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ポツダム宣言 その2

ポツダム宣言 その2

哲野:今日の特別委員会で、またポツダム宣言に関する議論が行われたようだ。仕事で国会中継を見ている暇がなかったんで、NHKのwebニュースで見た。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150601/k10010099431000.html

また、このことを日本の国策放送機関であるNHKがいち早くニュースで報じたことの意味もまたなかなか深長なものがある。

網野:どういうこと?

哲野:前回の共産党の志位さんの質問に、事実上安倍さんはポツダム宣言は知らない、と答えている。これは日本の政治家とすればほぼ自殺行為に等しい。だから今回弁明の機会を与えて弁明させ、それを国策放送機関であるNHKが報ずる、それを国際的に発信する、こういうシナリオではないか。
質問に立った野党議員が民主党の細野豪志だという点も興味深い。
官邸側は細野に質問を依頼し、細野がこれを受けて質問をする、細野は官邸に一点貸しを作る、と想像をたくましくすることもできる。

網野:何が弁明になるの?なんで弁明したかったの?

哲野:前回の志位さんの質問のポイントは、前回の戦争(いまなおかつ、前回の戦争と言わざるを得ないのが日本の弱点だろうが、太平洋戦争と呼んでも良いし、15年戦争と呼んでもいいし、日中戦争と呼んでもいいし、大東亜戦争と呼ぶこともできる)が、旧日本帝国による侵略戦争だったことを認めるか、認めないかにポイントがあった。
安倍さんとすれば当然、あれは日本の防衛戦争であり、侵略戦争とは認めたくはない。これはポツダム宣言の立場とは真っ向から対立する考え方、別な言い方をすれば、典型的な歴史修正主義者の考え方になる。
事実、安倍さんは歴史修正主義者であり、その意味では戦前日本型のファシストと見なしても差し支えない。
ところが、ポツダム宣言を出した側、すなわち戦勝国、すなわち連合国が戦後連合国(the United Nations)による国際平和秩序を構築し、これが現在の国連(United Nations)になる。
だから、戦勝国による国際平和秩序構築とは、国連による国際平和秩序と同義だ。
ポツダム宣言を読んでいないかどうかは別として、これを認めない立場は、結局国連による国際平和秩序を認めない立場、すなわち安倍さんは自ら歴史修正主義者であることを日本の国会の場で全世界に示したことになる。
これは、日本の政治家とすれば自殺行為だ。だから弁明の機会がどうしても必要だったんだ。安倍さんは爺さんの岸信介を目指しているんだろうが、いかにも頭の悪い岸信介だ。

網野:ポツダム宣言を認めないことは、その後の戦勝国による国際平和秩序維持の体制そのものを否定することになる、という理解でいい?要は話が元にもどっちゃうのね、土台の話に。認めるの?って言われて、はい、認めます、悪うございました、という意思を示したのが、ポツダム宣言受諾だったわけだ。

哲野:そう、その通り。だから、ポツダム宣言を読んでいないことを理由に、志位さんの質問をはぐらかそうとした、侵略戦争であることを認めまいとした、ことは実はアメリカと同盟関係を結ぶ日本のトップとして自殺行為だった、ということに後でたぶん、外務省の誰かが、まずいですよ首相、あれは、と耳打ちがあったんだと思う。だから弁明の機会が必要だったんだろうと思う。

網野:で、肝心の弁明の内容はどうだったの?

哲野:NHKのニュースを見る限り、渋々、安倍さんの考える必要最低限の中身で、これはこれで、たとえば中国や東南アジア諸国や、ロシアから見ると、あるいはアメリカのリベラル派から見ると、問題だらけの弁明だよね。
まず、「第6項の世界征服の部分を含め、当時の連合国側の政治的意図を表明した文書だ。政府としては、同項を含め、ポツダム宣言を受諾し、降伏したということに尽きる」と述べている。
当時の連合国側の政治的意図とは、とりもなおさず、現在の国連による世界平和秩序維持体制のことだ。言い換えれば、過去の政治的意図ではなく、現在ただいまの体制のことだ。安倍さんは結局現在の国連体制を認めていないともとれる。
わかりやすく翻訳してしまうと、あれは防衛戦争だったんだけど、戦勝国側の政治意図を受け入れなければ、戦争が終わらなかったんで、やむなく受け入れたんだ、とも取れる。歯切れが悪いよね。

網野:防衛戦争だったんだけど、負けたから、しょうがない敵さんの言うとおりに渋々従った、ということかしら。

哲野:その安倍さんの気持ちが、後段部分に明示的に表れている。それは、「先の大戦の結果、日本は敗戦を迎え、多くの人々が貴重な人命を失った。アジアの人々にも多くの被害を及ぼしたことも厳粛に受け止め、戦争の惨禍を2度と再び繰り返してはならないとの決意で、戦後の平和国家としての歩みを進めてきた」とする部分だ。
この部分には、ポツダム宣言の精神からすると、最も重要な点が欠落している。
先の大戦の結果、と言ってるけど、その結果をもたらしたのは、「日本の人民を欺きかつ誤らせ世界征服に赴かせた、影響勢力及び権威・権力」(第6項)だ。結局、戦後日本を平和国家にするためには、この軍国主義勢力を一掃することがポツダム宣言の大きな骨子になっている。だから、「そのような新秩序が確立せらるまで、また日本における好戦勢力が壊滅したと明確に証明できるまで、連合国軍が指定する日本領土内の諸地点は、当初の基本的目的の達成を担保するため、連合国軍がこれを占領するものとする。」(第7項)と続くわけだよね。
このポツダム宣言の趣旨を認めるのであれば、安倍さんの言うようにいきなり平和国家の道を歩んだとはならない。まず、この「権威・権力」とその影響力を完全に葬り去ることが、戦後日本が平和国家の道を歩む大前提になっている。この点を安倍さんは今回の答弁で全く無視してしまっている。
結局全体を通じて言えば、国連社会に対する弁明として、特にアメリカオバマ政権に対する弁明として、今日の答弁があったわけだけど、これだったら弁明になっていない、とボクなんかは思うね。
それは、次の箇所に如実に表れている。「そうした結果を生み出した日本人の政治指導者には、それぞれ多くの責任があるのは当然のことだ」

網野:意味がわからない。そうした結果を生み出した日本の政治指導者というのは、ポツダム宣言の言う「日本の人民を欺きかつ誤らせ世界征服に赴かせた、影響勢力及び権威・権力」のことよね。

哲野:そうそう。だから、その限りでは安倍さんが間違ったことを言ってるわけではない。ところが、戦後そうした勢力の影響力を一切排除する仕事は、実はこれら政治家の仕事ではない。この結果を受けてこうした愚かな勢力の復活を許さないのは、後代の政治家の仕事だ。
皮肉にも、安倍さんはその後代の政治家のトップにいる。
ところが、安倍さんの言い方を聞いていると、悪かったのは当時の政治家で、現代の政治家にはその責任はない、と言っているように取れる。だから、弁明にはなっていないんだよ。

網野:なるほど、それは理解できる。中国とか、ロシアとか、韓国とか、東南アジア諸国とか、オーストラリアとか…まぁ、大被害を受けた国々なんかは、これ聞いたら「やっぱり、安倍はわかっとらん」と思うだろうね。

哲野:ボクもそう思う。

網野:中国とかから、アメリカに対して、なんか言いそうだよね。

哲野:あるかもわからんね。たとえば「オバマさん、なんであんた、いつまでもあんなファシストと手を組んでるの?」とか。

網野:多くの人たちが安倍さんがファシストであることに気がついてないかもしれないね。あとファシストかもと思ってても、経済活性化のほうに気をとられてて、自分たちが選んだ人間の危険に気がついてない感じがする。

哲野:それは間違いないだろうね。相当左の人の中でも、安倍さんを歴史修正主義者とか、ファシストだとか呼ぶことには相当ためらいがある。
でも現実には、今の自民党はかつての自民党ではない。保守政党というよりも、極右政党と呼んだ方が適切だよね。かつての保革対決の図から見ると。
ヨーロッパで極右政党の台頭などと報道されているけど、日本ではすでに極右政党が政権をとってしまっていることに気がついていないのかもしれない。それよりなにより安倍さんのファシスト的体質が色濃く政治に影を落としている。質問にまともに答えない。内容のないスローガンを繰り返すなどという彼の国会答弁なんかは、ヒトラーの体質にきわめてよく似ている。

という話を今日しておりました。

ポツダム宣言

今日の哲野と網野の会話。

【網野】ポツダム宣言に振り回されたね

【哲野】今から10年も前に訳したポツダム宣言に、あれほどのアクセスがあるとは全く予想してなかった。
ポツダム宣言はトルーマン政権の広島原爆投下(トルーマン政権による原爆対日使用)におおいに関係していて、その興味から訳したものだったけど、今読み直して見ると色々誤訳や訳し落としがあったりして、大慌てで訂正した。

▽『ポツダム宣言』
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/potsudam.htm

【哲野】なんであんなに1日に2万とか、3万とか閲覧数があったんだろうね。

【網野】それがね、ツイート見て知ったんだけど、どうも安倍さん、国会の党首討論で、共産党の志位さんの質問中、ポツダム宣言の第6項と8項で、前の戦争は誤った戦争だということが指摘されてる。それを受け入れて戦争が終わった、あれが誤った戦争だったという認識があるかという質問に、よく読んでいないので論評することは差し控える、と答弁したのよ。志位さんがおっかけてポツダム宣言のいう侵略戦争を認めないのか、と質問したんだけど、ついに言を左右にして、安倍さん、認めなかった。それでみんな、ポツダム宣言ってなんだ?とインターネットで調べたらしい。それで哲野のポツダム宣言の訳も、見られたということらしいわよ。

▽安倍晋三「ポツダム宣言」受諾5/20党首討論 志位和夫

【哲野】なるほど。安倍さんは絶対にあれは誤った戦争だと、口が裂けても認めないからね。爺さんの岸信介が言うように、あれは日本帝国の防衛戦争だった、と堅く信じている。志位さんも安倍さんの、どポイントを突いたんだね。

【網野】なんでそれが、どポイントになるの?

【哲野】戦後世界秩序は国連体制に代表される。国連は戦勝国による世界平和の維持体制だ。その国連の戦後世界秩序は、民主主義国とファシズムの戦いで、民主主義国側が勝利したという建前で成り立っている。それを象徴するのがポツダム宣言だ。ポツダム宣言でいう日本の世界征服戦争を安部首相が認めないということになると、日本の首相が戦後世界秩序=国連による世界平和維持を認めない、という話になっちゃう。これ、国連憲章に今でもある、敵国条項に該当する話になってくる。

【網野】ちょっとまって、そりゃとんでもなく大変なことじゃない。

【哲野】そう。政治的には自殺行為だね。かといって、安倍さんがあの戦争は防衛戦争だった、という立場を崩すわけにはいかない。どう答えようが、窮地に陥らざるを得ない。だからどポイントの質問なんだ。

【網野】なるほど。ところでどうしてそう、防衛戦争に固執するの?理解できないんだけど。

【哲野】岸信介の考え方では、侵略戦争したのは日本だけじゃない。帝国主義間戦争だったんだ。帝国主義日本が、自らの帝国を守るために、中国や朝鮮半島、アジア諸国の労働力や富や資源を自らのものにしようとするのは当然のことだ、だから防衛戦争なんだ、という理屈だったように思う。
ただ、岸は非常に頭のいい男で、戦後肝心なところでは、シッポを掴ませなかった。首相を辞めてから言いたい放題言っている。その意味では、安倍晋三は出来損ないの岸信介だという言い方もできるんじゃないか。あの世で自分の孫の頭の悪さに、しかめっ面をしてるんじゃないか。

【網野】うーん。帝国主義間戦争という、そういう側面がないわけでもないけど。

【哲野】ところが、日中戦争も、第二次世界大戦の一部だと考えると、帝国主義間戦争という側面よりも、民主主義とファシズムの戦いという側面が大きくクローズアップされる。岸は第二次世界大戦の一面だけを全部だと決めつけてるが、もう一面の特徴、民主主義とファシズムの戦いという側面を全く無視している。国連体制の建前は民主主義とファシズムの戦いで、民主主義が勝利した、ということになっている。またこれは、重要な歴史的事実でもある。

【網野】どちらを重く見るか、ということなのか。

【哲野】そりゃ民主主義とファシズムの戦いで、ファシズムが徹底的に粉砕されたという点を重く見なきゃ、話は始まらない。岸や安倍のように、帝国主義間戦争だという点を重く見れば、戦前のような軍国主義ファシズムを肯定することになりかねない。今そういう雰囲気が世の中に相当あるけど、私たち庶民の立場から見れば、帝国主義間戦争だった、だから日本はやむを得なかったんだと考えてみたところで、未来は開けない。当然、戦前の日本は天皇制軍国主義一色に塗りつぶされていたわけだから、これをポツダム宣言が言うように一掃する必要があった。現実にはそうなってないんだけどね。ここがドイツと日本の決定的違いだね。

【哲野】ところで安倍さんポツダム宣言読んでないって話は本当なの?

【網野】本人はつまびらかに読んでいない、といってるわよ。

【哲野】読んでない?!ポツダム宣言を読んでないし、理解してない首相というのは、戦後初めてじゃないだろうか。(もしかして、もう一人いるかもしれない。それは麻生太郎だろう。彼も爺さんの吉田茂から、頭が悪いのでほとほと手を焼いたという話がある。)ポツダム宣言を受諾して日本の戦後がスタートした、という認識を持ち得ないだろうね、それじゃあ。オバマさんも大変な人を日本の首相に据えちゃったもんだ。人民日報が言う、まさに『飢えたるもの食を選ばず』だね、こりゃ。

【網野】ここまでとは思ってなかったかもしれないよ。

【哲野】ということは、オバマさんもそろそろ安倍さんの見限りどきかもしれないね。

【網野】そうなるかねぇ。なんか心配ですよ。見限れないほど、飢えてたらと。

【哲野】そんなこと言うけど、ボクだって2005年になるまでポツダム宣言をまともに読んだことなかった。『トルーマンと原爆』をやってたからどうしても読んで理解しなきゃいけなかった。

【網野】そういえば、私も教科書でポツダム宣言は習うけど、哲野が訳してくれるまで読んだことないし、文書は載ってないし、ただ「無条件降伏した」ということだけ習った記憶がある。

【哲野】読んでみて驚いた。そしてこれが日本の戦後の出発点であり、枠組みなんだということに初めて気がついた。それで外務省の仮訳を読んで、むかっ腹を立てたわけだ。これじゃ、誰も理解できない。学術界の人だって、本気で訳そうと思えば簡単に平易な日本語、誰でも読める日本語にできるはずなのに、外務省に遠慮して誰もやろうとしない。学術界の成果が日本の市民のものになってない。それで無謀にも自分で訳してみようと思ったわけだ。今読むと穴だらけだけど。

【網野】本来は外務省が訳すか、声をかけて翻訳委員会でも立ち上げて、学者が数人で取り組めば簡単にできた話なんでしょ?なんでやらなかったんだろう、ま、ポツダム宣言だけじゃないんだろうけど。

【哲野】ポツダム宣言の内容を一般市民の知的共有財産にしたくなかった、というほかはないだろうね。

【網野】なんで?

【哲野】基本的に日本の支配構造は戦後も戦前と一貫している。機会があれば、戦前のような天皇中心の一種の管理国家にしよう、という動きはず~っと流れてる。そういう流れから言うと、ポツダム宣言受諾が戦後日本の出発点であり、今も私たちを規定していることを知ってほしくなかった、ということだと思う。
領土問題だってそうだ。あれ、第8項だっけ、『日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定するものとする。』と書いてある。これを受け入れて降伏したわけだから、この条項は今でも私たちを規定している。沖縄だってこの時日本の領土とは明記されていない。実際には戦後アメリカが『我々の決定する周辺小諸島』を曖昧にして混乱させてきた、といういきさつもあるけれど、出発点はこのポツダム宣言だ。ロシアや中国はこの点をいつも強調している。日本国民がこのことを知らなければ、ロシアや中国は反日だと思い込んでしまうだろうね。マスコミもそういう風にあおるし。
その意味では、今回のポツダム宣言を巡る党首討論は非常に有意義だったと思うし、志位さんの、問題の根幹を突く優れた討議だったと思う。
原貴美恵さんの書いた『サンフランシスコ平和条約の盲点』という本を読むと、アメリカが自分の都合で日本を巡る領土問題をいかに恣意的に操作してきたかがよくわかる。原発問題や被曝問題もそうだけど、結局我々が必死こいて勉強しなければ、いいように操作されるし、この社会は一歩も私たちにとっていい社会にならない、ということだよね。

という話を長々とやっておりました。

広島1万人委員会 仲間募集

広島1万人委員会が仲間を募集しています。
http://hiroshima-net.org/yui/1man/
転載します

===

仲間を募集します

広島1万人委員会の活動を大きく展開することになりました。
新しい仲間を募ります。

1.主な活動内容
①月1回の総会
②活動に関する企画・立案
③原発・被曝に関する調査研究活動
④様々な報告作成、ウェブサイト運営
⑤その他

2.次のような仲間を求めます。
①ぜひとも、原発を止めるために何か具体的な活動をしたいと思っている方
②リーダーシップのある方
③ギブアップしない方
④建設的議論が楽しいと感じる方

3.条件
①当然のことながら無給です。
②月会費は500円です。
③ 18歳以上の方。
※一度規約をお読みください。

4.面接がてら一度総会に参加してみてください。
連絡はメールでお願いいたします。
1man_office★hiroshima-net.org
(★をアットマークに変えてください)

5.これからの委員会の活動方針は以下の通りです。

①四国電力伊方原発の存在と危険を広島市⺠に知らせる活動
・繁華街での定期的広報デモ実施
・広報資料チラシ作成配布
・繁華街での街頭宣伝活動
・繁華街での広報アンケート実施
・Webサイトでの広報資料提示
②広島市・広島県・広島市議会・広島県議会への陳情・請願活動
・広島市議会への請願書提出
・上記共同請願人拡大署名活動
・広島市や広島県当局に対する資料提供・広報活動
③四国伊方原発30km圏自治体への陳情・請願活動
・各種要望書・陳情書提出
・地元市⺠グループと連携しての請願書・陳情書提出行動
・伊方原発の特性や危険を明示する資料情報提供
④原発・核施設・放射線被曝に関する資料収集、調査研究活動
・幅広い文献資料の収集
・低線量内部被曝の研究
・トリチウムの研究
・ICRPに関する研究
・規制委審査会合資料の分析と探索

高浜原発運転差止め仮処分命令 決定日のお知らせ

ファイル 410-1.jpg

みなさま

高浜原発運転差止め仮処分命令の決定日が決まりました。

http://adieunpp.com/karisasitome.html

2015年4月14日(火曜日)14時です。
今回は差止め命令が出される公算が強いので、是非ご注目ください。
もし、決定されれば、日本で初めて司法が原発を止めるという歴史的事件になります。

また、是非司法への応援に、との呼びかけがあります。
ご一読ください。

配布チラシ

http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20150414.pdf

達観の酒

哲野がしきりに新聞を読んでいる。

網野「何を読んでいるの?」
哲野「朝日新聞のbeに『達観の酒』というエッセイが出ていて、これがちょっと面白い。居酒屋探訪家の太田和彦という人が書いたものだ。」
網野「そう。beは面白いよね」
哲野「青いbeと赤いbeがあるけど、赤いbeが圧倒的に面白い。いつぞやも、愛読してきた『磯田道史の備える歴史学』に広島の土砂崩れと題する記事が出ていた。8月の例の多くの死者を出した土石流災害のことだ。磯田氏は多くの犠牲者が出たことを悔しくてならない、と書いていた。そしてすぐに浜松から新幹線に乗って東京都立中央図書館で最も死者が多かった八木地区に関する古い記録を探したと書いている。八木が広島市に合併される前の佐東町史を探し出して記録を読んだと書いている。ちょっと引用する。
『土石流が繰り返され、現物が残っているすぐ脇に県営住宅などの団地を建設していったことが、地元の町史にははっきり書いてあった。八木地区の団地造成は、1937年に三菱重工広島製作所(三菱重工祇園工場)の従業員団地の造成を相談されたことから、はじまった。そして、高度経済成長期には、グリコや雪印の牛乳工場の誘致とあいまって、団地化が急速に進んだ。この時代の日本人は技術と経済成長の信者であった。(基本的には今の経済界は変わっていない)自然はコントロールできると、人間の優位を驚くほどに信じた。土砂崩れにしろ、原発事故にしろ、この時代の思想のツケを後代の我々はいま支払っている。』」
網野「まるきりこのあいだの伊方デモのチラシの世界じゃない」
哲野「そうなのよ。あのチラシで広島市当局と広島市議会を大いに批判した。あの事故を人災とどうしても認識しない、その上で危機管理を推進するというわけだから。磯田氏は次のようにも書いている。『この八木村の土地台帳「地ぶり帳」(1762年)をみると、上楽寺という字がある。気になるのはこの地にある観音堂が「蛇落地観世音菩薩堂」と呼ばれ、さらに、近所に「蛇王池大蛇霊発菩薩心妙塔」と刻まれた碑が立っていることだ。土砂崩れを起こす大蛇の霊を祀ってなぐさめ、菩薩心をおこさせて、村の安寧を祈ってきたさまが想像される。』この蛇王池には蛇王池の碑が現在建っているそうだ。この碑を私財を投じて建てたのは地元の有力者で辻さんという人だそうだ。このことは中道元子さんが直接確認をしている。辻さんがこの碑を建てたのは1940年、太平洋戦争の前年だ。磯田氏が書いている1937年、三菱重工業の従業員団地がもう出来ていた頃だろう。この時にすでに土石流災害の危険は地元の人たちから警告を出されていたと考えることができる。」
網野「実際、中道さんからもそういう人が地元にいて、何度も何度も市の職員にお願いしてたのに、何の手も全く打たれなかったと聞いたしね。経済優先で災害の事は二の次だった、その意味ではあの土石流災害は人災だったんだよね。」
哲野「僕もそう思う。磯田氏はこの文章を次のように結んでいる。『上楽寺は元来「蛇落地」であったろう。それが江戸期には上楽寺という楽しそうな地名に変えられていたのだ。『佐東町史』には、「蛇落地観世音像」の写真もある。そのお顔は慈悲深い。みているうち、なんともやりきれなくなってきた。』磯田氏も明らかにあの土石流災害は人災だと考えているということだろう。このあいだ、広島市の調査報告書が公開されていたが、あの災害のことをいつの間にか広島豪雨災害と名前を変えていた。土石流災害ではどうしても人災の印象が強くなるからだろう。」(この記事は2014年9月13に日付朝日新聞beに掲載されています。また、第58回伊方デモのチラシは以下です。http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20150131.pdf
網野「それで話を元に戻すけど、さっきは何を読んどったん?」
哲野「そうそう、その話だった。酒の話だった。」
網野「そんなこというけど、酒なんかぜんぜんのめないじゃない」
哲野「いや、僕は酒は一滴ものまないけど、この太田和彦さんのものの見方が面白かったもんでね。ちょっと引用する。『60歳を超えて酒は焼酎が増えた。お湯割りの一杯はしみじみと心を落ち着かせ、無欲の心境になる。焼酎のよいところはタクアンのしっぽとか、じゃことか、簡単な肴が合うことで、美食珍肴とは無縁だ。』とこの人は書いているけど、これほんとなんだろうか?何しろ酒を飲まないのでさっぱりわからない。」
網野「うちの父は60過ぎて、焼酎が多くなった。」
哲野「そういうもんかね。続けるよ。『ビールは青春の酒で20代が似合う。ワインは恋愛の酒で30代。ウイスキーは男同士がふさわしい40代。日本酒は人の情がわかってきた50代の酒か。』ま、ようするに酒飲みはなんだかんだと酒を飲み続けるという話にも読めるし、こういう立て分けの仕方には異論があるだろう。しかしこれはこのエッセイの本論ではない。続ける。『その伝でゆくと焼酎は、年齢60代「達観の酒」と言いたい。社会のいろいろを経験して得た人生観が、あまり強い主張をせず懐深くゆったり引き受けるような焼酎に合う。ながく生きてきて、ものごとが見えてきた。社会的地位が高い・低いなどという価値観はとうに消えた。そういうことにこだわる人はつまらん人だとわかってきた。立身出世をはたした、経済的に成功した、それがどうした。頭がいいとか、リーダーシップがあるとかも、どうでもよいことになった。人生の価値観が変わったのだ。残ったのは欲得抜きの達観だ。酒との付き合い方も変わってきた。いつまでもぜいたくな美酒趣味でもあるまい。』酒を飲まないからわからないけど、60すぎてつまらん人と奥深い人の区別がやっとつくようになってきた、という点はこの人と僕も全く同感だ。欲も得もなく、反原発運動、反被曝運動に没頭できるのも、60をはるかに過ぎたボクたちの世代の特権かもしれない、と思いながらこの記事を読んでいたわけだよ。」
網野「それって年齢の問題なの?」
哲野「つまらん人と奥深い人の区別はやはり歳を取ってみないとわからん部分もあるね。確かに。でもここは、物理的な年齢ではないかもしれない。」
網野「どういうこと?」
哲野「だから、恐らく、60歳過ぎというのは、ひとつの例え話なのかもしれない。要するに僕らはもう、社会の主役じゃないんだ。脇役なんだ。裏方なんだ。社会の主役はやっぱり30歳代、40歳代、50歳代。それだけに物事が色々見えてくるのかもしれない。」
網野「欲得抜きで、達観した目で、反原発運動、反被曝運動に身を投じる人が増えてほしいね。運動とまではいかないにしても、欲得抜きで問題をしっかり考える人が増えてほしいなぁ。」

哲野とはこういう話をすると、延々と続きそうなので、この辺で。