(2010.2.1)


アメリカ軍の存在に対して東京で行われた抗議(AP電)
沖縄のアメリカ軍基地に対する抗議に数千、閣僚が軍事部隊排除で闘うとあいさつ 

 2010年1月30日付の東京発AP電である。
<http://www.miamiherald.com/news/world/AP/story/1454355.html>
ワシントン・ポストも30日付の電子版で、このAP電を全文掲載した。
<http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/
article/2010/01/30/AR2010013000739.html>

APはこの時記事と共に写真も配布したらしく、ワシントン・ポスト紙は説明文付きで掲載している。

(2010.2.14) 尚、上記リンクは2月14日に調べると削除されていた。


 【上記ワシントン・ポスト紙電子版からコピー貼り付け。この写真の著作権はAPとカメラマンのコージ・ササハラが共同で所有している。説明文は本文記事の一部引用。】

 このAP電は他にも、「ボストン・グローブ紙」(電子版)
<http://www.boston.com/news/world/asia/articles/2010/01/
30/protest_held_in_tokyo_against_us_military_presence/>
)や
「フォーブス誌」(電子版)
<http://www.forbes.com/feeds/ap/2010/01/30/general-as-japan-
us-military_7316770.html?boxes=Homepagebusinessnews>
)、
「サン・ディエゴ・ユニオン・トリビューン紙」
<http://www.signonsandiego.com/news/2010/jan/30/protest-held-in
-tokyo-against-us-military-presence/>
)、
私もニュースの配信を受けている有名な反戦サイト「反戦ドット・コム」
<http://wire.antiwar.com/2010/01/30/protest-held-in-tokyo-against
-us-military-presence-2/>
)もほぼ全文を引用する形で掲載している。その他いちいち紹介できないが、数多くのニュース・サイトや個人ブログ、アメリカの平和団体のサイトで引用掲載された。

 最近の「日本もの」では、もっとも反響の大きかったニュースの一つではないか。

 反響が大きかった理由は、第一に集会・デモ行進に参加した人数が大きかったこと。(日本の新聞では6000人と伝えられた。)第二にやはり現職の閣僚、福島瑞穂が壇上に上がり、「普天間基地を日本から叩き出す。」と宣言したことの衝撃だろう。今のところアメリカ政権内部からの反応は見られない。アメリカ国務省の「デイリー・ブリーフィング」も配信を受けているが、1月30日までのブリーフィングでは登場してきていない。もっとも2月からのブリーフィングでは、必ずこの事件について質問をだす記者がいると思うので、そこから国務省の反応も窺えるだろう。

 アメリカの支配層がもっとも恐れているのは、鳩山由紀夫でも小沢一郎でも福島瑞穂でも、民主党でも社民党でもない。日本の市民だ。日本の市民の怒りだ。日本の市民の意志が運命を決める。沖縄にではなく、東京に6000人も集まったことの衝撃は大きい。

 なお、記事に関する注釈で長くなりそうなものは
(註1)(註2)・・・の形で本文の外に出した。
以下全文。

ジェイ・アラバスター(Jay Alabaster)APニュース 
2010年1月30日 10時25分東部標準時間


 日本中から集まった数千もの抗議する人々が、沖縄におけるアメリカ軍の存在に対して抗議するため、土曜日(1月30日日本時間)東京の真ん中を行進した。一方、一人の現職閣僚も、ワシントンが考慮中の海兵隊基地(ここは単数になっているので、普天間基地だけを指すと思う。)を国外へ叩き出す(crucial out of the country)と語った。

 現在4万7000人のアメリカ軍部隊が日本に駐留している。その半分以上が南の島、沖縄にいる。(沖縄の)住民は何年もの間、基地周辺の騒音、公害、犯罪に対して苦情を訴えてきた。

 日本とアメリカは2006年に協定(a pact)(註1)を結び、日本におけるアメリカ軍の再編成(the realignment of American troops)が必要だとし、沖縄の海兵隊基地の一つをもっと人口の少ない地域に移転することが必要だとした。しかし東京の新政府は、アメリカ軍に対して高まる鞏固な一般大衆の反対とワシントンとの間の決定的に重要な軍事同盟のはざまの中で、この協定を再検討するとした。

 土曜日、労働運動家、平和運動家、環境保護運動家、そして学生などが東京の真ん中を行進し、スローガンを叫び、アメリカ軍の存在を終わらせろと要求した。彼らは公園に集まって、「チェンジ!日米関係」とする旗の下、集会を開き、市民運動家や政治家のリーダーたちが演説を行った。

 鳩山由紀夫首相は、どう進めるかについて意見の分かれる自身の内閣メンバーの間に立って、協定に関する彼の決定を繰り返し延期してきた。先週(1月18日から始まる週)、彼はこの難問(conundrum)を5月までに解決すると固く約束した。それは国民選挙の直前である。閣僚の一人、福島瑞穂はこの集会で「内閣は5月にその結論を出すと云っております。だからこそこれからの数ヶ月、私たちは勝利を達成するため、すべてのエネルギーを注がねばなりません。」と述べ、集まった群衆の承認を求めて声を張り上げた。

 福島は内閣の中でも重要でないポスト(a minor post)を占め、小政党の党首であるが、基地(普天間基地のこと)を完全に日本の外に移転させたいと考えている。鳩山政府は議会における多数派連立を維持するため、そのような政治的同盟軍をなだめなければならない。そして、大衆は沖縄の外ですら、アメリカ軍問題に関してますます喧しくなっている。

 私は日本に(アメリカの)軍隊がいることには反対です。彼らをすべて追い出すことが出来るかどうか、私にはわかりません。しかし最低限、いくらかでも立ち去るべきです。」

とこの集会に参加したテラダ・セイイチロウ(31才)は語る。テラダは政府の徴税係だ。(恐らく税務署員だと思う。)テラダによれば静岡県の中央部にある自宅からやってきたのだという。そこは富士山の麓で海兵隊の基地(註2)があるという。

 ワシントンとの協定では、沖縄の人口密集地帯の海兵隊基地を名護と呼ばれる更に小さな市にうつすことを要求している。しかし先週、名護の住民は、アメリカ軍の存在を支持する現職市長を追い払って(註3)、移転に反対する新しい市長を選んだ。

 この議論の別な面では、アメリカ政府高官のぶれのない流れがあって、東京に対して協定に従って、日本におけるアメリカ軍のレベルを維持するように訴えている。駐日アメリカ大使のジョン・ルース(註4)は金曜日(1月29日)、日本のアメリカ軍を、緊急時あるいは安全保障上の脅威に立ち向かう「前線軍隊」(front-line forces)と呼んだ。(註5)


註1 2006年の協定:明らかに、2006年(平成18年)5月1日に発表された日米安全保障協議委員会(「2+2」)の「共同発表」とそれに付随する「再編実施のための日米のロードマップ」の2本を指しているものと思う。それぞれ「発表」「ロードマップ」の体裁をとっているが、明らかにAPの記者がいうように日米政府間の協定である。国会で議決を取っていないので、当時の小泉政府とブッシュ政府の協定、一種の行政協定であり、日本国とアメリカ合衆国の条約ではない。2+2というのは、日本側が当時小泉内閣外務相だった麻生太郎、防衛庁長官だった額賀福志郎の2人と当時ブッシュ政権の国務長官だったコンドリーサ・ライス、国防長官だったロナルド・ラムズフェルドを指す。この発表の5ヶ月後小泉内閣から安倍内閣に交代する。

この2本の協定については外務省のサイト
<http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_kh.html>
<http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html>)を見て欲しいが、骨子は、
同盟関係にとって死活的に重要な在日米軍のプレゼンス」が確認され、在日アメリカ軍の再編成とともに自衛隊の再編成が約束されていることである。さらにこの再編の必要性については  「イラク及びアフガニスタンを再建し、これらの国々において民主主義を強化するとともに、より広い中東における改革の努力を支援するための、日米の努力の重要性に留意した。閣僚は、イランに対しすべての濃縮関連活動を停止し、IAEAの査察に全面的に協力するよう説得する努力において、緊密に協力することを確約するとともに、国連安全保障理事会の行動が協調してとられる必要性につき合意した。」

    と述べているように、従来の在日米軍の役割に加えて、「イラク戦争」「アフガニスタン戦争」に対応した動きであり、イラン情勢をも睨んだ内容なのだろうと推測する。ロードマップで特徴的なことは、この再編の目的に合致しているのだろうが、第三海兵隊本部を沖縄からグアムに移転させること、全体として兵力が北日本から南日本に移動すること、再編にかかる経費は日本側が負担することである。日本側の負担は60億9000万ドル(約5500億円。1ドル=90円)にのぼろう。
(日米間に秘密協定がないものとしての話だが。)


註2 富士山の麓で海兵隊の基地:静岡県御殿場市にある「フジ駐屯地」(Camp Fuji)のことだと思う。「フジ駐屯地」は訓練施設で陸上自衛隊との共同施設だそうだ。
<http://en.wikipedia.org/wiki/Camp_Fuji>

沖縄の第三海兵隊本部の下にスメドレー・バトラー複合母駐屯地(沖縄中に傘下駐屯地が散らばっている。)があるが、このバトラー母駐屯地の傘下にある。
<http://en.wikipedia.org/wiki/Marine_Corps_Base_Camp_Butler>
不思議なことに日本語wikipedia 「在日米軍」
<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%A8%E6%97%A5%E7%B1
%B3%E8%BB%8D>
で見ると、静岡県には、「共同施設利用」として「富士営舎地区」がでてくるだけだ。

しかし、「アメリカ海兵隊施設のリスト」(<http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_
United_States_Marine_Corps_installations>
)を見ると「海外」の項目に、「日本」があり、その中に「フジ駐屯地」が記載されている。だからそれに従った。なお海兵隊施設のリストを見ると、「Station」「Base」「Base Camp」「Camp」などの使い分けがしてあり、厳密に区別してある。混乱してはいけないので、「Base」や「Station」を「基地」、「Base Camp」を「母駐屯地」、「Camp」を「駐屯地」と訳し分けることにした。

もともとアメリカ海兵隊は、海外での武力行使を前提する緊急展開部隊として軍事展開するのがその任務で、作戦が終了すればアメリカ本国に帰還するわけだから、アメリカ国外の戦闘前線に駐屯地があっても不思議ではないが、恒常的な「基地」があるのもおかしい感じもする。ともかく混乱をさけて以上のように訳し分ける。


註3 現職市長を追い払って:この記者の言葉遣いが時々気になる。ここの「追い払って」の元の英語は「oust」である。意味は「追い払う」であるが、「不正な手段で追い払う」という意味で使うことが圧倒的に多い。だからこの記事を読んだ英語を使う市民は、「アメリカ軍の駐留を支持する正統な市長を、不正にも追い払った。」というニュアンスで理解すると思う。この前の文章で「アメリカ軍問題に関してますます喧しくなっている。」というところが出てくるが、「喧しい」に該当する元の英語は、「vociferous」は「うるさくがなりたてる」「ぎゃーぎゃーわめく」といった意味であり、あまり好意的には使われない。記者が語彙力のあるところを見せたかったのもしれないが。

註4 ジョン・ルース:John Roos。現駐日アメリカ大使である。ルースが駐日大使に指名された理由が未だに私にはわからない。ルースが駐日大使に任命されたのは2009年5月も終わりである。前駐日大使のトマス・シーファーの任期が切れたのは2009年1月20日であるから、次の大使は誰かと注目が集まった。当時、朝日新聞が「ジョセフ・ナイ次期大使に内定」とかなり断定的な口調で与太記事をとばしたものだ。ナイは外交問題評議会の理事会メンバーを務めるほどの大物だ。「まさか」とは思ったが、やはりこなかった。しかしルースが大使になることが決まって、「ルースって、誰?」と多くの人が思ったろう。ルースは弁護士である。しかも国際政治問題や外交問題を担当してきた弁護士ではなく、ビジネス弁護士である。政治も外交もまったくの素人だ。オバマとの接点は唯一、オバマが大統領選挙で戦った時に、集金係として大活躍し、50万ドルあつめたとされるが、50万ドルはさほど大きな金ではない。なぜこの人物が、という疑問は今も消えない。
<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%
B3%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B9

<http://en.wikipedia.org/wiki/John_Roos>


註5  われわれはこのルースの言葉をよく記憶しておかねばならない。ルースやオバマ政権や国防省や国務省にとって、日本は「前線」なのだ。