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ミサイル防衛 94億ドル(8460億円)(+8.0%)。これは一般的なミサイル防衛という意味ではなく、2002年ジョージ・ウォーカー・ブッシュが大統領の時にスタートした国家ミサイル防衛計画に基づく予算である。04年から09年までの6年間で合計530億ドル(4兆7700億円)の費用を計上している。ミサイル防衛は大きく3つの段階に分類できる。すなわち「敵の発射段階」(boost phase)、中間段階(mid-course phase)、最終段階 (terminal phase)の3段階である。発射段階でのミサイル防衛というのは敵のミサイル発射地点を直接攻撃して防衛しようというもの。09年アメリカがポーランドなど東ヨーロッパにミサイル防衛基地を配備しようとしてロシアと一悶着あった。アメリカは「対イラン防衛網だ」と説明したが、当然これは子供だましの屁理屈で、ロシアのミサイル基地を狙ったものだった。これは防衛なのか攻撃なのかよくわからないが、ともかく彼らの理屈に従って説明する。これが「敵の発射段階」での防衛という事になる。中間段階では空中(大気圏)で打ち落とそうというもの。09年北朝鮮が人工衛星を打ち上げたが、アメリカも日本もこれはミサイルだと言い張って、どさくさに紛れて日本海に派遣した自衛隊のイージス艦と一体でミサイル防衛の合同訓練を行った。最終段階というのは、いざアメリカ本土に敵のミサイルが突入し、大気圏を出たら出来るだけ早くこれを打ち落とそうというもの。
国家ミサイル防衛は次のような要素から成り立つ。地上迎撃ミサイル、イージス弾道ミサイル防衛システム、終末高高度防衛ミサイル、空中迎撃システム(Airborne
systems)、短距離対弾道ミサイル、多国間または国際協力システム(以上英語Wiki<http://en.wikipedia.org/wiki/National_missile_defense>による。)
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F−35統合打撃戦闘機(F-35 Joint Strike Fighter) 69億ドル(6210億円)(+6.2%)。日本語Wikiは「統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画に基づいて開発された、第5世代ジェット戦闘機に分類されるステルス機である。概念実証機のX-35は2000年に初飛行を行い、競作機となったX-32との比較の結果、X-35がJSFに選定される。量産機のF-35は2006年に初飛行し、現在でも開発は継続中である。2012年に実戦配備予定。JSFの名の通り、ほぼ同一の機体構造を用いながら、基本形の通常離着陸(CTOL)、艦載機(CV)、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)という3つの派生型を製造する野心的なプロジェクトである。アメリカ空軍・海軍・海兵隊、イギリス空軍・海軍、が採用を決定しており、あわせて数千機が製造される見込みである。」としている。
(<http://ja.wikipedia.org/wiki/F-35_(%E6%88%A6%E9%97%98
%E6%A9%9F)>)
開発・製造メーカーは世界最大の軍事企業、ロッキード・マーチン社。
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航空母艦更新計画(Carrier Replacement Program) 42億ドル(3780億円)(+23.5%) 海軍の航空母艦更新計画。航空母艦をフォード型などの高速原子力航空母艦に更新していく計画。75機以上の戦闘機を搭載できる。なおフォード型の開発製造メーカーはノースロップ・グラマン社。
(http://en.wikipedia.org/wiki/Gerald_R._Ford_class_aircraft_carrier)
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F−22ラプター(F-22 Raptor)41億ドル(3690億円)(-6.8%)ロッキード・マーチンとボーイングが共同開発した多用途型戦術ステルス戦闘機。ミサイルや爆弾を胴体内に格納できる。また超音速巡航能力をもつ高速機。09年現在で1機あたりコストが1億4000万ドル(126億円)とバカ高い。維持コストも高い。アメリカはこの最新鋭機を海外輸出禁止措置にしている。イスラエル空軍、日本の自衛隊もこの機種を導入したがっている。
(もっとも一番導入したがっているのはライセンス生産するつもりの三菱重工だろう。)(<http://en.wikipedia.org/wiki/F-22_Raptor>)
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5. |
バージニア級原子力潜水艦(Virginia class submarine) 39億ドル(3510億円)(+14.7%) シーウルフ級に替わる攻撃型原子力潜水艦。ゼネラル・ダイナミクスとノースロップ・グラマンの共同建造。すでに第6隻が就航しており、現在3隻建造中。全部で3隻建造予定。1隻のコストは28億ドル(2520億円)30隻建造予定。水中を30ノット以上で航行できる。12基のトマホーク型垂直発射式の潜水艦発射巡航ミサイルを装備している。トマホーク・ミサイルは様々な種類があるが、私の関心から云えば、メガトン級の熱核爆弾(水素爆弾)や最大144個の子爆弾をもつ多弾頭ミサイルを装着できる。たとえば子爆弾1個あたり4万TNT火薬相当の核爆弾だとすれば、1個の多弾頭核ミサイルを発射して、576万TNT相当の破壊力を持つ事になる。広島型原爆が1.5万トンだったとすると、1発のトマホーク多弾頭弾で最大384個の「広島市」が消滅することになる。
(<http://en.wikipedia.org/wiki/Virginia_class_submarine>)
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未来型戦闘システム(Future Combat System) 33億ドル(2970億円)(-2.9%) アメリカがこのところ力を入れてきたハイテク兵器、近代化兵器はイラン・アフガニスタン戦争では全く役に立たないことが、判明してきた。戦車1台街中を自由に走れない有様である。だから、対ゲリラ戦争向けに開発する兵器体系全体を未来型戦闘システムと呼んで開発している。2004年から投入されはじめた。代表的には、軽装でハイテク装備を施した未来型装備兵士、小型無人地上車両、小型無人爆撃機など。日本語Wikiは「無人偵察ヘリや持ち運び可能な無人偵察車両、GPSなどを駆使して収集した敵の情報を、兵士のヘルメットの前に装着された小型画面や戦闘車両にリアルタイムで送信し、双方向にて情報を共有することにより最小限の人員で敵に有効な打撃を与えることを目指している。また、車両の軽量化などにより有事即応態勢が高まり、紛争地域への投入・実戦展開に要する時間が従来の3割も短縮できるとされる。」
(<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%
A5%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%
BC%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%
90%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%
B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0>)
と述べている。しかしこれが本当なら、アフガニスタンに3万人も増派する必要はない。大半はハイテク兵器のガラクタである。開発メーカーだけが儲ける仕組みになっている。
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7. |
DDG1000駆逐艦(DDG 1000 Destroyer) 32億ドル(2880億円)(-8.6%) 最新鋭ズムウォルト級ステルス駆逐艦。ゼネラル・ダイナミクスが開発建造メーカー。建造費は33億ドル(2970億円)。現在1隻建造中で、これは2012年就航予定。その後の建造は未定。ミサイルのお化けみたいな駆逐艦だ。戦闘用ヘリコプターも離発着できる。
(<http://en.wikipedia.org/wiki/Zumwalt_class_destroyer>)
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8. |
C−17(C-17) 30億ドル(2700億円)グローブマスターの愛称のある戦略/戦術大型輸送機。開発メーカーはマクダネル・ダクラス社だったが、ボーイングが吸収合併したため現在はボーイング社が製造している。とにかく輸送量が大きい。イラク戦争の初期輸送で大活躍した。1機製造コストは約2億ドル(180億円)
(<http://en.wikipedia.org/wiki/C-17_Globemaster_III>)
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V−22オスプレイ(V-22 Osprey) 27億ドル(2430億円)(+3.8%)垂直離着陸型輸送機。ヘリコプター・メーカーのベル社とボーイング社の共同開発。国防省との契約は恐らくボーイング社だと思われる。開発は以前から行っていたが、開発中に少なくとも2回事故を起こし、開発が遅れていた。08年現在までの開発コストは、270億ドル(2兆4300億ドル)2007年にイラク戦争に投入された。海兵隊と空軍に配備されている。1機製造コストは6800万ドル。(62億円)。日本の自衛隊も導入する話もある。(<http://en.wikipedia.org/wiki/V-22_Osprey>)アメリカの新兵器開発で、当初予定通り、当初開発コスト通りで開発されたケースはほとんどない。ほとんどが開発が遅れ、当初見積もりコストを大きく上回るケースが圧倒的に多いが、このオスプレイは中でも悪質だった。
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宇宙配備赤外線システム(Space-Based Infrared System―SBIRS)23億ドル(2070億円)(+130%) アメリカ政府が進める宇宙空間における赤外線を使った監視システム。静止軌道衛星と高度楕円軌道衛星と、管制室における赤外線監視プログラムからなら複雑な監視システムで、戦闘機に対する情報やミサイル防衛で使う情報などを提供する。ただ思うほど開発が進まず、現在開発コストはすでに100億ドル(9000億円)にのぼっていると英語Wiki(<http://en.wikipedia.org/wiki/Space-Based_Infrared_System>)は述べている。
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F/A−18E/Fホーネット(F/A-18E/F Hornet) 20億ドル(1800億円)(-4.8%) 多機能型戦闘機。1999年に就役して以来、2009年現在400機も製造されている。アメリカでは主に海軍が使用し、航空母艦の艦載機になっている。もともとマクダネル・ダグラス社が開発したが、同社がボーイングに吸収されたため、ボーイング社の製造となった。1機あたりの製造コストは、5470万ドル(50億円)。日本自衛隊の次期主力戦闘機としてロッキード・マーチンがF−35を、ボーイングがホーネットを売り込みにかけているそうだ。ホーネットはすでにオーストラリアやフランスが導入している。ボーイングの営業担当のセールスマンに日経ビジネスがインタビューして提灯持ちをやっている。この記事のなかで、「今はスーパー・ホーネットと呼ばれており、最新鋭機だ。」とこのボーイングのセールスマンは云っているが(<http://business.nikkeibp.co.jp/
article/tech/20091228/211930/>)、現在のホーネットは、1995年に初飛行して以来、「スーパー・ホーネット」だ。F−35にしろ、ホーネットにしろ、そんなものを買うくらいなら、「保育園」を作るべきだろう。
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MH−60R/S(MH-60R/S) 19億ドル(1710億円)(+72.7%) アメリカ陸軍や空軍に配備されているシコースキー社製の多目的戦闘ヘリコプター、ブラック・ホークの海軍版で、「シーホーク」と呼ばれている艦載機。三菱重工業が製造して、海上自衛隊に納めているSH−60Jは、事実上シーホークのライセンス製造版である。初就航は1980年代の半ば頃。現在1機当たりの製造コストは2800万ドル(25億円)。三菱重工業は1機当たりいくらで自衛隊に売っているんだろうか?(<http://en.wikipedia.org/wiki/SH-60_Seahawk>)
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EA−18Gグローラー(EA-18G Growler)18億ドル(1620億円)(+12.5%)ホーネット(スーパー・ホーネット事実上すべてホーネットである)をベースにボーイングが製造している電子戦機。電子戦機というのは電子偵察機、電子戦支援機、電子妨害機などの総称。(もう私は、バカバカしくて本当はやめたい。)08年から海軍に配備が開始された。1台あたり7300万ドル(65億円)。
(なんで同じものなのに毎年単価が上がるんだろう?アメリカの納税者も温和しいなぁ。)(<http://en.wikipedia.org/wiki/EA-18G_Growler>)
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化学兵器の非軍事化事業(Chemical Demilitarization)16億ドル(1440億円)(+0.0%) 化学兵器禁止条約に基づく、化学兵器廃棄作業の年間予算。日本語Wiki(<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2
%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8
%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%A4%A7%E9%87
%8F%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E5%85%B5%E5%99%A8#.
E5.8C.96.E5.AD.A6.E5.85.B5.E5.99.A8.E3.81.AE.E5.BB.
83.E6.A3.84>)は次のように書いている。「2009年7月、アメリカ陸軍化学物質局によると、1997年に宣言された通り、アメリカ合衆国は31,100トンの神経ガスおよびマスタードガスの備蓄のうち63パーセントの廃棄を終えたという。2006年までに廃棄された化学兵器のうち、500トンだけがマスタードガスであり、その大部分はVXやサリンといった他の薬品であるという。残りの86パーセントは2006年4月に廃棄された。アメリカの13,996トンの禁止兵器は、フェイズ3の割り当てと期限に従い、2007年6月までに廃棄された。最初のフェイズ3の公約では全ての国は2004年4月までに全貯蔵量の45パーセントを廃棄しなければならないことになっていた。しかし、その期限に間に合わないことが予想されたので、ブッシュ大統領は2003年9月にフェイズ3の期限を2007年12月まで延長するように、また全ての備蓄の廃棄期限であるフェイズ4の期限を2012年4月に延期するように要求した。この延期によって、ロシアを含むいくつかの国が条約から脱退した。2012年は化学兵器禁止条約によって許可された最終期限であるにもかかわらず、アメリカは国際情勢の変化からこの期限に間に合わないかもしれないと主張している。」
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ストライカー装甲車(Stryker) 13億ドル(1170億円)(+18.2%)ゼネラル・ダイナミクスが製造している陸軍装甲人員輸送車。2002年アフガニスタン戦争開始の後、実戦配備された。機関砲や機関銃も装備している。要員2名で9名の兵員を輸送できる。1台当たりのコストは142万ドル(1億3000万円)(<http://en.wikipedia.org/wiki/Stryker>)
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16. |
沿海域戦闘艦(Littoral combat ship) 13億ドル(1170億円)(+116.7%)小型高速の沿岸地域を対象とした低コストの戦闘艦。ここでいう沿岸地域とは敵勢力が優勢な沿岸域を想定している。ストライカー装甲車同様、ゲリラ戦になると、高価なハイテク兵器や高価な戦闘機はほぼ役にたたない。こうした低コストの兵器の投入に力をいえる事になった。
(<http://en.wikipedia.org/wiki/Littoral_combat_ship>)
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CH―47大型輸送ヘリコプター・チヌーク(CH-47 Chinook)12億ドル(1080億円)(+9.1%) タンデム・ローター式の大型輸送ヘリ。1960年代はじめに投入して以来現在まで現役である。ボーイングが製造している。アメリカは陸海空すべてに導入されているほか、日本の陸上自衛隊、オランダ空軍なども採用している。現在までに1200機近くが生産されている。1機当たりのコストは1999年時点で1030万ドル(9億3000万円)
(<http://en.wikipedia.org/wiki/CH-47_Chinook>)
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P−8Aポセイドン(P-8A Poseidon) 12億ドル(1080億円)(+33.3%)海軍の次世代対潜水艦哨戒機。ボーイングが受注した。2013年から運用開始の予定。日本語Wikiが優れた記述をしている。
(<http://ja.wikipedia.org/wiki/P-8_(%E8%88%AA%E7%A9%
BA%E6%A9%9F)>)
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19. |
発展型使い捨てロケット(Evolved Expendable Launch Vehicle)12億ドル(1080億円)(+9.1%)(社)日本航空宇宙工業会がアメリカ連邦政府09年度予算を分析した資料があり(<http://www.sjac.or.jp/common/
pdf/kaihou/200803/20080306.pdf>)その資料の中で「発展型使い捨てロケット」(同資料27P)と訳されているのでそれに従った。空軍が開発中で、国防省が打ち上げる軍事衛星のためのロケット。現在デルタW型とアトラスX型、それぞれ2基のプロジェクトが進んでいる。ボーイングとロッキード・マーチンの間で競争が行われ結局、両社が対等出資合弁会社、連合打ち上げロケット協力(United
Launch Alliance)という会社を作って受注した。
(<http://en.wikipedia.org/wiki/Evolved_Expendable_Launch_Vehicle>)
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20. |
UH−60ブラック・ホーク(UH-60 Black Hawk)11億ドル(990億円)(-26.7%)12.の海軍シーホーク・ヘリコプターの陸軍版。メーカーも同じくシコースキー。1979年に導入され、現在までに2600機が生産されている。08年で1台製造コストは1400万ドル(12億6000万円)。
(<http://en.wikipedia.org/wiki/UH-60_Black_Hawk>)日本の自衛隊も採用しているという。
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21. |
E−2C/D ホークアイ(E-2C/D Hawkeye)11億ドル(990億円)(22.2%)早期警戒管制機。もともとグラマン社の開発。現在はノースロップ・グラマン社の製造。早期警戒管制機は、自ら飛行することで一定空域内の敵性・友軍の航空機といった空中目標をレーダーにより探知・分析し友軍への航空管制や指揮を行う機種である。空中警戒管制システムや空中警戒管制機とも呼ばれる。1960年代半ばに運用が開始された寿命の長い機種。アメリカ空軍が採用している。自衛隊など多くの国でも採用されている。E−2D型は日本の自衛隊が海外では最大のユーザーと英語Wiki(<http://en.wikipedia.org/
wiki/E-2_Hawkeye>)は書いている。1台コストは8000万ドル(72億円)。
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22. |
トライデントU型弾道ミサイル(Trident II Ballistic Missile)11億ドル(990億円)(+0.0%)潜水艦発射弾道ミサイル。ロッキード・マーチン社の製造でアメリカ海軍とイギリス海軍が採用している。1990年に導入された。1台コスト3200万ドル(29億円)射程距離1万1300km。12基の多弾頭核弾頭を搭載できる。(核弾頭は含まれない。核弾頭はエネルギー省が供給する。)
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23. |
移動中ユーザー目標システムーMUOS(Mobile User Objective System)10億ドル(900億円)(+25%) アメリカの軍事通信衛星システム(SATCOM)に対する一連の静止軌道衛星群のこと。国防省が開発中である。MUOSは超周波帯域(UHF 300Mヘルツから3Gヘルツ)を使用する。このため、移動中のユーザーと更に安定した通信ができる。地上局を含めて海軍が担当している。2010年から打ち上げを開始する。主契約はロッキード・マーチン社。
(<http://en.wikipedia.org/wiki/Mobile_User_Objective_System>)
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