【参照資料】フクシマ放射能危機と汚染食品 | 2012.6.27 |
<参考資料>食品安全委員会 食品安全評価ワーキンググループ 第1回会合 議事録解説 |
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核利益共同体に魂を売り渡した 日本の食品安全委員会 その③ それは宗教的信念ではあっても科学ではない |
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「チェルノブイリのウソ」をいまだに繰り返す松原 | |||||||||||||||
食品安全委員会の「食品安全評価ワーキンググループ」の第1回会合は、なんと元原子力安全委員会委員長代理、松原純子の講義からはじまった。そして松原の講義の中に不可分に取り込まれているICRP学説を批判し、その学説体系が国際核利益共同体にとってきわめて都合のいい仮説にみちみちた「非科学」の体系であることを見てきた。 さて松原の講義を続けよう。
松原の言うところは、事故直後4,000Bq/kgだった土壌の放射能汚染濃度が約1ヶ月後にはその4-5倍になっているということだ。これは説明にさほど困難ではない。空気中に浮遊していた放射性物質が時間の経過と共に降下し地表を汚染しはじめているということになる。またその後大量の放出は見られないので、空間線量は逓減し始めている。 (事故後15ヶ月も経過した今日、文部科学省は未だに空間線量率を公表し続けている。大手新聞もそうだ。全く意味がない。「ほら、次第に安全になっているでしょ」と言わんがため、としか言いようがない。地表=土壌、海底、水底の放射能濃度を計測しなければ、私たちの危険度はわからない。なお細かいことだが松原は、土壌の汚染を「蓄積線量」と言っている。これは松原の言い間違いであろう。土壌の汚染は、ベクレルで表示する限り、「放射能濃度」である。線量は線源から受ける影響を表す単位名称である。) また松原はこれからは土壌汚染(環境汚染)から食物連鎖を通じて食品に放射能が入り込み食品汚染がはじまる、という趣旨のことを述べているがこれもまた真実である。 ところが、次にはこれと矛盾したことを言う。
洗って落ちるような放射能を食物連鎖による放射能食品汚染とはいわない。放射性物質が生態系の様々な結節点(土壌の栄養を吸い上げる植物、その植物を摂取する昆虫や動物、それらを捕食する動物など)で濃縮された放射性物質が、それぞれの食物を通じて食物連鎖の頂点に存在する人間の体の中に入り込み、それが内部被曝の主要因子となるので、食物連鎖による放射能食品汚染という。これは、「碩学」松原純子の言い損ないというものだろう。 その後松原は、チェルノブイリ事故による健康損傷について、IAEAやWHOの報告に基づく極端な過少評価を2011年になっても繰り返している。
だから、福島原発事故でもそれを上回らないだろうといいたいのだが、この現状認識は今となってみれば、極端な過少評価、あからさまに言ってしまえば「ウソ」である。今でもIAEAやWHOなど国際機関に協力的な、ウクライナ政府の2011年緊急事態省報告でも読んでみるがいい。 (<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/ukraine_go_report.html>) |
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「がん」発生の機構に論点をすり替え | |||||||||||||||
最後に松原は次のような話をして、長い講演を終了する。
松原に限らない。ICRP学説を「正しい」、「科学的」と説く学者・研究者には共通した特徴がある。低線量放射線被曝による健康損傷の話を「がん」発生の原因因子の話にすり替えて、その原因を論じるという詭弁論法だ。論理学では「論点のすり替え」という。 ICRP学徒は、一応「100mSv以下の被曝領域でどのような健康損傷がおこるのかはわからない。」と口先ではいう。建前の上では「健康損傷はない」とはいわない。しかし、この松原の講演に見られるように、健康損傷のエンド・ポイントを「がん」だと限定し、今度は「がん」発症の要因分析に話を逸らしていく。 電離放射線のエンド・ポイントが「がん」だけであるかないかという話と、がんがいかなる要因で発生するかという話は、全く別な話題だ。私たちは「がん」発症の要因を議論しているのではない。低線量放射線による健康損傷について議論している。 松原純子の講義は結構長い。この日の会合は議事録によれば約2時間20分だが、松原の話は1時間以上を占めていた。このことは厚労省の役人を含む日本の核利益共同体を構成する人たちが、食品安全委員会の結論をどこにもっていきたいかを表している。 |
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「セシウム」はどこに行った? | |||||||||||||||
松原の講義の後、座長の山添は「なにか質問はないか?」と促す。すると専門委員ではなく、出席していた食品安全委員会委員の熊谷進(微生物学。国立予防衛生研究所出身。東京大学名誉教授)が不可解な質問をする。内容はこうだ。
この質問の答えは非常に簡単だ。しかし、熊谷がこの答えを知らないはずがない。本当に知らないのか、とぼけて質問したのか、それとも他に狙いがあったのか、それが私には不可解だ。ともかく答えの鍵は「セシウム」という括りにある。ICRPやIAEA、WHOなど国際核利益共同体の学者・研究機関・規制当局(日本でもそうだが)が、セシウムという括りをする時、それはほとんどセシウム137とセシウム134の合計を指している。セシウム137の物理的半減期は約30.1年。それに対してセシウム134の半減期は約2.06年。これを合算して「セシウム」という括りにすること自体に無理がある。というのは、こと土壌汚染や食品汚染という観点から見ると、この2つの核種は全く別な動き(挙動)をし、環境や人体に対する影響の大きさも全く異なるからだ。 前述の「フードウォッチ・レポート」は次のように述べている。
原子炉内の比率とは違って降下物の場合、チェルノブイリ事故の場合セシウム137と134の比率が2:1だったが、フクシマ事故の場合は恐らく1:1だろう、といっている。 |
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「セシウム」という括りの誤魔化し | |||||||||||||||
ところがセシウム137とセシウム134の割合を明示せずに「セシウム」とくくってしまうと何が起こるか?当然半減期の短いセシウム134が急速に減少し、時間が経つにつれてセシウム137の減少は逓減していく。それに対して半減期が非常に長いセシウム137は1年や2年ではなかなか減らない。それに対して134は2年で半減する。しかし10年も経つと134の低減効果は全体としてみれば小さくなり、見かけ上10年後はあまり減らない、ということになる。 つまりは、セシウム137と134を合算して同じ核種とくくってしまうと、正確な放射線防護体制を構築するための現状認識はできないということでもある。フクシマ事故の場合、137と134の比率が1:1だとすると、見かけ上逓減速度はもっと速くなるであろう。恐らく5年くらいで減少が止まるのではないか。そのかわり「セシウムは急速に減少しています」と最初の5年くらいは言うことができる。しかし本当の問題は「セシウム137」なのだ。これは5年や10年ではなかなか減らず、執拗に食物連鎖の中に入り込み、内部被曝の原因因子として私たちを苦しめることになるだろう。 次の図は、2011年4月にウクライナ緊急事態省が公表した「チェルノブイリ事故後25年:未来へ向けての安全」と題する報告書に添付されているウクライナ全土の「セシウム137汚染マップ」である。最初のマップは1986年5月時点、次のマップは2011年5月時点(予測ではあるがほぼ現状と考えていい)、3枚目のマップ2036年、事故から50年後の5月時点での予測マップである。セシウム137がいかに執拗に大地を汚染し続けるかがわかる。同時に137と134を合算して「セシウム」とひとくくりにして考えることがいかに有害な結果をもたらすかも了解される。 (<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/ukraine_go_report.html>を参照のこと) 【1枚目】1986年5月時点のセシウム137 土壌汚染マップ 【2枚目】2011年5月時点のセシウム137 土壌汚染マップ 【3枚目】2036年5月時点のセシウム137 土壌汚染マップ(予測) このように熊谷の疑問に対して答えることはさしてむつかしいことではない。ところが、この簡単極まりない質問に、松原は驚くべき回答をするのである。
正解の鍵は「セシウム」と一括りにすることの誤りにある。大体この回答では「(セシウムは)どこにいったのだろうと思うのですが、それはいかがでしょうか。」という熊谷の質問に全く答えていない。セシウム134が核崩壊して最終的にキセノン134という安定した同位体になったために「セシウム」が減少したのである。しかし、137は執拗に残っている。 |
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「フクシマ」と「チェルノブイリ」の重要な相違点 | |||||||||||||||
熊谷はもうひとつ重要な質問をしている。
熊谷の質問は、海洋における生態系、食物連鎖の問題を問うている。チェルノブイリ事故による放射能汚染と「フクシマ放射能危機」では、様々な類似点がある、と同時に相違点もある。相違点の中で最大のものは2点ある。「フクシマ放射能危機」は東日本大震災と同時に起こったため、大量の低レベル放射性廃棄物が発生したことだ。(日本の環境省の言い方では「震災廃棄物」。政府・環境省に誘導された日本の大手新聞・テレビの言い方では「震災がれき」)これまでの核事故ではこれほど大量の低レベル放射性廃棄物が発生したことはなかった。(環境省の発表では約2000万トン。ただし沿岸海底に沈む低レベル廃棄物についてはまだ把握されていないと思う)この大量の低レベル放射性廃棄物の処理を誤れば、放射能汚染を時間的にも空間的にも拡散させることになる。 熊谷の質問との関連で言えば、もうひとつの大きな違いは大量の放射能が太平洋側に直接流され、または降下物として海底に沈んだことだ。(原子力推進勢力の学者の中には、海に流れた放射能は海水で希釈されて薄まりやがては無害になる、という人物もいる。かといって科学的にその説を積極的に裏付けようと研究や調査を開始したわけではない。) チェルノブイリ大惨事ではこれほど大規模な海洋汚染は起こらなかった。むしろ私たちが参考とすべきは、アイリッシュ海に面したイギリスのカンブリア州沿岸地区などで発生した人工放射線による健康損傷のケースかも知れない。 |
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1957年のウィンズケール事故 | |||||||||||||||
イギリスほぼ中部、アイルランドを対岸にのぞむアイリッシュ海に面した西カンブリア州のウィンズケールに、兵器級プルトニウムを生産するウィンズケール原子力工場(現セラフィールド核燃料再処理工場)があった。この兵器級プルトニウム工場で1957年10月10日大火災が発生するのである。この後は、日本語ウィキペディア「セラフィールド」に説明してもらおう。
このために、ウィンズケール工場の周辺は深刻な放射能汚染に曝された。ばかりでなく風向きのため、アイリッシュ海やその対岸のアイルランドまで深刻に汚染された。 この後は、ECRR2010年勧告「第11章 被曝に伴うがんのリスク:最近の証拠」に語ってもらおう。
先の日本語ウィキペディア「セラフィールド」で、「当時のマクミラン政権が極秘にしていたが、30年後に公開された。」と書いていたが、もちろん進んで公開したわけではない。この地元テレビ局の勇気ある報道がきっかけになったのである。 ここでウィンズケール工場と「シースケール」という村の位置関係を確認しておこう。
このカンブリア地域のほぼ西半分が西カンブリア州である。シースケールは貧しい漁村(左図の赤囲い)で、現セラフィールド核施設(以前はウィンズケールという名称だったが変更)からは直線で4kmと離れていない。(右図参照)
中部電力浜岡発電所という顧客を失いかけて、セラフィールド再処理工場は閉鎖直前の状況にある。是非とも止めを刺さねばならない。また永年にわたる「浜岡原発反対運動」が浜岡のみならず、悪名高い「セラフィールド」に止めを刺すことになれば、これほどの快挙もなかろう。 |
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イギリスCOMAREの包括的調査 | |||||||||||||||
前述のようにこの事件が、事故後30年近くも経って大きな社会問題・政治問題になった。
その一つがイギリスで現在も続いている、「環境における放射線の医療的観点に関する委員会」(Committee on Medical Aspects of Radiation in the Environment-COMARE)である。日本でも最近単に「COMARE」(コマレ)としてその名が知られるようになった。(<http://www.comare.org.uk/>) COMAREはセラフィールド核施設以外にも、スコットランドのドーンレイ(Dounreay)、(このドーンレイ核施設も、スコットランド独立運動と絡んでいるので詳しく見ておきたいが先を急ぐ)や東南イングランドのアルダーマストン(Aldermaston )、その近くのバーフィールド(Burghfield )にある核施設近隣の健康障害を子どもたちの「白血病」と「がん」に限定して調査した。またこうした動きを見て大陸ヨーロッパ諸国の科学者や政府機関もそれぞれの国で同様な調査を行った。1986年から2007年までの動きである。 次の表は「第9章第1節 核施設とその周辺」に掲載されている「核施設近隣に居住する子どもたちにおける過剰な白血病とがんのリスクを立証している研究」と題する表である。 中で「ICRPリスクの何倍か」という項目は、もちろん非ICRP系の学者・研究者側からの評価である。 上記調査によると、いずれの核施設も大気、海、河川に放射性物質を放出しており、近隣の子どもたちへの健康影響は、「がん」や「白血病」に絞って調べてみると、ICRPリスクモデルに比べると100倍から1000倍のリスクが実際にあったという。もちろんICRP学派の学者・研究者はこのリスクを無視している。彼らがどうしても無視できないのは、イギリス政府の正式な調査委員会であるCOMAREとドイツ政府の正式な調査機関であるKiKKの報告だ。COMAREの場合、ICRP派の学者と非ICRP派の学者が合同で調査をして以上の結果を得たのだが、最終報告書作の段階で非ICRP派の学者の見解は本報告から排除された。 |
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ドイツのKiKK研究 | |||||||||||||||
ドイツのKiKK研究は、ドイツ連邦政府・放射線防護庁(BfS)のプロジェクトであるが、そのWebサイトは、KiKK研究の背景について次のように述べている。(<http://www.bfs.de/en/kerntechnik/kinderkrebs/kikk.html>)やや長くなるかも知れないが、抜粋引用する。断っておくが、これはICRP派の見解でもなく、非ICRP派の見解でもなく、ドイツ連邦政府・放射線防護庁の見解である。
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ポピュレーション・ミキシング | |||||||||||||||
もちろん、ICRP派の科学者たちはこのKiKK研究の結果を無視するか否定している。しかし、ドイツ放射線防護庁の正式な委託研究だけに頭から無視はできない。 この後は、ECRR2010年勧告『第11章 1節「核施設とその周辺」』に語ってもらおう。
以上のような研究は、これまでのICRP学説やそのリスクモデルと著しく差がある、またうまく説明できない。またICRPの側から積極的な反論や反応があるわけではなかった。無視といえば聞こえはいいが、事実上反証できなかったのである。しかしその中でも唯一真面目な試みは、キンレンらの「人口混合説=ポピュレーション・ミキシング」であろう、とECRR2010年勧告は述べている。 この説に従えば、核施設近辺では人口混合が起こりやすく、白血病の「ウィルス」を新たな人口集団が持ち込む、ところが感染に対して免疫抵抗力が弱い地方の集団があり、この2つの集団が混ざり合うと、白血病発症が多くなる、これが核施設近隣で白血病発生群が多発している原因だ、と説明する。 しかしながら、ECRR2010年勧告はこれは真面目な研究だとしながらも、
と一蹴している。私は全くのシロウトだが、「ポピュレーション・ミキシング」は「白血病のウィルス」なるものを発見・同定してからなされるべきものだと思う。殺人事件に例えれば、犯人を名指ししたものの、アリバイも調べていなければ、凶器すら発見していないということになる。およそ非科学的な議論ではないか?白血病の「ウィルス」自体が仮説で、このウィルスが未発見では話がはじまらないだろうと思う。 |
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松原純子の宗教的信念ないしは信仰 | |||||||||||||||
実は、松原純子も、先に紹介した「食品安全委員会・食品安全評価ワーキンググループ 第1回会合」で、KiKK研究に触れ、ポピュレーション・ミキシングに触れている。前の引用も重複するが、関係箇所を引用しておこう。
ここでの、松原の説明と先の「KiKK」の説明とは相当に違っている。また「私もその研究会に加わっていた」といっているが、少なくとも12人の委員の一人だったとか、GCCRに加わっていたとかという話は全く聞かないし、どの資料にも出てこない。KiKK研究に反論するICRP系の研究会のメンバーだったというのなら話は別だが。実際はこれまでに見たように、KiKK研究はイギリスなどでの先行研究や良心的な科学者の研究がまずあって、その問題の深刻さにドイツの世論が動き、本来はICRP派のドイツの牙城の一つだったドイツ放射線防護庁を動かし、全ドイツ規模の大掛かりな調査研究となったものだ。またKiKK研究に対する評価も高く、ほぼ信頼されている。また、「ポピュレーション・ミキシング」も、松原がいうように「大体のコンセンサスだったように思います。」どころか、ウィルスが未発見のままでは、仮説の土俵の上にも乗っていない。松原の説明は「不正確」という表現よりも「デタラメ」と表現した方が近い。こうした「知見」が、堂々と「食品安全委員会」のワーキンググループで述べられ、専門委員か真に受けるというあり方では、本当に「放射線弱者」の立場にたった放射能汚染食品駆逐のための「リスク評価」が可能なのかという疑問がどうしてもぬぐえない。 松原の話の中で、きわめて興味深い点がある。上記コメントの中で、「原子力の放射線にするには余りにも放射線レベルが低すぎる、発がんするには放射線レベルが低すぎ」ると言っている点だ。何と比べて低すぎるといっているのかというと、それは当然のことながらICRPのリスクモデルと比べた時の話である。 しかしイギリスのCOMAREの研究にしろ、KiKK研究にしろ、事実関係を調べて研究して行くと、「ICRPリスクモデルはおかしい」という点にポイントがある。ところが、松原は、「ICRPリスクモデルは絶対的に正しい。これに反する事実は、事実の方がおかしい」といっていることになる。 これは松原の信念(あるいは宗教的信仰に近いかもしれない)とも云うべきもので、この信念(あるいは信仰)は、別な資料で強烈に告白されている。それは「KiKK研究評価に関するBONN会議(26.Feb.2009)」という資料だ。この資料の中の結語には次のように述べて、KiKK研究の結論を批判している。
ここで松原が言っていることは、KiKK研究で示された子ども「白血病のリスク」は、年間1.9μSvという被曝線量とまったく合致しない。これだけのリスクが現れてくるためには、年間12-30mSVの被曝線量が必要。この間には約1000倍の開きがあり、KiKKの観察結果・評価は誤りであろう、と言う点にある。 ところが、ICRPのリスクモデルは事実上ほぼ100%、広島原爆・長崎原爆の1950年以降の生存者を永年にたって調査研究した「原爆生存者寿命調査」(LSS)に依拠している。従って松原もLSSに依存して、先の主張をしていることになる。あくまでLSSが正しいのか、それともKiKKが正しいのか。しかし松原にはこの二者択一は存在しない。松原にとってLSSはどんな事実が起ころうが、絶対的に正しいのである。それは“神”への信仰にも似ている。しかしそれは宗教ではあっても、少なくとも科学ではない。 |
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(以下その④へ) | |||||||||||||||