2006年10月23日 月曜日 |
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フランス、アメリカ、日本は大幅に滑り落ち、モーリタニア、ハイチが大きく上昇 |
第5回目となる「国境なき記者団」となる世界報道の自由度インデックスでは、西ヨーロッパにおけるいくつかの民主主義国がインデックスの上位を占めた。一方ほとんどの抑圧国は依然として下位に低迷している。
「国境なき記者団」は次のように言う。
「残念ながら報道の自由の簒奪者の国はあいも変わらない。北朝鮮、エリトリア、トルクメニスタン、キューバ、ミャンマーといった国々では、ジャーナリストたちは、命の危険にさらされ、投獄の危険にさらされている。そうした危険を知らせ続けている。こうした状況は極めて深刻なものがあり、こうした国々の指導者は、批判を受け入れ、恒常的にジャーナリストたちを手ひどく弾圧するようなことはやめなければならない。緊急の問題だ。」
「毎年、比較的低開発国の中から、その順位を上げ、いくつかのヨーロッパの国やアメリカよりも上位につける国がある。これはとてもいいニュースだし、繰り返すが、極めて貧困な国であっても、報道の自由の擁護者になれるということを示している。
その一方で、アメリカ、フランス、日本における報道の自由は、このところ引き続き腐り続けている。(腐るに相当する原語は、erosion) これは極めて厳重警戒しなければならないところだ。」
報道の自由ワースト3は、調査168カ国中最下位の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、167位のトルクメニスタン、166位のエリトリア(エリトリア国)だ。これらの諸国では、締め付けがさらに厳しくなっている。
拷問で死に至らしめられたジャーナリスト、オグルサパル・ムラドーバのケースは、トルクメニスタンの指導者であり、「終身大統領」セパルムラッド・ニヤゾフは、自分をあえて批判しようとする人間に対しては、喜んで極端な暴力を行使することを見せつけた。(この記事が発表された2ヶ月後、2006年12月21日にニヤゾフは死亡。現在、副首相のグルバングル・ベルディムハメドフが大統領職を代行。)
また「国境なき記者団」はエリトリアにおいて、もう5年以上も秘密裏に投獄されているジャーナリストたちについても深く憂慮している。また北朝鮮における全能の権力者、キム・ジョンイルは、メディアを全面的に統制している。
北ヨーロッパ諸国は、再びリストの上位にずらっと顔を並べた。特に共に1位についた、フィンランド、アイルランド、アイスランド、オランダの諸国では、検閲、脅威、暴力を伴った脅迫、物理的な報復などといったことは一切見られなかった。
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アメリカ、日本における劣悪化及びフランスの凋落 |
昨年(2005年)以来で、アメリカは9位も順位を落とし、53位になった。2002年にこの調査が開始された時、アメリカは17位だった。以来続落である。メディアとブッシュ政権の関係は、悪化の一途をたどっている。ブッシュの「テロ戦争」に批判的なジャーナリストは、「国家安全」を口実に疑わしい人物と見なされているためだ。33州の決定とは違って、連邦裁判所の判決は、ニュース源の秘匿といったジャーナリズムの基本的権利を認めず、調査の結果いかなるテロリスト集団とも関係がないと分かったジャーナリストをすら脅かしている。
フリーランスのジャーナリストでもありまたブロガーでもあるジョシュ・ウォルフは、ビデオ記録の提出を拒んだために投獄されている。汎アラブ系放送局「アル・ジャジーラ」で働くスーダン人カメラマン、サミ・アル・ハジは裁判なしに2002年6月以来グアンタナモ基地で拘留され続けている。今年(2006年)の6月以来、AP通信の写真家、ビラル・フセインはイラクでアメリカ当局が拘留し続けている。
フランスは、これまで過去5年間で24位も順位を落とし、今回35位に滑り落ちた。メディアの事務所やジャーナリストの事務所の捜索が激増しているが、メディア組織や労働組合にとって憂慮されるべき事態となっている。2005年秋はジャーナリストにとって最悪の時期だった。コルシカの企業SNCMの民営化問題で組合と紛糾したとき、あるいは11月多くのフランスの都市郊外で発生した暴力的デモの時には、何人かのフランスのジャーナリストが、物理的に襲撃を受けたり、脅されたりした。
国粋主義の勃興や閉鎖的な記者クラブが日本における民主主義的な(言論の自由)にとって脅威となっている。日本は14位から51位へと下落した。日本経済新聞は爆弾をなげつけられたし、幾人かのジャーナリストは、右翼から物理的に襲撃を受けてもいる。
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「マホメット漫画問題」で、推進役から転落 |
19位のデンマークは、2005年秋に起こった「マホメット漫画事件」で、作者に深刻な脅威があったことから共同1位の座を滑り落ちた。市民的自由の守り手であり続けたデンマークとしては近年にないことである。ジャーナリストは自分たちの著作のために、警官の護衛が必要になった。
イエメンは4位下げ、149位となった。主として何人かのジャーナリストが逮捕されたためと、マホメット漫画を転載した新聞が閉鎖に追い込まれたためである。同じくマホメットの漫画のために、アルジェリア(126位)、ヨルダン(109位)、インドネシア(103位)、インド(105位)などでもジャーナリストが嫌がらせを受けている。
しかしながら、イエメンとサウジアラビア(161位)をのぞけば、アラビア半島の他の諸国では大幅な改善が見られた。このグループではクエート(73位)をトップに、アラブ首長国連邦(77位)、カタール(80位)などがある。
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上位陣へ新規参入国 |
2つの国が初めてトップ20位に入った。16位のボリビアは低開発諸国の中のトップである。この国のジャーナリストたちは、カナダ、オーストリア並みの言論の自由を謳歌している。ユーゴスラビア内戦の後、ボスニア・ヘルツェゴビナは年々順位を上げ、19位にランクされた。EUのメンバー諸国であり、すぐお隣のギリシャ(32位)、イタリア(40位)より上位である。
34位のガーナは32位もそのランクを上げた。アフリカ諸国の中では、これまでの上位指定の3ヶ国、ベニン(23位)、ナンビア(26位)、モーリシャス諸島(32位)に続いている。ガーナのメディアの人たちは経済的にはまだまだ苦しいものの、当局からの脅威はなくなった。
39位のパナマは、言論の自由の拡大、活発なメディアの活動によって、ここ1年間で順位を27もあげた。
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戦争こそ言論の自由の破壊者 |
レバノンは5年間で56位から107位にまで落ち込んだ。この国のメディアは、毒にも似た同国の政治的雰囲気に悩まされ続けている。2005年以来の爆撃から2006年に続くイスラエル軍の攻撃である。いくつかのレバノンのメディアは元来アラブ世界の中では、もっとも自由度が高く、経験豊かだった。今痛切に平和と安全への保障が求められている。
134位のパレスティナ当局はその自治区内に置いて安定を維持できないでいる。またその外側、135位のイスラエルの姿勢は、中東における表現の自由に対する深刻な脅威となっている。
状況はスリ・ランカでも酷似している。平和が維持されていた2002年には51位だったスリ・ランカは、いまや政府と反乱軍の間の戦闘のため141位にまで沈み込んでしまった。本格的な停戦が望まれる。1ダースにものぼるジャーナリストが、両陣営からそれぞれ偏見に満ちた告発を受け、物理的な襲撃を受けている。
ネパールは過去数年間、同国内紛糾に起因する戦闘のため現在159位という状況だが、その言論の自由は一変した。2006年4月に起こった民主主義革命と王制転覆が基本的自由の獲得に直結したのである。来年のインデックスでは大幅な向上を見せることだろう。
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体制の変化は歓迎 |
支配者の交代は、時に報道の自由にとって有益である。2004年ジャン・ベルトラン・アリスティード大統領の亡命以来、2年間でハイチは125位から87位に順位を上げた。幾人かのジャーナリスト殺害事件はまだ罰せられていないが、少なくともジャーナリストに対する暴力事件は沈静化した。
トーゴでは2005年2月のニシャンベ・エアデマ(元)大統領の死去以来、29も順位をあげて66位となった。
権力を継承した、エアデマ大統領の息子は国際的なバックアップと共に反対派と和平への努力を続けている。
2005年8月のモーリタニアにおける一衝きで、同国内での厳重な検閲は終わりを告げた。2004年の138位から今回は77位にあがった。今回インデックスにおける大幅な改善の好例である。
(注:モーリタニア・イスラム共和国。2005年8月軍部による無血クーデタが成功し、タヤ大統領が追放され、現在民主化への努力がなされている。2007年大統領選挙が予定されている。)
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