、今年度分は中間決算で費用計上していない。でも、通期決算では費用計上せざるを得ない。この費用があるから、大幅な黒字という風にならないんだと思う。おそらく、川内1号・2号だけで、推測になるけれど1200億円以上にはなるんじゃないか。この費用は一部資産計上出来るものもあるけれど、川内1号が稼働ということになれば、大部分、費用計上せざるを得ない。この費用があるから、瓜生さんも通期の見通しで黒字は可能だと控えめに言わざるを得ない、と、こういうことじゃないか。
網野:それじゃあ、料金値上げとか、石炭火力への合理化とか、世界的なエネルギー資源安の恩恵で上げた利益を原発につぎ込む、とこういうことになるわけ?
哲野:そうなるよな。
網野:バッカじゃないの!
哲野:そ、原発は金食い虫なのよ。
網野:どこがコストの安い発電手段なのよ!大バカじゃない!
以下は、哲野から広島1万人委員会への報告メールです。転載いたします。
広島県選挙管理委員会 選挙運動期間中の市民の政治運動について
広島1万人委員会のみなさま
既報通り本日(2015年3月31日)午後2時頃、広島県選挙管理員会を、哲野、網野、じゃけえの3名で訪問し、公示後選挙運動期間中の政治活動について、約30分程度面談の上、ガイドラインを聞いてきましたので報告します。
今日の面談の対応者は、広島県選管の専従職員で、かなり理解の深い、憲法との関連も十分に踏まえた対応だったと思います。
(広島県選管は事務局長1名、次長1名、専従職員5名の常時7名体制だそうです)
1.政治団体は、選挙期間中、活動の制約を受ける
問題は政治団体の定義ですが、公職選挙法の解説書の該当箇所を示され、「政治団体とは、特定の政策・施策を推進、賛成または反対の目的をもった団体をいう」と、解釈できる、とのことでした。
「政治団体とは、一般に政治資金規制法の届け出団体を指すのではないか?」と問い返すと、もちろん、届け出団体を含むが、一般にこのようにも解釈できる、という回答。
しからば創価学会は宗教団体であるが、一方で国立戒壇の実現を目指すとしている、国立戒壇は、宗教的主張であると同時に明白に政治的施策でもある、創価学会は政治団体であるのか?
また日本のカトリック団体の多くは、核兵器廃絶を主張に掲げている、核兵器廃絶は明白に政治的主張であり、政策である、日本のカトリック団体の多くはまた政治団体であるのか?
私たちは、伊方原発の再稼働、原発一般の再稼働に反対している、私たちは市民運動団体であり、いかなる政治政党の党派活動にも与しないが、私たちもまた政治団体なのか?
その解説書の解釈は、政治団体について際限なく拡大解釈ができる、事実上、選挙期間中の活動は自粛せよ、ということにならないか、と問うてみました。
2.もちろん、公職選挙法で想定する政治団体とは、一般市民運動団体や宗教団体を想定したものではなく、党派活動を目的とする団体を想定している、これは一つの解釈だ、ただ、グレイゾーンがかなり広いということを示したかっただけだ、という返事。
現実に、広島県選管のサイトには政治団体として次のようなページを掲げています。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/sennkyokannriiinkai/1292475684324.html
3.グレイゾーンに関し、公職選挙法違反にならないガイドラインを示して欲しい、との要望に対してはガイドラインを示すことができないとの返事。
それでは私たちとしては非常に困るので、何らかの考え方を示して欲しい、というと、
「特定の政党や候補を応援したり、あるいは不利になる言動は、選挙活動になる」
という定義が唯一の指針である、との返事。
すなわち、活動では市民的良識の範囲で、上記指針を守って政治活動(具体的には街頭デモ)を行って欲しい、裁量権は市民団体側にある、またその責任もとって欲しい、とのこと。
4.伊方原発に関して、広島市議会議員のアンケート結果を示して、これが特定政党や特定候補者の有利あるいは、不利になるかどうか、すなわち選挙活動になるのかどうか、見解を問うたところ、「この内容を街頭で配布することが選挙運動になるかどうかの判断は差し控えたい」との返事。
このアンケートは、あくまで現在市議会議員の見識や姿勢を示したもので、これは私たちの活動報告だ、それが証拠に、このリストには、今回引退を決めて立候補していない市議会議員が少なくとも3名はいるし、また市議会議員に新顔立候補した候補者は全く対象外だ、と説明すると、
「それでは、これを選挙活動のビラないし、チラシとは言いがたい。しかし、私の判断は差し控えたい」との回答
5.上記指針の範囲で、要するに市民的良識を守って、自分の活動に責任と十分納得のいく説明が備わっているなら、それを選管として、選挙活動期間中の選挙活動とは断定しがたい、という判断なのだと解釈しました。
またその解釈を示すと、それで妥当である、との回答でもありました。
6.4月11日の伊方デモで、アンケート結果を示すことについては、やってみるべきだというのが私の判断ですが、みなさんいかがおかんがえですか?
哲野イサク
http://www.hiroshima-net.org/yui/pdf/ikata_houkoku_201503.pdf
みなさま
原田です。
ポスティングチラシについて報告します。
1万人委員会が行った、広島市議会議員を対象とした原発についての認識を問うアンケートの結果を、広島市民に広くお知らせしたいと思い、新聞折込や各戸配布を考えてみました。
先週3月14日(土)の伊方デモと街頭アンケートの後で、哲野さん、網野さん、重広さんと相談し、網野さんにレイアウトしていただき、文案を原田が考え、
翌15日(日)にもう一度集まって検討して版下を作成し、その後、ポスティング業者にチラシの内容をFAXして、翌16日(月)の朝、業者と連絡を取った上で、印刷に出してもらうという手はずになっていました。
アンケート結果を配布してほしいと業者に依頼したところ、業者から「念のため、内容を確認させてほしい」とあったからです。
もし万一、業者が引き受けない場合は断念する、ということも話し合っておきました。
結果としては、業者が、「この内容では配布できない」と断ってきました。
理由を尋ねたところ、議員の個人名が入っている上に、「回答拒否」といった表現があり、特定の議員を誹謗しているととられかねないからだ、ということでした。
納得できないとは思いましたが、引き受けてもらえない以上はどうしようもありません。
ポスティング業者への依頼に先立って、中国新聞の折込にも問い合わせてみましたが、市議会議員へのアンケート結果だという時点で、断ってきました。
非常に大きな、不吉な「壁」のようなものにぶち当たった、という感覚を持っています。
(「今まで気がつかなかったの? 子どもみたいだね」と言われそうな気がしますが。)
この広島の(広島だけではないかもしれませんが)「普通の人たち」が持っている「自粛」の空気感のようなものと言ったらいいのでしょうか。
特に「商売」に関わるところで、(特に、政権党と対立するような)政治的な色を出すかもしれないことを、タブーのように避ける空気です。
純粋なお金を介しての契約として、違法でもなく、反社会的でもないチラシを、新聞に折り込むor各戸に配布する、ということさえ、「自粛」してしまいます。
ファシズム政権の成立を待つまでもなく、「ものが言えない」「必要な情報が伝わらない」という状況に覆われているように感じます。
広島市民の生存権を守るために伊方原発再稼働に反対する1万人委員会
http://hiroshima-net.org/yui/1man/
<参考資料>川内原発再稼働“同意”記者会見―伊藤祐一郎鹿児島県知事 2014年11月7日
【転載】
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/restart/sendai/restart_sendai_ito_20141107.html
2014年11月7日、鹿児島県議会での九州電力川内原発1・2号機に関する“再稼働同意決議”(再稼働陳情書採択)を受けて、鹿児島県知事として“再稼働同意”を表明した。これはその直後の記者会見動画テキスト起こしである。
2014年11月7日時点では、九州電力川内原発1・2号機は、原子力規制委員会から、『原子炉設置変更許可』(原子炉等規制法43条の8の1・2項及び3の6第1項)は取得していたものの、合格3要件のうち『工事計画変更認可』(同法45条の3の9第1・2項)、『保安規定変更認可』(同法43条3の24第1項)の2要件は取得していない。
(1号機の工事計画変更認可は2015年2月18日に取得したが、2号機の工事計画、保安規定は2015年3月20日現在取得されていない)
つまりこの記者会見時点で、川内原発1・2号機は、再稼働の法要件の一つである、規制基準適合(合格)の実態がなかったのである。“合格”の実態がない存在に“同意”などできるわけはない。従ってこの同意声明は制度上、無効である。
また同様に鹿児島県は、再稼働に関する“地元説明会”も終了した、と主張するが、“合格”の実態のない川内原発の“説明”もできるわけがない。従って同様に“地元説明会”も無効である。
また、再稼働への法的要件の2つ目である、地元30km圏自治体の同意はまだ表明されていない。同意表明を行ったのは、直接川内原発の建設されている薩摩川内市だけである。それどころか、川内原発30km圏9自治体のうち、姶良市議会は『川内原発再稼働反対・廃炉を求める決議』を出しているし、いちき串木野市は『実効性のある避難計画の確立を求める意見書』を決議、また日置市は『30km圏自治体の同意なしに川内原発再稼働同意しないことを求める意見書』を決議している。この点を無視したままの伊藤知事の『同意表明』は、制度上も無効である。
伊藤鹿児島県知事は、以上のごとく二重の過誤を犯して同意表明、以下紹介する記者会見に臨むわけだが、この記者会見を閲覧して、さらに驚くのは、
①福島原発事故前と変わらぬ『原発安全神話』信奉者ぶり
②鹿児島県民の生命と財産を守ることを第一義の責任とせずに、国のエネルギー政策、原子力政策を忠実に実行することを鹿児島県知事の第一義の任務としていること
③再稼働問題を広く鹿児島県民の議論の対象とせずに、「原発安全神話」時代同様、少数者で議論し決定していこうとするその反民主主義的体質・姿勢、あるいはファシズム独裁者的体質
である。
この会見録をお読みになった方は以上の諸点を、直ちに、そして随所に、看取されることだろう。
なお、この記者会見速記録は、本来鹿児島県のWebサイトに「県知事記者会見」として掲載されるべきだが、鹿児島県県知事秘書室も、内容があまりに酷いとみたのか、いまだに同県Webサイトに掲載されていない。
記者会見は、前半県知事説明、後半記者とのやりとり、の構成となっている。(この記者とのやりとりでもう一つ明らかになるのは、日本のマスコミの権力迎合体質である。記者会見で知事に対する有効な批判的観点は一つもなかった。そしてさらにあきらかになるのは、記者の不勉強ぶりである。原子炉設置変更許可だけでは、根拠法である原子炉等規制法の要件を満たしていないことすら知らないまま、この重要な記者会見に臨んでいる)
なおこの記者会見は、下記URLで閲覧できる
(<https://www.youtube.com/watch?v=NgCEZs4dvQA>)
伊藤祐一郎鹿児島県知事:
それでは、最初に私の方から私の考え方について述べさせていただきたいと思います。お手元に資料を差し上げておりますので一応それを読まさせていただきたいと思います。
川内原発1・2号機の再稼働について後で述べます諸般の状況を総合的に勘案をいたしまして、川内原発1・2号機の再稼働については『やむを得ない』と判断をいたしまして、まず九州電力株式会社に対しましては安全協定に基づく事前協議に了承する旨の文書を発出いたします。
また国に対しましては(2014年)9月12日付けの経済産業大臣からの要請文書にお答えする形で原発再稼働を進める政府の方針を理解する旨を経済産業大臣にお伝えしたいと思います。
皆様方ご承知のように私はこれまで原子力発電所につきましては、まず安全性の確保が大前提でありまして、川内原子力発電所の再稼働につきましては、国が安全性を充分に保障いたしますと共に公開の場で住民の方々に充分な説明を行った上で、薩摩川内市議会、薩摩川内市長、及び県議会の意向などを総合的に勘案して判断すると申し上げて参りました。
このたびの県議会臨時会におきまして、丁寧な御審議の上、県議会の御意向が示されましたので、この一連の過程がほぼ整いました。本日、従いまして本日、今述べたような判断をいたしました。
以下、判断に至った経緯等についてご説明をいたします。
まず、第一に、政府の方針についてでありますが、当時の小渕優子経済産業大臣から私宛に平成26年9月12日付けの文書で、今般の川内原子力発電所の再稼働を進める政府の方針について理解を求める文章を頂き、その中でまず、エネルギー政策上の原子力発電所の必要性、2番目といたしまして、川内原子力発電所の再稼働の前提となる安全性の確保が確認されたこと、3番目といたしまして、万が一、事故が発生した場合には、国が責任を持って対処するということについて、政府の考えが明確に示されたところであります。
さらに(2014年)11月3日でありますが、宮沢洋一経済産業大臣が鹿児島に来られまして、私や池畑(憲一)議長など、県議会の関係者に面談をしていただきました。その席で9月12日付けの文章を確認していただくと共に、我が国のエネルギー情勢やエネルギー政策、それから川内原発の再稼働を進めるという政府の方針について説明をいただいたところであります。
第二に安全性の確保についてでありますが、川内原子力発電所につきましては、原子力規制委員会において1年以上の期間をかけて新規制基準に基づく厳格な審査が行われ、去る9月12日に審査書が決定をし、新規制基準に適合するとして原子炉設置の変更許可が出されたところであります。
また、田中委員長は国会で世界最高水準の安全性は担保されたと発言されており(田中発言は「世界最高レベルの規制基準だと自負している」とするもの。また原子炉設置変更許可を出した後の定例記者会見では「これで安全だとは申し上げない」と発言している)、私としては原子力規制委員会により安全性が確保されることが、確認されたと考えております。
第三に県議会の意向についてでありますが、先ほども申し上げましたように本日の県議会の臨時会におきまして、再稼働を求める陳情、川内原発1・2号機の再稼働を1日も早く求める陳情が採択されたところでありまして、川内原発再稼働についての県議会の御意向が示されたところであります。
第四に立地自治体の意向についてでありますが、立地自治体であります薩摩川内市の市議会におきまして、去る10月の28日に、再稼働を求める陳情が採択されますとともに、岩切市長から川内原子力発電所の再稼働を進めるとされた政府の方針につきまして、立地自治体として理解することと判断する旨の意向が示されたところであります。
第五に避難計画の整備についてでありますが、関係9自治体におきまして避難計画の作成は終了し、避難支援計画の作成も進みつつあります。医療機関、社会福祉施設につきましては、原発から10km圏内の避難計画につきましては終了いたしております。10km以遠につきましては原子力防災、避難施設等調整システムを、整備をいたしまして医療機関等の避難先の整備にも活用することとするなど地域防災の整備が進められているところであります。またこれらにつきましては、国の原子力防災会議におきまして避難計画等について具体的かつ、合理的なものになっていることが確認・了承されたところであります。(現在原子力災害避難計画は、原子力災害対策指針で義務づけられているが、その実効性については審査する国の機関が存在しない。従って原子力防災会議の「確認・了承」は、なんの意味も持たない)
第六に最も重要な住民の理解についてでありますが、今回、避難計画の説明会を計25回実施いたしますとともに、新規制基準の適合性の審査結果につきましては、原子力規制庁の職員から計5回、直接関係住民にご説明するなど、類似の説明会を開催したところであります。
(前述のごとく規制基準に適合していない川内原発の審査結果を説明使用にも、説明の実態が存在していない)
また審査結果の説明会についての参加者等から、質問・要望等が多かったテーマであります、避難計画やエネルギー政策などの項目につきましては、補足的に説明する追加の説明会を実施をいたしました。これらの説明会は概ね静粛に行われておりまして、住民の理解の向上に寄与したと考えております。さらに30km圏内の全所帯に審査結果についての説明会資料やご質問への回答を配布したところであります。
まぁ、今後ともあらゆる機会を捉まえまして、さらに住民の理解が進むよう進めてまいりたいと考えております。
第七に、我が国のエネルギー政策に占める原発の必要性についてであります。国は平成26年4月11日にエネルギー基本計画を閣議決定いたしました。原子力発電所につきましてはその安全性の確保を大前提に、我が国にとって低廉かつ環境負荷の少ないエネルギー電力の安定供給が国民経済の健全な発展にとって重要であるとの政府の考えが示されております。
(06:40)
また去る11月3日の経済産業大臣との面会の際も、大臣からエネルギー政策の基本理念であります、エネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境への適応、もとより安全性を前提とするわけでありますが、その説明があったところであります。
このような政府の考えた方は限られた資源を最大限活用いたしまして、現在の国民生活のレベルを守り、我が国の産業活動を維持する上で重要な要素、これは私の考え方とも一致するわけでありますが、維持する上で需要な要素と考えております。
今回の判断にあたりまして、国に対しましては次のような配慮や対応をお願いしたいと考えております。
まず第一に、今度の実際の再稼働までにはまだ色んな手続きがございますので、設置変更許可に基づき事業者において必要な作業が適切に実施されることを確認いたします。工事計画の認可でありますとか、使用前の検査など、法令上の手続きがありますことから、引き続きこれにつきましても原子力規制委員会において厳格に進めていただきたいと思います。
(前述のごとく、「工事計画認可」「保安規定認可」は原子炉等規制法の定める、適合=合格3要件であり、伊藤氏のいうように、単なる手続きではない。伊藤氏は「設置変更許可」=合格、という誤った考え方を鹿児島県民に植え付けようとしている。「3要件がそろうまでは、同意判断はできない」とする西川一誠福井県知事が原子炉等規制法を理解している、といえる)
第二に、再稼働後における安全確保対策や規制基準の不断の見直し等を含めまして、安全対策について引き続き政府として責任を持った対応をお願いしたいと考えております。また再稼働後におきましても、川内発電所の監視体制を強化し安全確保を図っていただきたいと思います。
第三に、これも重要かと思いますが、人的ミスを含め、安全対策について電力事業者の監督指導の徹底をお願いしたいと思います。また避難計画等を含みます地域防災体制の整備についてでありますが、ま、この地域防災体制について完全や不完全でありますとか、終わりということはないわけでありまして、県としても関係市町と連携をして充実に取り組みたいと考えており、国におきましても避難計画等のさらなる充実のための支援、確認の継続をお願いしたいと思います。
第四に、今回原子力防災対策重点区域の見直しが行われました。UPZ(おおむね30km圏)の対象となる市町が拡大いたしましたことから、立地市およびそれらの関係市町に対する新たな地域振興策等について国の財政についての財政支援につきまして具体的な対応をお願いしたいと考えております。また、避難所等の改修や備蓄資機材の整備に要する経費につきましても関係自治体への財政支援をお願いしたいと思います。
第五にエネルギー基本計画に関するテーマでありますが、第五にエネルギー基本計画におきましては原発依存度について、省エネルギー、再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化等により可能な限り低減させるとした方針がありますので、その方針を踏まえ、その方向に向けて着実に努力していただきたい、と思います。また、再生可能エネルギーにつきましては最大限の導入を進めますため、地域特性も活かしつつさらなる普及拡大に取り組んでいただきたいと思います。
九州電力株式会社につきましては、次のような項目をお願いしたいと思います。
まず、第一に、発電所の運転にあたりましては、なによりも安全性の確保を最大の目標とし、関係法令等を遵守すると共に、徹底した事故防止、安全対策を実施すること。
第二に万が一事故やトラブルが発生した場合には、国や自治体等へ直ちに連絡をし、県民に対する正確な情報提供を行いますとともに、被害の拡大防止に万全を期すること。また事故等の原因究明、および災害防止対策を徹底すること。
第三に立地者や関係者と緊密な連携に努め、その地域振興策等に、地域振興策に積極的に協力すること、であります。
以上、今回の判断に至った経緯、考え方、国、電力事業者への要請内容を説明させていただきました。我が国が置かれている諸般の事情を勘案し、再稼働は止むを得ないと判断したところでありますが、今後政府を挙げて国民の理解をさらに広範にいただくよう、努力する必要があると考えております。
以上が私の今回の再稼働についての基本的な考え方であります。
また皆様方からご質問等いただきたいと思います。
<以下記者会見一問一答>
(11:12)
司会(県政記者クラブ代表)
はい、まず最初に県政記者クラブ幹事社の方から質問をお願いいたします。
(11:20)
MBC南日本放送 ジョウコウジ
えー、幹事社のMBC南日本放送のジョウコウジです。川内原発の再稼働については“止むを得ない”ですとか、あるいは“政府の方針を理解する”と、こういった比較的ソフトな表現かなと思うんですが、ま、これは、今日の県議会の採決でも反対派の方がたくさん押し寄せたり、あるいは県民の意見が二分するような大きな問題であったということもあると思うんですが、そのあたりの影響っていうのはあるんでしょうか?
(11:45)
伊藤県知事
あの~、原子力発電所につきましては、色んな意見の方がいらっしゃいます。賛成する方、反対する方、色んな方がいらっしゃいますので、一律的に賛成という立場はなかなか取りにくいのかな、と思います。ただ、私としては、諸般の情勢、先ほども言いましたような諸情勢でありますが、それを総合的に勘案いたしますと、ま、やはりあとしばらく、当分の間は原子力発電所の活用をせざるを得ない、と考えておりまして、ま、そういう意味でやむを得ないという言葉を今回は使わせていただきました。
(12:24)
MBC南日本放送 ジョウコウジ
えー、あと、もう1点。昨日の特別委員会でもあったんですけど、知事のこの同意による責任ということについては、どのようにお考えでしょうか?
(12:34)
伊藤県知事
ま、一連の過程の中で私も一定の役割を果たしております。そしてまた大変重い判断をすることになりましたので、私自身、身を引きしめて今後どういう形で、その私が充分に役割を果たせるのかを考えていきたいと思います。ま、色んな事象が今後起ることも考えるわけでありますので、それに対しまして、私自身、厳格な気持ちで臨みたいと思います。
(13:04)
(13:30)
朝日新聞 コイケ
朝日新聞のコイケと申します。まず一つお伺いしたいんですけども、この地元の同意手続きっていうのは法的な、法的に定められた中身っていうのはないんですけども、今回のこの知事の“やむを得ない”という、あと“理解する”というところをとって、“知事が再稼働に対して同意した”という風にみてもよろしいですかね?
(13:55)
伊藤県知事
「同意というのは法的な要件になっていないというのを考えると、必ずしも同意という言葉で整理しなくてもいいと思いますが。先ほども申しましたように川内原子力発電所について九電に対しては事前協議に対して“了承”、そして国に対しては“理解する”という言葉を使いますので、ま、そういう意味で今回は“やむを得ない”という言葉を使ったということでありますね。
(朝日新聞は一貫して、”地元同意”は法的要件ではない、と主張している。伊藤氏も同様の見解)
(14:22)
朝日新聞 コイケ
「同意」という言葉を使わなかったというところに、何か理由はあるんですかね?」
(14:28)
伊藤県知事
先ほども言いました通りです。色んな意見があるので、一律に簡単に同意とは言えないよね、と。しかし我々が置かれている状況を考えると、我が国の、少なくともこの当面の判断としては原子力発電所の活用する以外に道がないというか、その方が国民全体の色んなことを考えた時にそれがベターだよね、ということで、やむを得ないという言葉を使った。そういうことですね。
(15:04)
南日本新聞社 ユキマツ
南日本新聞社 ユキマツです。
今回の判断は非常に重圧のある、かかる判断だったかと思うんですけれども、今回の知事の判断というのが日本の原子力政策の福島原発事故以降のですね、どういう位置づけになるっていうようなご見解を持っているか、教えていただきたいんですけれども。
(15:33)
伊藤県知事
えーと。非常に抽象的な質問ですので、なかなか簡単にはご説明しにくいんでありますが、私自身は、福島であれほど不幸な事故が起りました。従いまして、安全神話が全部崩れ、大変な状況に至っていることは確かであります。ただ、我が国が置かれている色んな諸般の事情を考えた時に、先ほど言いましたように、今後しばらくの間はいずれにしろ、この原子力発電所を活用せざるを得ないという、私は我が国の状況は変わらない、と思ってまして、そしてまた、それに、着実な形で進んでいくのが、我々と、我が国にとっては大変大切なことだというのはずっとそう考えておりました。これは皆さん方ご案内のように第三期目の選挙の時に、私はわざわざ再稼働は必要だっていう事は皆さん方に訴えて選挙をさせていただきました。あの時点であそこまで言う必要はなかったんでありますが、やがてこのタイミングは来るということはわかってましたので、あえて皆さん方になぜ必要かというような話、実は今日説明したような内容を選挙の時にずっと色んな地域でお話をさせていただきました。ただそれでも、若い女性の方とか、一般に女性の方は非常に原子力発電所の再稼働について厳しいかと思います。ただ、先ほど言いましたような、我が国の、この今後の原子力政策、ま、エネルギー政策にも関連いたしますが、考えると、ま、ほんとにしばらくの間は、原子力を有効活用する以外にはないと考えておりまして、そういう意味で、その新しい時代に向かっての原子力発電をエネルギーとして、我が国の基幹的なエネルギーの一つとして使うという方向についての、ま、ひとつのきっかけになるかもしれませんね。ただそれが、今後どういう形で全体のエネルギー政策の中に評価されるのは、また時間をかけて検討すべきテーマだと私は考えています。
(17:50)
毎日新聞ツシマ
毎日新聞のツシマです。あ、お疲れ様です。(!!)同意書…審査書がですね、確定してからですね2か月という期間を、非常に急いでいるんじゃないかという声が県議さんの中からも聞こえたんですが、知事のその見解とですね、この同意に至るまでのですね、プロセスが今後例えば他の、審査に合格してくる原発が出てくるだろうことが予想されるなかで、他の立地自治体、他府県にですね、どういう影響を与えるかという知事のお考えをお聞かせください。
(18:36)
伊藤県知事
えーあの、同意のプロセスが拙速ではないかという批判は当然にあるかと思います。が、私の頭の中では3期目の選挙をやった、2年ちょっと前からのテーマでもあり、県議会等々でもずっとその質問を受けてまいりました。そしてまた(規制委に対する規制基準適合性)申請書が出されてからも1年以上の年月が経過しておりまして、その間もずっと今回の審査書が出てきた後の事態をシミュレートしています。従ってその後、ま、住民説明会等々の対応を取ったわけであります。ただ、極めて内容が専門的なので、まずは避難計画から入ろうということで避難計画は25回開催させていただきました。そして5回にわたる説明会。これも一般的に公募してるんでありますが、ま、なかなか、その、人が集まらないとか、充分に会場が埋まらないという事情がございました。ただ、我々としては、今の諸手続きの中で、考えられる最高の説明会は、最大レベルのですね、持ったと思います。そして余所のところでこのような説明会が出来るかというと、私は必ずしもそんなに簡単に行かないのかなと思ってます。相当な根回しをした上で、相当な準備をして臨んでますので。簡単に説明会ひとつとっても出来るわけではありません。そういうのを重ねながら、今回の結論に到達したということでもありますので。いったん手続きが進みますと、私は拙速を厭わず、的確に、迅速に進めるというのが、私の行政の哲学でもありますので、その際は県議会に参る形でお願いをして、迅速な決議を取らさせていただきました。実は色んな周りに色んな動きがありますので、やはりここはあまり時間を置いて判断すると、かえって色んな事態が招来する可能性もあるので、やむを得ないのではないのかなと思います。従って先ほどの、他の原発への影響はどのようなことを考えているの、という質問なんですけど、一般的に先行事例になるのは確かなんでありますが、鹿児島と同じような形では私は出来ないと思ってまして、それぞれの地域ごとに、その地域において一番適切と思われる判断をなさるのがいいのかなと思うんですね。ただ非常に一般の説明会とか、そういうのは当然要請されるかと思いますが、それはそれぞれの地域地域で知恵を出して、一定の結論に到達していただきたいと思いますね。
(21:13)
西日本新聞 ユノマイ(?)
西日本新聞のユノマイと言います。何点か質問させてください。
(21:18)
伊藤県知事
極1・2点に限りましょう。
(ここいらへんは、与しやすしと見たか、完全に伊藤氏が主導権を握っている)
(21:19)
西日本新聞 ユノマイ
2点くらいお願いします。まず知事は選挙の時に、将来的には脱原発とおっしゃってました。今回やむを得ないとか、あるいは同意という言葉を使わなかった裏にはそういった思いもあるのかどうかっていうのがまず1点。それから、もう1点が、今回、住民の方々の中で避難計画がまだ不十分であるとか、あるいは要援護者の避難計画が不十分である、それから地元同意の範囲がはっきりしないとか、色んな矛盾点が出てきました。ここについて改めて知事の見解を伺いたいんですけども。
(21:52)
伊藤県知事
前の選挙の時には脱原発に向かって模索するという言葉だったでしょうか。ま、そういう言葉です。先ほどは国のほうのエネルギー基本計画を使いまして、原発に対する依存度をなるべく下げる、みたいなそういう話で説明したと思います。で、原発の活用をどういう形で考えるか、その、国によって色んな考えた方があろうかと思いますが、福島という大変な事故を先例として持った我が国として、いずれ、もう少し原子力発電所について見直しをせざるを得ない時期が私は来るのではないのかな、と思ってるんですね。2022年にドイツは脱原発ということで原発を全部停止するということに今のところなってますが、そういう形には簡単に行かないと思いますが。ただ時間を考えてみると別の代替エネルギーが出てくる可能性もあるんですよね。極めて超高性能の蓄電池でも開発されればそこからまた大きく変わったり、このエネルギー問題っていうのはみなさんご案内のように時代時代で大きく変わってきてますので、それがいつのタイミングなのかっていうのが、見届けられない、ちょっともどかしさはあります。そしてまた、人類は、ずっとこの原発に依存するようなそういう生活はしないほうがいいのかなとも思ってまして、そういう意味で当分の間は仕方ないけどってことで、やむを得ないという言葉を使わせていただいたということですね。だから色んなニュアンスがこの「やむを得ない」という言葉の中には含まれているという理解をしていただいたらいいかと思います。
それから色んな批判もいただきました。避難計画が不十分でありますとか、同意の範囲とか。ま、これも幅広く斟酌しなきゃいけない面もあるんでありますが、避難計画等については私は鹿児島の地域は、ある程度スムーズに進んでいると思っているんです。と言いますのは、今回の避難計画、避難計画に基づきまして、極限られた分野、要援護者の支援計画等ですね。これも来年の2月くらいまでには出来上がるのではないかと思いますので、フルバージョンで一応、避難計画は出来上がります。その次はその実効性であります。実効性について、その一見、交通の問題とか、それから収容施設の問題等指摘される方がいるんでありますが、私はそこはですね、我が国は色んな災害等々多発する地域であり、結構その先行事例持ってます。
(24:20)
この前のあの広島の、大水害の時に、直ちに自衛隊が動き、警察が動き、全国から支援が届き、国全体のパワーが動きました。そしてすぐ、的確な避難に導いたのではないかと思いますが、これからたぶん、その原発等々の事故が起るとですね、そういうことであって、あんまりその、手段でありますとか、マイナーな話は私はあんまり心配する必要がないと思います。
(伊藤氏は、原子力災害=放射能災害と他の自然災害を完全に同一視している。放射能災害は、放射能が故に救援、支援にすら入れない、という点を一大特徴とする。これは福島原発事故でも大きな問題となった。伊藤氏の大きな認識不足である。全く大変な人物が県知事として再稼働判断をするものだ。またこの点を突く記者は一人もいなかった)
(24:47)
何よりも、実は避難するのに、相当の時間、時間的な余裕があります。これは今回の審査、規制委員会等の審査を受けた、で、合格した原発が、どういう形でその後、炉心等々が変化するかっていう時間軸で追っていくと、実はけっこう時間があるので、ま、そういう意味でゆっくり動けばいい。
(25:11)
はたまた、もう一つは、実は、ちょっと専門的な話になって恐縮ですが、ま、要するに今回の制度設計というのは100万年に1回の事故を想定するわけですよね。そしてその時は100テラベクレル。それが同じ条件で同じうような事故が川内に起こった時にどうなるのかっていうのは、実は5.6テラベクレル。そうすると炉心から5.5キロのところは毎時5μシーベルトなんですよね。5μシーベルトというのは、20(μシーベルト)でもって初めて避難ですから。動く必要がない。家の中にいてもいいし、普通に生活していても良いという。そのレベルの、実は、放射能しか、人に被害が起こらない。5μシーベルトというのは一週間ずっと浴び続けて胃の透視の3分の1ぐらいの放射能ですね。実はそこまで追い込んだ制度設計をしているので、時間もあるし、避難計画が実際にワークする、そういうケースもほとんどないだろうし、まずそれがたぶん、あと川内原子力発電所10年、そうすれば止まるかもしれませんが、において考えると、だいたいそれでカバーできるのかなと内心思ってます。
(これは驚くべき発言である。空間線量率で毎時5μシーベルトは、年間被曝線量に換算すると、33.12mSvとなる。<ただしグランドシャインによる被曝線量は無視> もちろん今回の福島原発事故でも避難地区に指定されている。「20でもってはじめて避難」というのは、現行原子力災害対策指針による即時避難基準である。しかも、現行原子力災害対策指針は、避難基準を年間100mSvの被曝、というきわめて過酷な避難基準を採用する被曝強制対策指針である。ちなみに、今回福島原発事故による避難基準は年間被曝線量で20mSv、チェルノブイリ事故では年間5mSvだった。
その過酷な現行災害対策指針によっても、このレベルの空間線量率が一週間継続すれば避難を義務づけている<OIL2>。「普通に生活していても良い」とはとんでもない暴言である。また胃のX線検査の例を出しているが、これはX線検査が安全であるという意味ではない。被曝の危険と検査で受け取れる患者の利益を勘案して、被曝の危険よりも検査の利益の法が大きいと判断して、X線検査を選択するのである。その判断は担当医師が行う、となっており、従って放射線防護政策では、医療被曝は規制の対象から外し、医師の判断によるとしている。まったくとんでもない県知事がいたものだ。なおこの暴言をとがめた記者は一人もいなかった)
(26:30)
それと同意の範囲。従って同意の範囲も、従来のスキームで良いと。(つまり福島原発事故前の枠組みでいい、ということ)ありとあらゆる、その、今まで、議論をしてきました。その立地の市町村、立地の市、ないしは県は、相当な知的集約もあります。ですから、それを一律に拡大すると、きわめて原子力発電所について理解の薄いところ、知識の薄いところで一定の結論を出すというのは、必ずしも我が国の全体をまとめる上において、錯綜するだけで、賢明なことではないと私は思うんですよね。
(27:07)
UPZ、11人ですよね、姶良市。(姶良市は30km圏に属しているが、そこで暮らす住民は11人しかいないことを指している)あそこは反対…反対決議っていうか、廃炉決議をしました。(笑いながら)そういう事が起るんですねぇ。じゃ廃炉決議を11人のUPZのところがしたからといって、廃炉するのかねっていう、そこのところの全部の集約を考えると、鹿児島県においては従来からの蓄積もあり、ま、鹿児島県と薩摩川内市でいいだろう。そしてそれは九電の社長さんが全部の首長さんを回りましたときに、だいたい首長さんレベルはそれで…それでご了解を頂いてると思うんですよね。そこはだから皆さん方の個別の取材と、実際にその社長さん市長さんとの会話、私と市長さんとの会話等々は若干ずれてるテーマではないかと思いますね。
あとせっかくですから、鹿児島県以外から来られた方の質問を。どうぞ。あちらの・・・
(28:09)
赤旗 ハラダ
どうもありがとうございます。新聞赤旗のハラダと申します。東京からきました。宜しくお願いします。一つに絞りたいと思いますけれども、伊藤知事は先ほど同意と言う言葉を使わないで、やむを得ないと言う表現を使うんだということで、そういうニュアンスにもこだわっておっしゃられているということはよくわかりましたけれども、そういう伊藤知事が今回の見解のなかで第6番目で最も重要な住民の理解についてでありますということでおっしゃっているわけですけれども、私も東京からですけれども来て色々説明会も取材しましたし、聞きましたけど、あのアンケートの項目、理解できなかったところに丸をつけるということになってましたね。理解できなかったっていうのは平均で3割、29%だということで、あと残り7割理解したという解釈で概ね理解されたということでいいんだと。こういうふうにおっしゃったと思います。これほど自らの言葉にもニュアンスを大事にされて表現を気にされる方が、どうして住民の理解しなかったというのを全部、じゃあ理解できなかったというのに丸をつけなかったら、理解すると。普通どんなアンケートでもよくわからないとか、わからないという中間的な人が大概いるわけですよね。その人を全部ひっくるめて理解したという風に解釈したというのは、これはどういうことかなと言う風に思うんですけど、是非ご見解をきかせてください。
(29.58)
伊藤県知事
私の部下(・・・聴取不能)も他の皆さん方が、今回の数字で十分に理解できたと胸を張って答えてくれました。実はあの、サイト、サイトによって答えが違いました。薩摩川内と、それ以外のところと。やっぱり後になるほど理解できなかったというパーセントが多くなりましたね。そしてまた市町村、市ごとにも(・・・聴取不能)してみましたが、市ごとにも違います。そして実はですね、アンケート回答、有効、だいたい1900くらいですね。そのうち350はですね、全部ペケなんです。18~19%になりますか。1900のうちの350ですから、18%前後でしょう。ということは、その方々が全部ペケっていうのはですね、理解するとかしようとか、そういう意思のない方と判断せざるを得ないんですよね。全部ペケです。それはもう最初からもう、そんなの理解するつもりもないし、もともと原発反対だっていう方々の意思の固まりの表現かと思いますので、そういうのを割り引いてみると、実は30数%というのも、もう少しいい数字になるのかもしれない。ましてや薩摩川内では10%台ですので、そういうのを含めて総合的に勘案した話なんです。だいたい、1時間丁寧に書いていただきました。そして実は、私どもがわかっていただきたかったのは、100名以上の方が1年以上かけて規制委員会という我が国の産業技術、要するに産業の、要するになんでしょうかね、技術の安定性っていうか、そちらについて最高の方々が1年以上かけた項目についてどれだけ努力をしたかっていう、その努力の成果みたいなもの、努力をやったということを皆さん方にわかっていただければそれで十分なのかなと思ってたんです。色んな方がいらっしゃいますので、個別のテーマについて、ましてや原子炉の中身とか、格納容器とか構造がわかってないとなかなかわからない、シビアアクシデントのところなんか特にそうかと思いますが、まさにだから、そういうところはどんどんペケが多くなるんだけれども、ただ、あれだけの真面目な方々が1年以上かけてあれだけの裁量をやったというのは、やはり我が国にはこれまでありませんでしたし、それはそれなりの私は成果があるんだろうと思うんですよね。そしてその成果が先ほど言った…もし薩摩川内で福島と同じような事が起った時に、どれくらいの、5.6テラベクレルの、例の5μシーベルト、先ほど言ったような、そこまで追い込んでもらったというのが、私は規制委員会に感謝したいと思いますし、そういうような努力の跡をですね、皆さん方にわかっていただきたかった。それは静かに聞いていただいた方々には、私は案外浸透したんじゃないかと思いますね。
(33:11)
電気新聞 コンドウ
すみません、電気新聞のコンドウと申します。宜しくお願いします。大変緊張感あるなかでの決断だったと思われますが、鹿児島だとか九州だけの話ではなくてですね、日本の国益というものが今回の判断の基準になったのかどうかというのをお伺いしたいのとですね、もしそれが基準になったのであれば、それは今回の決断にどれくらいのウエイトを占めていたのかというのをお聞かせください。宜しくお願いします。
(33:37)
伊藤県知事
いや、大変難しい判断なんです。反対の方も多いので大変難しい判断なんですが、私の頭の中では終始一貫してました。先ほど言っていることであります。この資源の限られた日本という国において、国民生活のレベルを守り、産業生活の活性化を図るにはどうしなきゃいけないか。もちろん安全性が前提なんだけど、その安全性がある程度約束されるのであれば、やはり先ほどから言っています、しばらくの間は原子力発電所の活用っていうのは止むを得ざる選択だろうというのが、私の判断でもありますので、淡々とやったという感じですよね。私の頭の中ではどうこう…例えばそれこそ鹿児島が先頭を切るということは予想してなかったわけですので。三か所くらいすると一緒にするのか思ってたら余所のところがちょっと時間がかかったのでたまたま私どもが先頭に出てしまったというだけですので。なんらそこには奇もてらいもありません。淡々とやらさせていただきました。そして私自身としては、私の持ってる知識では、識見では、私の選択は、今の時点においては自信があります。ただ、それでは今後長い目で10年、30年のタームで見た時にどういう形で変化するかはまだ予断を許さないというか、まだわからない分野もあると思っています。以上ですね。
(35:10)
(IWJホソイ、という質問者に答えて)
伊藤県知事
もう結構ですので。長々とやると演説になりますので。
色んなことをおっしゃいました。要するに、もう少し県民と向かいあって裁量を進めるべきではないかという。先ほど言った拙速の話ですよね。
国民の命を守れ。いかにも原発を稼働すると、国民の命を守れないような、そういうプロバガンダが大いに行われています。ただ、私は規制委員会というあれだけ素晴らしい方々が集まった組織、やはりあの組織も自分の任務に極めて忠実で、相当時間をかけてですね、原発の再稼働についてその安全性を徹底的に追究したと思うんです。その数字の結論が先ほど言った数字です。もし福島みたいなことが起っても、放出量は5.6テラベクレル。そして5.5kmのところは5μシーベルト。もう、命の問題なんか発生しないんですよね。私はそちらの方を信じます。あれほどのことをやってその結果として、またサイトを見ましても、(聴取不能、意味不明)素晴らしいといいますか、(・・・)よくぞここまでのことをやったのかな、というのがありまして、そういう意味で一概に、やれ、国民の生命を守るとか守らないとかいうのには、あまり与さないんです。
それよりも全体を見た時にどういう判断をするか。この原発の問題はシングルイシューではありません。原発だけの稼働の問題ではなくて、ある意味でいえば、我が国の全体をどういう形で運営していくのかっていうテーマでもあります。それは県にとっても同じ話であります。国の方に振り向けてるというようなことを言ってますが、国と県と、それから事業者が一体となって動く以外にない、ただもし万が一のことがあったら、今福島はそういう形になってますが、やはり国は、元々、エネルギー政策の基本的な責任を負う役所でありますので、最終的な責任は、やっぱり国にあるのかなというのが私の受け止め方であります。
それから広報の問題。これはインターネットの話は実は説明会の時もありました。なぜ説明会をインターネットで中継しないか。それは簡単なんですよね。簡単と言いますのは、説明会をやってですね、何が起るかわからないっていうその問題を抱えつつ実は説明会をやらざるを得ません。反対派が大量になだれ込んで説明会ができないこともある。そういうことを考えると、やはり今回は直接来られた方々に、UPZの圏域内であるし、公に公募いたしましたから。その方々をともかくターゲットとして我々は説明をすべきという立場に立ってますので、そういう意味で、インターネットは使わなくてもいいのかなっていうことであります。もとより幅広く原子力政策全般について、川内原子力発電所の安全性について、もう少しちゃんと説明しなさいよというのであれば、それはもう県民全体を対象にして、例えば鹿児島市の大きいホールでやるとかいうのはですね、これから1年以内にはやるんでしょうね。そういう形で広く県民の方にもPRをする。そういう基本的な考え方におりますので、ちょっと今ご指摘の点と私の考え方は違うんですけど、私どもとしては一生懸命誠実にやらせていただいたつもりであります。
(41:07)
読売新聞 マルヤマ
読売新聞のマルヤマです。電気事業者の九電についてなんですけど、これまで安全審査合格(規制委員会が実施している審査は安全審査ではない。この点田中規制委員長は、「安全審査というと、合格した原発は安全であるかのような誤解を与えるので、今後は安全基準ではなく規制基準、安全審査ではなく、規制基準適合性審査、と呼称する。法令文書や関係文書も全て書き換える」と説明している。にも関わらず読売新聞は一貫して安全審査と表記し続けている。またその規制基準に合格していないのは前述の通り)してから九電の県民に直接、説明が足りないんじゃないかっていう批判もあったりしたんですけど、再稼働を取り組み、通じてきた知事にとって、九電、電気事業者のこれまでの姿勢ですね、この辺はどう評価されているのかっていうことと、今後別の自治体で同じような手続きが進む中で電気事業者が取り組むべき課題というか、そういうのがあれば、感じたところがあれば教えていただきたいんですけれども。
伊藤県知事
九州電力さんが最終的にどういう形で動いておられるのか、必ずしも承知をいたしておりませんが、ひとつ、記者会見等でお話をしていたのは、安全協定を9市、川内を除きますから8市ですか。8市町で提起されておられますので、そこについては当然九電の方から説明があるんでしょうねっていうお話をさせていただきましたが、社長さんがそれぞれの首長さん方に直接会ってお話をされました。丁寧に、たぶん、九州電力のですね、色んな安全政策について説明があったんだろうと思います。それで、聞くところによると九州電力はもう少し個別の、ちっちゃなグループ単位で説明会をするような話も聞いてますので、それは今後の過程の中で取り組まなければいけないテーマだろうと思うんですね。九州電力本社があり、かつまた九州支社があり、鹿児島支所があるって形になってますが、ともかく凄まじい審査書を出さざるを得なかった、何万ページでしょうか、皆様方ご案内のように凄まじい作業量があったので、そちらの方は若干薄くなっても仕方ないと思ってますが、これからは人的な余裕が生ずると思いますので、その過程においては、やっぱり大変難しいテーマでもありますので、原子力発電については幅広く地域住民の方に説明していただきたいと思いますね。
(了)