(原文:
http://www.pbs.org/wgbh/amex/truman/psources/ps_diary.html
http://www.trumanlibrary.org/whistlestop/study_collections/bomb/small/mb02.htm

トルーマン日記 1945年7月16日


午後3時30分 バーンズ国務長官、レーヒー海軍元帥(5つ星)それから私、はオープンカーに乗ってベルリンに出発した。後続の車には2人の大統領補佐官、その他ずらりと大統領警護官や護衛兵の連中、先導する普通乗用車には2つ星将軍と人の目を欺くつもりだろうが2名の私服警官が乗り込んでいた。
通常の大統領職を遂行しようと思えばできたのだが。そうしなかった。

トルーマンはすでに会談のためポツダム入りしていた。
ポツダムはベルリン郊外にある。
レーヒーのことを5-star admiral と称している。前年の1944年にはadmiralから the Fleet Admiral に昇進していたらしい。研究者英和大辞典に従って海軍元帥としておいたが、戦時にしか設置されない。平時には4つ星(海軍大将)まで。詳細は(http://www.history.navy.mil/faqs/faq36-1.htm)を参照のこと。
2つ星将軍は 2-star general と書いてあった。General だから陸軍少将のことだ。


 第2機甲師団を閲兵し、第17機甲大隊・E中隊の旗手を表彰した。コリア将軍は自分のスタッフをよく知っているようだ。将軍はわれわれを軍用偵察車に乗せてくれた。サイドに座席がついており屋根がない。座席があってホースのない消防車から屋根を取ったぱらったみたいな車だ。まるで不良少年たちが乗っているワゴンみたいだ。―以下略―

コリア将軍についてはよく分からない。多分第2機甲師団の師団長だろう。ノ
ルマンディー上陸作戦の時に名前が見えるリチャード・コリア将軍のことではないか。

それからベルリンに到着した。完全に廃墟である。ヒトラーの愚かしさ。
無理をしすぎて全部ダメにした。領土を拡げようとしすぎたのだ。ヒトラーにはモラルのかけらもないし、支えてくれる人もいなかった。これ以上悲しい光景を見たことがない。またこれ以上、果てしのない天罰の証左も見たことがない。

状況の中で、一番悲しいのはヒトラー主義に欺かれた人々の存在だ。確かにロシア人たちは有能な人々をかっさらって、その意志に反して無理矢理働かせた。そうだと思う。残った建物の中から不当に略奪して、ロシアに略奪品を送った。しかしヒトラーだって同じことをしたではないか。

これは全く黄金律の逆だ。全く気が滅入るような光景だ。ほんのちび助から10代の子供たち、老人、老女、若い女性などが、荷物を担ぎ、カートを押したりあるいは引いたりして行き交っているのを見た。戦勝者から追い立てを食い、もてるだけのものを持って、これといってどこへ行く当てもなく運んでいる。

私はカルタゴ、バールベク、イエルサレム、ローマ、アトランティス、ペキン、バビロン、ニネベ、スキピオ、ラムセス2世、タイタス、ハーマン、シャーマン、ジンギスカン、アレキサンダー、ダリウス大王などのことを思った。しかしヒトラーはスターリングラード・・・それにベルリンを壊滅しただけだ。私はある種の平和を希求するものである。しかし機械化がここ数世紀、人間の道徳観の先を行ってしまっている。道徳観が機械化に追いついた時には、平和の存在理由がなくなっているのではないかと恐れている。もちろん私はそんな事態を望みはしない。しかしわれわれは惑星上の、ほんのシロアリでしかない。惑星をあまり深く掘りすぎると、やがて精算書を突きつけられるかも知れない。そうでないとは誰にもいえないのだ。
 
黄金律は the Golden Ruleで明らかに聖書の、キリストの「山上の垂訓」を指している。「すべて人にせられんと思うことは人にもまたそのごとくせよ」(研究社英和大辞典からそのまま訳を借用)

この人名・地名の連想ゲームは全くわからない。
カルタゴは古代地中海の都市国家。ローマ軍と戦って滅亡した。
バールベクはレバノンに残る遺跡から知られる古代都市。へリオポリスの名前の方が有名かも知れない。
イエルサレム、ローマは説明不要、アトランティスはプラトンの著作にでてくる伝説上の都市。
ペキンも説明不要。
バビロンは古代バビロニアの首都。今のバクダッドの近く。
ニネベは古代アッシリアの首都。今のイラク北部。
スキピオはローマ帝国の将軍。大スキピオか小スキピオかは本人に聞いてみないとわからない。
ラムセス2世は古代エジプトのファラオ。アブシンデル神殿の造営者として有名。
それより聖書の「出エジプト記」に出てくるファラオに擬せられている。映画「ベン・ハー」でいえばユル・ブリンナー。
タイタスは思い当たる人物が2人いる。一人はローマ建国神話に出てくるタイタスでロムルスと共同統治をした。もう一人はローマ皇帝の一人。
ハーマン(Herman)は全く見当もつかない。
シャーマン(Sherman)も見当がつかない。アメリカ独立宣言の共同署名者のシャーマンか南北戦争の時のシャーマン将軍か。
ジンギスカンは云うに及ばず。
アレキサンダーはアレキサンダー大王だろう。
ダリウス大王は古代アケメネス朝ペルシャのダレイオス1世だろう。マラトンでギリシャ連合軍に敗れた。

これではまるで歴史ものしりクイズだ。ロバート・ファレルもばかばかしいと見えて、解説を加えてくれていない。