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第108回広島2人デモ 9月19日報告

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みなさま
(いくつかのメーリングにお送りします)

毎度毎週お騒がせしております、広島2人デモのご報告です。
今日は、デモ翌日の網野と哲野の会話から。

哲野「チラシがね、さっぱりだった。」
網野「どういうこと?」
哲野「うん、プラカードを見る人は多かった。
   じーっと見る人も多かった。」

▽今回のプラカード

哲野「プラカードをじっと見ている人にチラシを渡すと
   これまでは10人中、半分以上は取ったんだよ。
   ところが今日は10人中せいぜい一人。
   またその反応も面白かった。
   あきらかに小馬鹿にしたような中年男性、何を馬鹿なことを言っている、という反応。
   困るなぁ、こんなこと言いふらして・・・という感じ。
   で、チラシを受け取らない。
   どういうことだろうかね?」
網野「ビジネスマンにとっては、にわかに信じがたいとか?」
哲野「それはあると思う。
   例えば電力会社が危険水域にある、という話はこれまでの常識からいえばありえない。
   なにしろ電力会社は准国策会社だからね。
   しかし実際には北海道電力の自己資本比率は5.4%だ。
   5.4%だよ、キミ。
   これ、いつ倒産してもおかしくない自己資本比率だよ。
   信じられないんだろうね。
   また、中国電力が確保した総供給電力のうち、36.7%までが
   他社から買ってきた電気、なんていう話も与太話にしか聞こえないんだろうね。
   電力業界の人なら別として、多くのビジネスマンは
   日本の電気はほとんど電力会社が作ってる、と思っているし
   自家発電があってもそれはほとんど自社消費に使っていると思っている。
   こうなってみると、君が言うとおり、
   有価証券書の分析ということをプラカードに書いておけばよかった。
   あのままでは与太話としてしか読めないんだろうね。」
網野「今回のプラカードは出典を書いておいたほうがいい、と思ったけど
   全部に書いておきたくても、スペースなかったしね。
   でも小さくても書けばよかったな。
   でも、いいリサーチになったね。
   ビジネスマンでも業界が違えば電力業界の事情がわからなかったり
   思い込みが結構あるんだということが今回の反応からわかった。」
哲野「いや、そのことよ。
   新聞やテレビのマスコミ情報をやっぱり真に受けてる、ということでもあるし
   それより広島2人デモを2年以上やってるけど、
   はじめて原発賛成派、原発容認派、の層に直接触れた感じがする。
   いままで原発反対、脱原発派、原発無関心派の感触は
   実感として体でわかった。
   しかし、原発賛成派、原発容認派、これらは広島の少なからず層を占めているはずなのに
   これまで実感としてこの層に触れたことがない。
   今回初めて、この層に直接触れた感じがする。」
網野「言われてみればそうだ、今回のこの反応は
    原発賛成派の関心が向けられた、ということではないか。
    いままで無視されていたはずだ。私たちの実感に残らなかったわけだから。」
哲野「マツダの社員と話をしたことがあるけど、彼は原発は最もコストに優れた方法だと信じていた。
   話自体はすれ違いだったけども、彼らは原発は必要だと信じている。」
網野「そうかなぁ。マツダの株を中国電力が保有しているから、そう信じたいだけじゃないのかな」
哲野「それは違う。一介の社員がそこまで経営レベルのことまで考えない。
   そうじゃなくて、彼は彼なりに日本の産業界に原発による電力供給が不可欠と信じている。
   じゃあ、なぜ、その結論に、経済合理性の観点からという意味だよ、必要だと信じているのか。
   どう思う?」
網野「理解しがたい」
哲野「その通り。君にとっては理解しがたい。
   しかしそのマツダの社員にとっては、常識。」
網野「なんで?」
哲野「唯一合理的な説明は僕たちとマツダの社員は、
   少なくともブルーカラーではなくホワイトカラーの社員は
   僕たちとは全く違う情報サークルに身を置いている、ということだろう。」
網野「情報コミュニティの世界が違う、ということ?」
哲野「僕はそう推測する。だから反原発の情報コミュニティにどっぷり身をおいていると
   原発賛成の情報コミュニティとはますます接点がなくなる。
   これが広島2人デモの次の課題だろうね。
   つまり反原発情報コミュニティの中で原発反対、と言えば、
   そうだそうだという反応が返ってくるのと同様に
   原発賛成派の情報コミュニティの中で原発は日本経済に必要だ、と言えば
   そうだそうだという反応が返ってきているのだと思う。
   安倍晋三君などはその原発賛成情報コミュニティの中にどっぷり浸かっている代表例だろう。
   だからこの2つのコミュニティ、他にもサブコミュニティがあると思うけど
   どう交差させていくか、これが広島2人デモの次の課題ということだろうな。」

みたいな話をしておりました。
この意味で、第108回広島2人デモは非常に刺激的な回となりました。

▽今回のチラシ
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20140919.pdf

いつもより早めに集合場所に行き、待っていると
現れたのはツナさんでした。
哲野「よくまた来れたね~。大丈夫なの、仕事?」
ツナ「ええ、まぁ。」
ツナさんはまた来ると網野には事前に連絡がありました。
おしゃべりして待っていると、警察の方が来たのでいつも通り指令書の確認とチラシを渡します。

網野「良かったですね、(広島土砂災害の)行方不明の最後の1人がみつかって・・・」
警察「ほんとですよ」とほっとしたように、肩の荷が下りたような表情をされました。
警察「これからは復旧段階に入るんですが、まだまだ気が抜けません。」

他の地域の人から見ると、広島が行方不明者の発見に異常なほど執念を燃やしているように見えるかもしれません。
でも広島の人は、そのことを不思議とも何とも思わず、当然の話として行方不明者の発見に大いに関心を持ちました。
これについて、哲野が面白い解説をしていました。

哲野「広島原爆のあと、累々たる死者をほったらかして復興に走って行った。
   今でも大きな声では言えないが、ちょっとモノのわかった人と話をしていると
   いまだって掘り返せば骨が出てくるんですからね、という話が出る。
   その事に対して広島の人は痛烈な後悔と反省を持っている。
   例の桐谷多恵子さんの論文にもあったけど
http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/3616/1/ibunka7_kiriya.pdf
   累々たる屍の上に広島の街が復興された、まだ我々は屍の上で暮らしている、
   だれだったけね、広島学院の先生が言ってたじゃない。
   広島を歩くときは静かに歩いてつかぁさい、だっけ。
   このことに対する痛烈な反省と後悔がある。
   もちろん、今の広島の多くの人たちは、こんないきさつなどは知らない。
   でも、なんていうかなぁ、この痛烈な後悔と反省はちょうど広島の文化の遺伝子みたいに
   今の広島に受け継がれているんじゃないだろうか。」

哲野の分析が当たっているかどうかは別として
最後の行方不明者の発見で広島全体がほっとしたことは事実です。

哲野とツナさんはしきりに今日のチラシの話をしていました。
雑談をしていると音楽が鳴ったので3人で出発です。

哲野「じゃけえさんがいないからなぁ。スピーチのトップバッターは僕か」

といって歩きはじめるとじゃけえさん登場。
だまってマイクを差し出す哲野。
哲野とツナさんがチラシ撒きです。

じゃけえ「・・・毎回チラシを作成し、お配りしております。
    原発問題を考える際、是非参考にしてみてください。
    普段、テレビや新聞のニュースを見ているだけでは知ることのできない事実がたくさんあります。
    これは別に隠されている情報ではありません。
    公表されていますが、テレビや新聞では取り上げられないだけで
    私たちが目にする機会が少ないから、それで知られていないというだけです。
    本来はマスコミがやる役割なんですが、今のマスコミはその役割を果たしているとは言えません。
    テレビや新聞だけでは正確は情報を知ることはできません。
    正確な情報を知らなければ、原発問題について考えることはできません。
    原発問題について考えるためには、正しく情報を知ることが大切です。
    今回のチラシのテーマは原発問題から眺める電力会社の基礎知識その1となっております。

    みなさん、毎月電力会社から送られてくる請求書の内訳をご存知でしょうか?
    電気料金の他に、いっぱいお金が徴収されているということをご存知でしょうか?
    電源立地交付金と言う名でお金が徴収されています。
    国の代りに私たち消費者から徴収されているお金です。
    これは原発が建っている自治体に入るお金です。
    原発立地自治体に入るお金は、毎月私たちが払っているのです。」

経済産業省 資源エネルギー庁発行「電源立地制度の概要」
http://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/dengenrichi.pdf

電源立地地域対策交付金は電力消費者から電力会社にいったん入り
「電源開発促進税」と名前を変え、国の一般会計に入ります。
それからエネルギー対策特別会計という枠組みで電源立地自治体にお金が配られる制度です。
中身を見ると、申し訳のように、水力発電の地元、電力移出県にお金が入っていますが
その中心は原発立地地元と核燃料サイクル施設交付金に化けます。
このパンフレットのキャッチフレーズの一つに、
「原子力発電所が建設される市町村等には電源立地地域対策交付金等による
財源効果がもたらされます。」と書かれています。
是非一度ご覧になられることをお奨めします。

じゃけえ「使用済み核燃料再処理費も電気代の中に請求されています。
     原発にかかるコストが、電気料金とは別に徴収されています。」

正確には、燃料再処理積立金は毎月の電気代と一緒に消費者に請求され
いったん電力会社の懐に入ります。
それから電力会社から拠出金として、
「原子力発電環境整備機構」(NUMO)に入り、
http://www.numo.or.jp/
2010年2月からはNUMOが資金管理を委託すると言う形で
「公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター」
http://www.rwmc.or.jp/
にプールされ、管理センターが資金運用をしています。

▽「再処理積立金」の報告ページ
http://www.rwmc.or.jp/financing/reprocess/financing4.html

2014年3月末現在で総残高は2兆4760億円にのぼりますが
以上のような流れで資金が移動するたびに
目減りしていくと言う仕組みを持っています。

使用済み核燃料を処理するのに、
さらに少なくとも約2兆5千億のお金が必要というわけですが
さていかがなものか・・・

じゃけえ「これからも私たちはこうしたお金を払い続けなければならないのでしょうか
     みなさんはどう思われますか?」

次に哲野にマイクが渡ります。
哲野はチラシの内容をかいつまんで説明し、次のようにスピーチしました。

哲野「私たちの持っている大きな錯覚のひとつは
   日本の電力がほとんど全て電力会社が発電している、というものです。
   この錯覚の効果は結構大きいものがあります。
   一時期、日本の10電力会社の電力生産のうち、3割が原発による電気でした。
   この3割がなくなれば、日本は電力不足に陥る、という理解にすぐ結び付けられました。
   しかし、実際には電力会社以外の発電設備は出力10万kW以上の
   火力発電所だけ合計しても約3400万kWもあります。
   これに10万kW以下の発電設備、水力発電設備、新エネ発電設備を加えれば
   約4000万kWはくだらないでしょう。
   一方で、10電力会社の発電設備(経産省認可ベース)は2億1300万kWあります。
   ですから、10電力会社の持つ発電設備は日本全体が持つ発電設備の84%にすぎません。
   実際、電力会社はこうした非電力会社からの電気を買って、電気代を稼いでいます。
   この構造がしっかりわかっていると、原発なしでは電気が足りなくなる、という宣伝が
   嘘っぱちだとすぐわかります。」
(いま、日本には商業用原発が48基あり、この総発電容量は4428万kWです。
 非電力会社が持つ発電容量はほぼ、この90%に相当します。
 これが原発なしでも充分電力供給が可能な構造です。)

哲野「どうかみなさんも、電力会社に関する基礎知識を身につけて
   その上で、原発問題を考え、賛成か、反対かをお決めください。
   いま一番いけない態度は無関心です。
   社会から自分を切り離して、自分だけの世界に閉じこもって
   原発問題から無関心を決め込む態度、私は原発反対の立場ですが、
   原発無関心は原発賛成の人たちよりもさらに悪質だと考えます。
   私たちは日本列島という運命共同体の中で暮らしているのですから。」

次にツナさん。

ツナ「お騒がせしております。
   広島2人デモと申します。
   2人デモですが今は4人で歩いております。
   私たちはどこかの政党とか、団体とか、組合とか、そういうものではありません。

   今日は電気代。実は原発は電気代を上げている、普段言われていることとは
   全く逆のことを言っているので、僕らが『トンデモ』な感じの人に見えるかもしれません。

   昔、今はさすがにこんなことは言わなくなりましたけれども
   原発の電気が1kW/hあたり6円を切る、破格の発電手段だと
   宣伝されたことをご記憶の方も多いと思います。
   実は原発はとんでもなくお金のかかるものだということが
   少しずつ、少しずつですがわかってきています。
   再稼働のために電力会社は投資をしていますが
   それでも火力発電は国富を流出させると言っています。

   プラカードやチラシにもありますけど、中国電力で言えば
   中国電力が売っている電気は、全て中国電力が作っているわけではありません。
   ちょっと聞くと『へ?』と言う感じですが、
   実際に中国電力の売っている電気の3分の1は他の会社から買っています。
   
   これは主に電源開発という会社が売ってるんですが
   電源開発には私たちには売ってくれないんですが
   この値段、非常に安いんですよ。プラカードにもありますね。桁が一個違います。
   私たち一般家庭が中国電力から1kW/hあたり22.2円で買っているのに
   電源開発は中国電力に火力発電の場合約8円弱で売っている。

   といって電源開発は原子力発電をしているわけではありません。
   石炭火力発電です。(中国電力への売電の場合)

   じゃあ、なんで私たち、こんな高い電気料金を電力会社に払っているんだと。
   あの~いま、原発は動いてないんですけど、(稼働していない)
   原発は動いてなくてもお金がかかるんですね。
   平均すると、電気料金収入の約7%を原発の維持のためだけに使っています。」

(電気料金収入に占める原発維持コストは電力会社によって違います。
 例えば東京電力では7.6%、一番低い中部電力で4.1%、一番高い北海道電力では12.67%
 次に大きい四国電力では11.47%。下表参照のこと)

ツナ「電気料金収入の約7%が動いていない原発に使われているんですね。
   これで電気料金が高くならないわけがない。
   収入の7%が使っていないものに使われている。
   これ、ちょっと商売やってる人だと驚きじゃないかと思うんですが。
   電力会社がフトコロを痛めているのかと言えば、
   私たちが総括原価方式で払っているわけです。
   私たちのフトコロが痛んでいるわけですね。

   私たちにとって役に立たないものに、電気代という名目でお金をむしり取られているんだと。
   このことをしっかり頭に入れておいてください。」

あと、ツナさんは3年半前の東電福島第一原発事故で
東京も放射線管理区域に本来なっているほどの
放射能汚染を被っていること、そんな中で原発再稼働などは論外であることを
説明しました。

いったん、マイクが再びじゃけえさんに渡り、じゃけえさんも再びマスコミ情報だけに頼らず
自分で調べにいく必要があることをスピーチしました。
次に網野です。

網野「原発に賛成、反対、その以前に、
   私たちは結構、原発のこと、電力会社のこと、被曝のこと、放射線のこと、
   知らないことがいっぱいあるんですよね。
   まず、知ってから賛成か反対かを決める必要があると思います。
   みなさんにとって必要と思われる情報をこうしてチラシにしてお配りしております。
   情報ソースは主に、経済産業省、各電力会社の有価証券報告書やwebサイトの公表資料、
   原子力規制委員会、等々公的なものからしか取っていません。
   私たちから見た解説も加えておりますが、資料出典を明確にしておりますので
   是非一次資料に当たって、ご自分でご覧いただき、ご判断ください。
   新聞やテレビの報道資料は基本的に使っておりません。
   というのは、報道資料は二次資料であり、すでに様々なバイアスがかかっています。
   もちろん、報道資料でもマスコミが独自に調査し調べた資料は使えますが
   その場合でも資料出典が明らかになっていないものは不確かな情報として扱います。
   マスコミの報道で困ったことは、ほとんど資料出典を明らかにしないことです。
   その意味では、マスコミ資料は信頼できる情報とは言えません。

   原発問題は私たちの全体の問題です。
   というのは、福島原発事故から3年半経ちましたけれども
   今なおかつ、原子炉からは大量の放射能が放出され続けています。
   たしかに、初期の大量放出期と比べれば小さい放出量ではありますが
   平常運転時と比べれば、新聞トップで報道されるような放射能量です。
   しかも、ここ1年を見ていますと、原子炉から放出される放射能以外に
   敷地から放出される放射能も大きくなっています。
   これは福島第一原発の敷地自体が放射性物質の仮置き場化し
   そこから風に乗って全国に拡散しているのです。
   つまり、事故から3年半経った今、私たちは二重の放射能放出源を抱えることになりました。
   これ以上、私たちの住む日本を放射能に汚染させてはなりません。
   このことを忘れないでください。
   そしてもう一つ、日本はまだ、福島第一原発事故による、原子力緊急事態宣言中であり
   この解除の目処もたっていないことも忘れないようにしてください。
   それから東電がついに認めたように、1号炉から3号炉は核燃料が全て溶融して
   デブリになってしまっていること、この意味は、
   廃炉の第一歩である、核燃料取りだしの目処もつかないことを
   東電も認めたことを意味します。
   つまり、今の状態が、この先数十年は続くということが決定的になったわけです。

   私たちは日常に慣らされてしまって、ふと忘れそうになります。
   しかし、放射能汚染が日常にあるからといって、忘れていいことではありません。」

元安橋に帰ってきてデモ終了。
今日は網野も哲野も精魂尽き果て、立ち話もなしにすぐに解散しました。
チラシは30部用意して、15部くらい余りました。
以上ご報告いたします。