(原文: http://www.pbs.org/wgbh/amex/truman/psources/ps_diary.html http://www.trumanlibrary.org/whistlestop/study_collections/bomb/small/mb02.htm) トルーマン日記 1945年7月16日 午後3時30分 バーンズ国務長官、レーヒー海軍元帥(5つ星)それから私、はオープンカーに乗ってベルリンに出発した。後続の車には2人の大統領補佐官、その他ずらりと大統領警護官や護衛兵の連中、先導する普通乗用車には2つ星将軍と人の目を欺くつもりだろうが2名の私服警官が乗り込んでいた。 通常の大統領職を遂行しようと思えばできたのだが。そうしなかった。
第2機甲師団を閲兵し、第17機甲大隊・E中隊の旗手を表彰した。コリア将軍は自分のスタッフをよく知っているようだ。将軍はわれわれを軍用偵察車に乗せてくれた。サイドに座席がついており屋根がない。座席があってホースのない消防車から屋根を取ったぱらったみたいな車だ。まるで不良少年たちが乗っているワゴンみたいだ。―以下略―
それからベルリンに到着した。完全に廃墟である。ヒトラーの愚かしさ。 無理をしすぎて全部ダメにした。領土を拡げようとしすぎたのだ。ヒトラーにはモラルのかけらもないし、支えてくれる人もいなかった。これ以上悲しい光景を見たことがない。またこれ以上、果てしのない天罰の証左も見たことがない。 状況の中で、一番悲しいのはヒトラー主義に欺かれた人々の存在だ。確かにロシア人たちは有能な人々をかっさらって、その意志に反して無理矢理働かせた。そうだと思う。残った建物の中から不当に略奪して、ロシアに略奪品を送った。しかしヒトラーだって同じことをしたではないか。 これは全く黄金律の逆だ。全く気が滅入るような光景だ。ほんのちび助から10代の子供たち、老人、老女、若い女性などが、荷物を担ぎ、カートを押したりあるいは引いたりして行き交っているのを見た。戦勝者から追い立てを食い、もてるだけのものを持って、これといってどこへ行く当てもなく運んでいる。 私はカルタゴ、バールベク、イエルサレム、ローマ、アトランティス、ペキン、バビロン、ニネベ、スキピオ、ラムセス2世、タイタス、ハーマン、シャーマン、ジンギスカン、アレキサンダー、ダリウス大王などのことを思った。しかしヒトラーはスターリングラード・・・それにベルリンを壊滅しただけだ。私はある種の平和を希求するものである。しかし機械化がここ数世紀、人間の道徳観の先を行ってしまっている。道徳観が機械化に追いついた時には、平和の存在理由がなくなっているのではないかと恐れている。もちろん私はそんな事態を望みはしない。しかしわれわれは惑星上の、ほんのシロアリでしかない。惑星をあまり深く掘りすぎると、やがて精算書を突きつけられるかも知れない。そうでないとは誰にもいえないのだ。
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