第64回伊方原発再稼働を止めよう!2015年5月30日
2015年5月30日15時~16時
広島平和公園元安橋東詰(花時計前)出発
本通り・金座街往復
広島で毎週金曜日18時から、元安橋東詰をスタートして歩いています。(休止中)
第64回伊方原発再稼働を止めよう!2015年5月30日
2015年5月30日15時~16時
広島平和公園元安橋東詰(花時計前)出発
本通り・金座街往復
国民が事態を正しく理解する努力を妨害している大手マスコミ
朝日新聞を見ていた網野が、憤慨したように哲野に対して
網野:311以降特に注意してマスコミの報道を見るようになったけど、もう、国民の知る権利を、マスコミが妨害しているような気がする。
哲野:知る権利というと?
網野:正しく事態を把握するべく、情報を的確に知ろうとする努力のことを私は言ってるんだけど。
哲野:ウーン、少なくとも日本のマスコミがこれまで国民の知る権利を守ってきたことはないし、だいたい、マスコミにそれを期待するのは無理なんじゃないか。
網野:それは、戦前、戦中、戦後のマスコミのあり方を知ったから、私も期待する方がおかしい、と最近はそう思う。でも多くの人は知らないでしょ。それに情報を知ろうとすれば手近な新聞やテレビ報道にどうしても頼る。
哲野:いや、そういう意味ではなく。知る権利は、知る努力があって初めて守られるもんだよね。懐手してなんの努力もせずに、知る権利を主張するのが元々虫がいいっていうもんだ。
いや、ボクの言いたいことは、マスコミに知る権利を守れと言ったって、それはお門違いだ。マスコミは、もともとそういう存在じゃあない。ニュースを商品として、消費して、垂れ流す、これがマスコミだ。根底に無理な期待があるんじゃないか。
網野:無理な期待だね確かに。
哲野:いや、ボクが言いたいのは、マスコミがどうあるべきかじゃなくて、私たち一般市民がどうあるべきかの話なんだよね。日本は先進国の中でも異常にマスコミに対して無盲目の信頼がある社会。これが根幹にある問題じゃないかね。マスコミの報道に対して批判力が弱いとか、そういう問題だよ、きっと。でも最低限、マスコミは我々が正しく知ろうとする努力を邪魔しちゃいけないよね。少なくとも、確認された事実は、事実として報道する必要があるよね。事実をねじ曲げちゃあ、これはルール違反だろうね。
網野:知る権利のもっと前の話ね。最低限事実は事実として言ってもらわないとルール違反。
哲野:そうそう。知る権利を守れったって、そりゃ無理だ、知る権利以前の話として、少なくとも確認された事実は、確認された事実として報道する、これは君も言うように、お金とって新聞売ってるわけだから、最低限の商道徳という話さ。
網野:規制基準を安全基準といったり、解釈改憲といいながら、憲法違反とは言わないし。原子炉設置変更許可が出た時点で事実上の合格というし。地元30km圏同意は法的要件なのも、法的要件ではないと言うし、明らかな嘘も時々見受けられるし。
哲野:ま、30km圏同意が再稼働の法的要件かどうかは、再稼働に関する明文規定がないので、これは誰しも確認できる事実とはいえない。ただ、現在の法体系を解釈すると、こうなる、という話。
でも、規制基準の場合は、これは確認された事実だ。
安全基準というと、審査に合格した原発は安全だという誤解が生まれるかもしれないということで、規制基準と名称を変えたわけだし、規制基準合格の定義も、これも、確認されている事実だ。原子炉設置変更許可、工事計画認可、保安規定認可、起動前検査、起動後検査が確認されて、審査合格と、これは誰も否定しようのない事実だからね。
(22P参照のこと)
これなどは、事実をねじ曲げて報道している、好例だろうね。
九州電力の川内原発のケースでは、原子炉設置変更許可の審査書案が出ただけで川内原発合格と各マスコミ一斉に報道した。知る権利を守ることは期待しないが、せめて確認された事実は、確認された事実として報道しなきゃいけないよね。これじゃあ、ニュースが正しい商品ではなくなるから、金返せ、と言いたくなる。
網野:少なくとも正しく理解しようとする努力を妨害しちゃいけないよね。
哲野:いや、その話、今日の朝日新聞に性懲りも無くまた正しく理解しようとする私たちの努力を、妨害し混乱させようとする記事が2本立て続けにでている。
▽朝日新聞2015年5月28日
哲野:1本は、福島原発の高濃度汚染水問題。この記事によると、東京電力は溜まっていた高濃度汚染水の処理が終わったと発表して、そのまま朝日は書いている。
高濃度汚染水の定義は、核燃料(デブリ)に直接触れた処理水のことを指している。東電は、ALPSに通して様々な放射線核種を取り除いてトリチウムだけが残った処理水を、低濃度汚染水と呼んでいる。だから、最初に放射性セシウムを取り除いて、高濃度汚染水にして、そこからストロンチウム90など、様々な放射線核種を取り除いてトリチウム水にする、これが汚染水処理のプロセスだ。
ところが、安倍さんが東京オリンピックを呼んじゃった、高濃度汚染水の処理を早くしなきゃいけない、東電は2014年度までに終わると約束をして、その約束がトラブル続きのALPSのために果たせなくなった。そこで、高濃度汚染水の定義を変えちゃった。
どう変えたかというと、ストロンチウム90だけ取り除けば、もう高濃度汚染水じゃないと。そこでストロンチウム90だけを取り除いて高濃度汚染水処理が終わったと発表したわけだ。
網野:ちょっと待ってよくわからん。東電は高濃度汚染水を約62万トン処理したと発表したけど、そうじゃないわけ?
哲野:そうじゃない。62万トンのうち、ストロンチウム90だけを除いた汚染水が18万トン残ってる。要するに、高濃度汚染水の定義を変えて、ストロンチウム90だけを取り除いても、高濃度汚染水処理が終わった、と東電は公表してるわけだよね。この朝日の記事も、よく読んでみると「処理完了の約62万トンのうち、約18万トンがこの処理水…さらにALPSで処理しなければならない」とちゃんと書いてある。読んでるものは、混乱しちゃうよね。要するに、62万トンの高濃度汚染水処理が終わったのか、終わってないのか。
網野:そう、私もここがよくわからない。
哲野:この記事のどこにも、東電が高濃度汚染水の定義を変えちゃった、と書いてないから、読む者はわからない。本来の定義に従えば、62万トンー18万トン=48万トン分の高濃度汚染水が処理できました、あと18万トン残っています、と書けば、正確に理解ができるけど。あるいは、東電は高濃度汚染水の定義を途中で変えて、ストロンチウム90だけを取り除いても、高濃度汚染水じゃないとしたと。そしてそのまま、高濃度汚染水処理が終わったと発表したけど、この発表は正確じゃない、と書けばもっとよく理解できたかもしれない。これなんかは知る権利どころの話じゃなくて、せめて私たちの理解を妨害しないでくれって話だよね。
網野:もう1本の記事は?
哲野:これはもっとケッサクな話。原子力規制委員会は、27日、川内原発1号機の保安規定(正確には、保安規定変更)を認可した、これで原子炉設置変更許可、工事計画認可、保安規定認可がそろったので、川内原発の審査終了、という記事さ。
網野:ちょっとまって。原子炉設置変更許可が出た時点で、「審査終了」って言葉使ってたよね?
哲野:いや、使ってない。「審査合格」だ。
網野:あ、そっかそっか。審査が終了して合格だから、勘違いしてた。
哲野:先ほどの原子力規制委員会の資料を見てわかるように、審査終了=審査合格だ。それを終了もしてないのに、合格、合格、と書いてきたものだから、実際保安規定が認可された時点でどう書くかなと思ってたら、審査終了ときた。
網野:合格したんじゃなかったの?って話だよね。
哲野:そりゃ原子炉設置変更許可はすべての基本の出発点だから、一番大事なのは事実だが、これが合格かというと合格ではない。事実に反する。だから、私たちを混乱させて、理解を妨げるような記事は少なくとも書くべきじゃない。ルール違反だ、とボクは言うわけだよね。もうちょっと言えば、経産省や電気事業連合会の尻馬に乗って、審査合格してないものを審査合格だとはやし立てるような世論誘導はすべきじゃない、とこう言ってるわけよ。
網野:なるほど、知る権利以前の問題ね。
哲野:この朝日の記事にしたところで、まだ事実を曲げている。原子力規制委員会の資料によれば、審査・検査終了は起動後検査が終わった時点となっている。川内原発1号機は現在起動前検査の最中だ。原子炉に核燃料も入れてない。原子炉に核燃料を入れて、間違いなく動作するかどうかを起動後検査を終了して、はじめて合格なんだけど、見出しには川内原発の審査終了と書いてある。正しく理解する立場から言えば、この記事ですら理解を妨げ混乱を誘発している。
網野:それにこのフローチャート見ても、ここで再稼働ってかけないんじゃないかと思うんだけど。
哲野:そうそう、その問題もあるよね。原子力規制委員会の審査合格は再稼働の法的要件の重要な一つであるけれども、必要十分条件ではない。菅直人さんの特別委員会質疑にもあったように、現在原子力災害対策指針が30km圏の原子力災害避難計画を義務づけているわけだから、30km圏自治体の再稼働同意がどうしても必要となる。確かに30km圏自治体の同意が必要とどこにも明記されてないが、現在の原子力規制法体系を理解すると、そう結論せざるを得ない。それをすでに地元同意は終わった、あるいは朝日新聞が一貫して主張するように、地元の再稼働同意は法的要件ではない、という立場からこのフローチャートはできている。
網野:そうなんだよねえ。こういう理解を妨げてるよね。
哲野:地元同意が法的要件かどうか、についてはまだ議論の分かれるところだ。しかし少なくとも、国会の特別委員会で地元同意(この場合30km圏)が法的要件の必要にして十分条件である、という議論が行われていることだけは報じておかなきゃ、読む者は正しく理解し判断することはできない。しかもこの時、東電の姉川さんは30km圏地元の理解が得られていないということになると、電気事業者としては原発の再稼働はできない、と明確に電気事業者の立場から答えているわけだから。
▽まぼろしの第115回広島2人デモチラシ
5~6ページに「衆議院 原子力問題調査特別委員会2014年11月6日 菅直人議員 質疑抜粋」
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20141114.pdf
網野:知る権利をマスコミが守ってくれなくて良いから、せめて確認された事実は確認された事実として、報道してくれなくちゃ私たちが正しく事態を把握できないよね。
てな話をしておりました。
今日の哲野と網野の会話。
【網野】ポツダム宣言に振り回されたね
【哲野】今から10年も前に訳したポツダム宣言に、あれほどのアクセスがあるとは全く予想してなかった。
ポツダム宣言はトルーマン政権の広島原爆投下(トルーマン政権による原爆対日使用)におおいに関係していて、その興味から訳したものだったけど、今読み直して見ると色々誤訳や訳し落としがあったりして、大慌てで訂正した。
▽『ポツダム宣言』
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/potsudam.htm
【哲野】なんであんなに1日に2万とか、3万とか閲覧数があったんだろうね。
【網野】それがね、ツイート見て知ったんだけど、どうも安倍さん、国会の党首討論で、共産党の志位さんの質問中、ポツダム宣言の第6項と8項で、前の戦争は誤った戦争だということが指摘されてる。それを受け入れて戦争が終わった、あれが誤った戦争だったという認識があるかという質問に、よく読んでいないので論評することは差し控える、と答弁したのよ。志位さんがおっかけてポツダム宣言のいう侵略戦争を認めないのか、と質問したんだけど、ついに言を左右にして、安倍さん、認めなかった。それでみんな、ポツダム宣言ってなんだ?とインターネットで調べたらしい。それで哲野のポツダム宣言の訳も、見られたということらしいわよ。
▽安倍晋三「ポツダム宣言」受諾5/20党首討論 志位和夫
【哲野】なるほど。安倍さんは絶対にあれは誤った戦争だと、口が裂けても認めないからね。爺さんの岸信介が言うように、あれは日本帝国の防衛戦争だった、と堅く信じている。志位さんも安倍さんの、どポイントを突いたんだね。
【網野】なんでそれが、どポイントになるの?
【哲野】戦後世界秩序は国連体制に代表される。国連は戦勝国による世界平和の維持体制だ。その国連の戦後世界秩序は、民主主義国とファシズムの戦いで、民主主義国側が勝利したという建前で成り立っている。それを象徴するのがポツダム宣言だ。ポツダム宣言でいう日本の世界征服戦争を安部首相が認めないということになると、日本の首相が戦後世界秩序=国連による世界平和維持を認めない、という話になっちゃう。これ、国連憲章に今でもある、敵国条項に該当する話になってくる。
【網野】ちょっとまって、そりゃとんでもなく大変なことじゃない。
【哲野】そう。政治的には自殺行為だね。かといって、安倍さんがあの戦争は防衛戦争だった、という立場を崩すわけにはいかない。どう答えようが、窮地に陥らざるを得ない。だからどポイントの質問なんだ。
【網野】なるほど。ところでどうしてそう、防衛戦争に固執するの?理解できないんだけど。
【哲野】岸信介の考え方では、侵略戦争したのは日本だけじゃない。帝国主義間戦争だったんだ。帝国主義日本が、自らの帝国を守るために、中国や朝鮮半島、アジア諸国の労働力や富や資源を自らのものにしようとするのは当然のことだ、だから防衛戦争なんだ、という理屈だったように思う。
ただ、岸は非常に頭のいい男で、戦後肝心なところでは、シッポを掴ませなかった。首相を辞めてから言いたい放題言っている。その意味では、安倍晋三は出来損ないの岸信介だという言い方もできるんじゃないか。あの世で自分の孫の頭の悪さに、しかめっ面をしてるんじゃないか。
【網野】うーん。帝国主義間戦争という、そういう側面がないわけでもないけど。
【哲野】ところが、日中戦争も、第二次世界大戦の一部だと考えると、帝国主義間戦争という側面よりも、民主主義とファシズムの戦いという側面が大きくクローズアップされる。岸は第二次世界大戦の一面だけを全部だと決めつけてるが、もう一面の特徴、民主主義とファシズムの戦いという側面を全く無視している。国連体制の建前は民主主義とファシズムの戦いで、民主主義が勝利した、ということになっている。またこれは、重要な歴史的事実でもある。
【網野】どちらを重く見るか、ということなのか。
【哲野】そりゃ民主主義とファシズムの戦いで、ファシズムが徹底的に粉砕されたという点を重く見なきゃ、話は始まらない。岸や安倍のように、帝国主義間戦争だという点を重く見れば、戦前のような軍国主義ファシズムを肯定することになりかねない。今そういう雰囲気が世の中に相当あるけど、私たち庶民の立場から見れば、帝国主義間戦争だった、だから日本はやむを得なかったんだと考えてみたところで、未来は開けない。当然、戦前の日本は天皇制軍国主義一色に塗りつぶされていたわけだから、これをポツダム宣言が言うように一掃する必要があった。現実にはそうなってないんだけどね。ここがドイツと日本の決定的違いだね。
【哲野】ところで安倍さんポツダム宣言読んでないって話は本当なの?
【網野】本人はつまびらかに読んでいない、といってるわよ。
【哲野】読んでない?!ポツダム宣言を読んでないし、理解してない首相というのは、戦後初めてじゃないだろうか。(もしかして、もう一人いるかもしれない。それは麻生太郎だろう。彼も爺さんの吉田茂から、頭が悪いのでほとほと手を焼いたという話がある。)ポツダム宣言を受諾して日本の戦後がスタートした、という認識を持ち得ないだろうね、それじゃあ。オバマさんも大変な人を日本の首相に据えちゃったもんだ。人民日報が言う、まさに『飢えたるもの食を選ばず』だね、こりゃ。
【網野】ここまでとは思ってなかったかもしれないよ。
【哲野】ということは、オバマさんもそろそろ安倍さんの見限りどきかもしれないね。
【網野】そうなるかねぇ。なんか心配ですよ。見限れないほど、飢えてたらと。
【哲野】そんなこと言うけど、ボクだって2005年になるまでポツダム宣言をまともに読んだことなかった。『トルーマンと原爆』をやってたからどうしても読んで理解しなきゃいけなかった。
【網野】そういえば、私も教科書でポツダム宣言は習うけど、哲野が訳してくれるまで読んだことないし、文書は載ってないし、ただ「無条件降伏した」ということだけ習った記憶がある。
【哲野】読んでみて驚いた。そしてこれが日本の戦後の出発点であり、枠組みなんだということに初めて気がついた。それで外務省の仮訳を読んで、むかっ腹を立てたわけだ。これじゃ、誰も理解できない。学術界の人だって、本気で訳そうと思えば簡単に平易な日本語、誰でも読める日本語にできるはずなのに、外務省に遠慮して誰もやろうとしない。学術界の成果が日本の市民のものになってない。それで無謀にも自分で訳してみようと思ったわけだ。今読むと穴だらけだけど。
【網野】本来は外務省が訳すか、声をかけて翻訳委員会でも立ち上げて、学者が数人で取り組めば簡単にできた話なんでしょ?なんでやらなかったんだろう、ま、ポツダム宣言だけじゃないんだろうけど。
【哲野】ポツダム宣言の内容を一般市民の知的共有財産にしたくなかった、というほかはないだろうね。
【網野】なんで?
【哲野】基本的に日本の支配構造は戦後も戦前と一貫している。機会があれば、戦前のような天皇中心の一種の管理国家にしよう、という動きはず~っと流れてる。そういう流れから言うと、ポツダム宣言受諾が戦後日本の出発点であり、今も私たちを規定していることを知ってほしくなかった、ということだと思う。
領土問題だってそうだ。あれ、第8項だっけ、『日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定するものとする。』と書いてある。これを受け入れて降伏したわけだから、この条項は今でも私たちを規定している。沖縄だってこの時日本の領土とは明記されていない。実際には戦後アメリカが『我々の決定する周辺小諸島』を曖昧にして混乱させてきた、といういきさつもあるけれど、出発点はこのポツダム宣言だ。ロシアや中国はこの点をいつも強調している。日本国民がこのことを知らなければ、ロシアや中国は反日だと思い込んでしまうだろうね。マスコミもそういう風にあおるし。
その意味では、今回のポツダム宣言を巡る党首討論は非常に有意義だったと思うし、志位さんの、問題の根幹を突く優れた討議だったと思う。
原貴美恵さんの書いた『サンフランシスコ平和条約の盲点』という本を読むと、アメリカが自分の都合で日本を巡る領土問題をいかに恣意的に操作してきたかがよくわかる。原発問題や被曝問題もそうだけど、結局我々が必死こいて勉強しなければ、いいように操作されるし、この社会は一歩も私たちにとっていい社会にならない、ということだよね。
という話を長々とやっておりました。
広島2人デモ しらばくお休みのお知らせ
みなさま
15日の報告にも書きましたが、広島2人デモはしばらくお休みをいただきます。
理由は哲野・網野ともども仕事が立て込んでしまいました。
6月23日はちょうど広島2人デモをはじめて3年目になります。
それまにで再開できればと思っております。
(7月に入れば確実に再開可能なのですが)
なお休み期間中ではありますが、実際にデモができないだけで、お伝えしたい情報や取り上げたいテーマはありますので、時折「まぼろしのデモチラシ」を作成予定です。
再開の情報や幻のデモチラシに関しては、ツイッターやウェブサイト、メールなどで随時お知らせしてまいります。
今後ともよろしくお願いいたします。
広島2人デモ
哲野イサク
網野沙羅
みなさま
毎度毎週お騒がせしております。
第130回広島2人デモのご報告です。
今回も、地味な話題です。
哲野の解説から。
哲野「前から、気にはなってたんだけど、原子力規制委員会に今年から
『廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討チーム会合』が発足した。
よく話題になるのが、使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物。
しかし、これから始まる廃炉ラッシュで原子炉設備、建屋解体にともなう
放射性廃棄物はいったいどうするのか。
これらは、『低レベル放射性廃棄物』だとして、これから処分されようとしている。
この検討チームはこの低レベル放射性廃棄物の処分法規制について
一年以内に結論を出すのがその使命。
例によってここでも出てくるのがICRP。
2013年勧告のPub.122がベースになっている。
▼
http://www.icrp.org/publication.asp?id=ICRP%20Publication%20122
主著者のウォルフガング・ヴァイス氏はICRPの幹部の一人で
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の重鎮。
この人は、最近貰ったメールだと京都で講演をするそうだ。
▼
https://www.jrrs.org/informpage/detail/25
また、共同著者のCarl-Magnus Larssonはオーストラリアの核規制庁のトップで
ICRPの第5委員会の委員長。
日本人の共著者の梅木博之氏は去年までJAEA(日本原子力研究開発機構)の
地層処分部長で現在はNUMO(原子力発電環境整備機構)の理事に就任している。
本来、ICRPは、放射線防護の国際的勧告機関、
UNSCEARは、国際的な核防護の評価機関、
各国の核規制庁(原子力規制)や日本で言えばNUMOなどは
こうした勧告や評価を批判的に検討して核規制行政(原子力規制行政)に
取り入れる行政機関。
ところが、同じ人物のグループが提案をし、その提案を評価し、
その提案を取り入れるわけだから、
なんのことはない、最初から出来レース。
例えは悪いけど、殺人事件の犯人が、警察をやって、検察官やって、
裁判官もやって、おまけに、殺人事件の法整備までやる、という図式。
高レベル放射性廃棄物の処分問題も重要だけど
もっと切実なのは、『低レベル放射性廃棄物』。
見てると、低レベル放射性廃棄物っていったって、
炉心設備の放射性廃棄物はぜんぜん低レベルでもなんでもない。
おまけに、いままで低レベル放射性廃棄物だったものは
クリアランスレベルと称して、一般産業廃棄物とすることを合法化しようとしている。
電気事業連合会なんかは、これを再利用しようとしている。
▼
http://www.fepc.or.jp/nuclear/haishisochi/clearance/
(このページの一番下に再利用例として、ベンチなどの写真が掲載されている)
しかも、低レベル放射性廃棄物のうち、L3は
『きわめて放射性レベルの低いもの』としてトレンチ処分だと。
トレンチというと、なにやらありがたそうに見えるけど、
要するに、地面に穴掘って埋めちまえ、というこういう話。
これから、廃炉に伴って出てくる『低レベル放射性廃棄物』自体が
各レベルで裾切処分にあって、我々一般の生活空間にあふれかえる恐れがある。
今原子力規制委員会で進めていることは、こうした生活空間の中の
放射性物質を合法化しようという動き。
廃炉をスムーズにするためには、まず廃棄に伴うコストダウン、
そのためには、放射性廃棄物の裾切処分がこれから進められるという話。
これはある意味、高レベル放射性廃棄物の地層処分問題よりも
我々の生活に密着しているだけに、深刻な問題かもしれない。
ところでこうした世界の核産業界の体質、問題がせっぱつまってくると
バタバタ動き出す、という体質は何も今に始まったものじゃない。
いまから70年も前の核産業のパイオニアたちによって
こうした体質を持ち続けると、核のエネルギーの利用は大きな発展が
見込めないかもしれない、とすでに指摘、自己批判していた」
というわけで、今回のチラシとなりました。
▼第130回チラシ
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20150515.pdf
▼タイトル
「研究の前段階の成果をもぎとり 続けてきた」核産業界(原発業界)
そのツケの一つが今回るー放射性廃棄物処理問題
▼トピック
1.1945年5月31日暫定委員会「研究の方法としては完全に誤っている」
2.当初から核の軍事利用のその向こうに、核の産業利用を見据えていたパイオニアたち
3.原子力規制委員会の「廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討チーム」初会合2015年1月26日
4.「廃炉に伴う放射性廃棄物」の課題は何か?
5.原発廃炉措置とは何か?
6.私たちはどれくらいの量の話をしているのか?
7.私たちはどの程度の時間軸の話をしているのか
8.いったいこれら措置に現実性があるのか
話題が地味なだけに、(地味な話題はたいていの場合、重要問題です)
プラカード作りに苦労しました。
これといって、一般受けしそうなフレーズがなかなか見当たらなかったからです。
結果以下のようになりました。
▼今日のプラカード
▼植え込みに差したプラカード
じゃけえさんがチラシの準備に手伝いに来てくれたので、
いつもより大幅に時間が出来ました。
哲野「チラシ何部もっていく?」
網野「15日だから15部にしよう」
哲野「配り手もいないし、そんなに取りにくるかなぁ。」
じゃけえ「哲野さんが一生懸命渡せばいいんじゃない?」
哲野「う、う~ん。それも言えるかなぁ。」
集合場所に着くと、ポツリポツリと雨粒が。
▼出発前の元安橋
警備の警察と指令書の確認。
6時の出発を待っていると、植え込みに立てたプラカードを遠くから見つけて
こちらに近寄ってきて、じ~~っと見ている初老の男性がいました。
哲野が、黙ってチラシを差し出すと、黙って受け取って読みながら立ち去りました。
哲野がじゃけえさんに、「ホラ、ホラ、チラシ取って行ったよ。こんな地味な話題、興味があるのかなぁ」
話していると、6時の音楽。出発です。
トップバッターはじゃけえさん。
じゃけえ「これから日本は原発の廃炉ラッシュに入ります。
しかしまだ決まっていないことがたくさんあります。
決めても実現できるかどうかもわかりません。
まず廃炉がどういう風に進められるのかなど、チラシでまとめてあります。
廃炉に伴う放射性廃棄物とはどういう分類になっているのか
どれくらい廃炉で放射性廃棄物が発生するのか
原子力規制委員会の資料を基にまとめております。
地面に埋めてしまうくらいしかないんですが、
日本では恐らく候補地もなかなか見つからないと思います。
(高レベル放射性廃棄物は、地層処分と言う言葉を使うのに対して
低レベル放射性廃棄物は、浅地処分と言う言葉を使っています。)
廃炉にしたあとどのように炉心設備や放射化した金属や、建屋などの
放射性廃棄物を処分するのかという技術が
開発されないまま、日本も原発がたくさん建ってしまいました。
廃炉には厖大なコストがかかります。
放射性廃棄物の処理にも厖大なコストがかかります。
これはすべて、わたしたちが払う電気料金や税金に組み込まれていきます。
原発は決して低コストな発電方法ではないともう明らかになっています。
70年前から平和利用時の核利用について
幅広い基礎研究が必要だということが指摘されていました。
ようやく廃炉に伴う放射性廃棄物処分について検討する会合が
原子力規制委員会ではじまりました。
日本の原発導入は、あまりにも向こう見ずな結論だったのではないかと思います。
未来を生きる人たちに少しでも敬意を払うのであれば
今すぐ廃炉にして放射性廃棄物処理の技術研究に注力するべきだと思います。
廃炉後の放射性廃棄物の規制に関する検討が始まりましたが
放射性廃棄物の規制基準が甘ければ、
私たちの生活の身近に放射性物質があるという状態になります。」
歩き始めてすぐ哲野はチラシを2部渡したそうです。
それに、全員が気が付いたことですが、プラカードの注目度が高かったです。
それも、全く原発や、被曝などに関心を持たない層と見られる人たちが
良く見ていた、というのが実感です。
「なんじゃろ?この人たち」(私たちデモのこと)という層から、
放射性廃棄物に関心のある層まで、幅広かったと思います。
しかしその層の人たちは、積極的にチラシを読んでみよう、というところまではいきません。
今までと全く違う層が反応を示した、というのが大きな特徴です。
次に哲野です。
哲野「今日は廃炉に伴う放射性廃棄物の話がテーマです。
すでに日本では福島第一原発の1~6号、
中部電力の浜岡1~2号機
日本原子力発電の東海原発、これは日本で最初の一番古い原発ですが
これらが廃炉工程に入っております。
さらに今年の前半、関西電力の美浜1~2号機
中国電力島根1号機、九州電力玄海原発1号機、
これらが採算ベースにのらないということで各社から廃炉の発表がされております。
その他、福島第二原発には4基ほど原発がありますが、
現在の状況では、福島の人たちは、この4つの原発の再稼働を
たぶん許さないと思います。
さらに北陸電力の志賀原発
志賀原発の地下には活断層があるということが決定したようで
再稼働できない、廃炉にせざるをえない。
その他2020年までに寿命を迎える原子炉は8つあります。
これらを全部数えると現在54ある原発のうち、半分くらいは
20年代から本格的に廃炉に入っていくということになります。
廃炉には、まず核燃料を撤去しなければなりません。
それから原子炉内の設備を壊していって
最後に原子炉建屋を壊し、更地にする。
この過程ででる放射性廃棄物は膨大な量になります。
原子力事業連合会の推計では
恐らく45万トンに上るだろうという推計がでております。
45万トンの放射性廃棄物をいかに処理するのか、これが大きな課題として
原子力規制委員会で今年から議論が始まっています。
『廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討チーム会合』
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/hairo_kisei/
しかし、ここの議論をきいていますと、非常におかしい。
原子炉の炉心付近の設備。
これらは長いこと中性子を浴びてますので、放射化現象を起こしています。
わかりやすくいえば、普通の金属が中性子を浴びて、
放射能を持ってしまう、ということです。
どんな放射線核種が出てくるかは、その金属、あるいは物質によって決まりますが
どちらにしてもコバルト60、ニッケル、こうした金属、それからトリチウム
こうした同位体、放射性物質が大量に発生します。
電気事業連合会の報告を読むと、たとえば
炉心付近1kgあたり数千億ベクレルの濃度コバルト60を含んだ廃棄物が発生するそうです。
しかしながら、今の日本の基準はネタ元はIAEAの基準なんですけど
『低レベル放射性廃棄物』なんだそうです。
なんか頭がおかしくなりそうですが…
1kgあたり数千億ベクレルの放射能が、なぜ低レベル放射性廃棄物なのか。
これ、非常に疑問なところです。
議論をきいていると、原発を解体して発生した放射性廃棄物に
使用済核燃量を除けば、中レベル放射性廃棄物は発生しない、
全部低レベル放射性廃棄物である、こういうふうな議論になっています。
低レベル、中レベル、高レベルといったって、
しっかりした概念規定があるわけではありません。
あくまでこれも、漠然とした言い方です。
しかし、1kgあたり数千億ベクレルのコバルト60を含む物質が
これが低レベルと言われると、こちらは頭が混乱してきます。
これらをどう処分するのかというのが今回のお話です。
現状では地中に埋めちゃう、というアイデア以外は出ていないようです。
埋めるといっても3つのレベルに分けているようです。
レベル1、レベル2、レベル3
これもやっぱり放射能濃度で分けられているようなんですが
たとえばL1は余裕深度処分にしなさいとこういうことになってるようです。
余裕深度とはどういうことか。
人間生活に充分な余裕のある深度にしなさい。
地下鉄や、上下水道などに影響を与えない深さ。
日本の法令では50メートル以上の深さを余裕深度と言っているそうです。
ここに埋めてしまう。
多くの放射性廃棄物は減衰する、限りなくゼロに近づくのに数千年から10万年かかる。
もっとも時間の短いセシウム137も300年くらいかかる。
私たちは頭の中で時間軸を拡げて考えないといけないことになります。
10万年後、数万年後、せめて数千年後、はたしてここに放射性廃棄物を埋めたと、
千年後に伝わるかどうか。
その時には恐らく東京電力も、関西電力もありません。
日本政府があるかどうかもわかりません。
全く予想もつかない千年後、1万年後を想定して放射性廃棄物の話が
いま話合われているわけです。
映画で『猿の惑星』というのがありましたけど、
ほとんどこの『猿の惑星』の話。
こんな話が大真面目に原子力規制委員会の中で話あわれています。
ちょっと考えてみてください。
数百年先でいい、私たちがいったい、数百年先の人たちにどんな責任を負えるのか。
関電や東電はまず残っていません。
日本政府も別な形態になっているかもしれません。
そういう、我々が責任を負えない世代、その世代を当てにして、
現在、危険な放射性廃棄物を地中にうめちゃおうと。
これで大丈夫なんだということを科学的に証明する必要がある、と
原子力規制委員会の原子力規制庁の作った文書に
書かれてあります。はっきり書かれてあります。
1000年後、1万年後の人々に
放射線による健康損傷の影響を与えないことを
科学的に証明すること、と書いてあります。
これを証明するためには
1000年後の人間の行動様式がある程度想定されないといけない。
生活様式、社会活動の様式、経済活動の様式などがある程度想定されなければ
科学的に証明できません。
しかしこれは誰にもわからない。
従って、300年後、1000年後の人間の生活様式を
現在の人間の生活様式をベースに考えている。
これ、非常に非科学的な議論の進め方です。
希望的観測に満ちた、非科学的な議論です。
ウンザリするほど高い放射性物質、これらは原子炉の中で発生する
自然にはない人工核種です。
どうするのか、ようやく議論し、これといって妙案がでない、
埋めることを正当化するための議論にしかみえない。
それで原発を推進し再稼働しようという。
こういうことじゃないかと思います。
1000年後の話が私たちにできるでしょうか?
これらを大真面目に彼らが議論しているのです。
1000年後の地球に私たちが責任を持てるはずがありません。
1000年後は、1000年後の社会が責任を持つ。
私たちは今の社会に責任を持つ。
今の問題を次の世代、次の次の世代、
ましてや、1000年後の世代に先送りしてはいけないと思います。」
この間もチラシを取りに来た人がチラホラいました。
前にもお伝えしましたが、プラカードの注目度が高かったのが大きな特徴です。
なぜこんな地味な話題が注目度が高いのか、
じっくり分析してみる必要がありそうです。
次に網野です。
網野「廃炉に伴う放射性廃棄物の議論がようやく原子力委員会で始まりました。
廃炉に伴うコストは、いままでは発電に伴うコストではありませんでした。
それを、経済産業省のなかで、いや、廃炉は発電に伴うコストだ、という議論が
にわかに起りました。
廃炉に伴う費用を、各電力会社、純資産の中から負担できないからです。
それで、廃炉費用は発電コストだと、規則を変えてしまって
実は昨年2014年10月から、廃炉コストの一部は電気料金に含められるようになりました。
このコストの範囲はこれからどんどん、拡大していくでしょう。
相撲に負けそうだからといって、土俵をどんどん広げるようなものです。
みなさんが、関心がない、と言っても、無関係ではありません。
フトコロを痛めるのも、被害を被るのも私たちです。」
元安橋に帰ってデモ終了。
デモ終了したとたん、雨が降り始めました。
早々に事務所に引き上げました。
チラシは結局、15部持って行って、12部はけました。
以上ご報告いたします。
デモのお知らせの時にも、書きましたが
翌週から広島2人デモは、しばらくお休みをいただきます。
実はここ3回も、綱渡りで続けてきましたが、時間的余裕から見ると
ここ3~4週間はアポイントメントが入って埋まってしまっており、
とうとう身動きが取れなくなりました。
6月23日は、広島2人デモをはじめてちょうど丸3年目になります。
この時までには、なんとか再開にこぎつけたいのですが、
いまのところ、なんとも言えない情勢です。
なお、デモが出来なくても、「まぼろしのデモチラシ」は続けたいなと思っております。