参考資料 <福島第一原発は今> | (2013.1.19) | ||||||
2012年11月7日 「措置を講ずべき事項」に基づく「実施計画」の提出について |
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同日原子力規制委員会が東電に対して事故収束計画提出命令書である。提出期限は2012年12月7日としており、東電に1か月の猶予しか与えていない。上記「福島第一原発が特定原子力施設に」の文書に付属する添付資料1と2の内容でもある。この命令書を読んで驚くことは、少なくとも原子力規制委員会は、「東電福島原発事故」が、2011年の4月から5月頃からほとんども収束に向けて進展していない、と見ているという点だ。 【まえがき】では、「できる限り速やかな燃料の取り出し完了など、特定原子力施設全体のリスクの低減及び最適化を図り、敷地内外の安全を図ることを目標とし、その達成のために必要な措置を迅速かつ効率的に講じること、1号炉から4号炉については廃炉に向けたプロセスの安全性の確保、溶融した燃料(燃料デブリ)の取り出し・保管を含む廃止措置をできるだけ早期に完了すること」と述べている。燃料デブリ(debris)とは核燃料が溶けた残骸という意味である。要するにここでは、燃料取り出しをしなければ、何事もはじまらない、そのメドをつけることを中心に計画を作りなさい、といっている。 【Ⅰ. 全工程及びリスク評価について講ずべき措置】では、廃炉や燃料デブリあるいは損傷を受けていない燃料の取り出し工程を明確にしなさい、といっている。廃炉の工程が現時点で明確になるとは誰も思っていないから力点は、炉内・プール内の燃料取り出し工程にあることは明白である。ところが東電はこの工程は野田政権の2011年秋にすでに出しているはずであり、この工程表に基づいて野田政権は『収束宣言』を出したはずだ。当時も今も誰も信用していないが、原子力規制委員会もまた信用していないことが明確となった。自民党安倍政権は『収束宣言』を取り消すべきだろう。 【Ⅱ.設計、設備について措置を講ずべき事項】では、「1. 原子炉等の監視」、「2. 残留熱の除去」、「3. 原子炉格納施設雰囲気の監視等」、「4. 不活性雰囲気の維持」、「5. 燃料取出し及び取り出した燃料の適切な貯蔵・管理」、「6. 電源の確保」、「7. 電源喪失に対する設計上の考慮」、「8.放射性固体廃棄物の処理・保管・管理」、「9.放射性液体廃棄物の処理・保管・管理」、「10. 放射性気体廃棄物の処理・管理」、「11. 放射性物質の放出抑制等による敷地周辺の放射線防護等」、「12. 作業者の被ばく線量の管理等」、「13. 緊急時対策」、「14. 設計上の考慮」、「15. その他措置を講ずべき事項」と15項目にわたって計画内容を指示している。15番目は役人的修飾項目としても、14項目の内容は、原子力規制委員会が福島第一原発の現状について決して楽観していないことを示している、ICRP(国際放射線防護委員会)の2007年勧告(Pub.103)は、公衆(放射線業務や医療被曝に関係しない全く通常生活を送る一般市民)に対して新しい『被曝強制』のコンセプトを打ち出した。すなわちそれまでの『被曝状況』を「公衆被曝」、「職業被曝」、「医療被曝」と単に3つのカテゴリーに分ける分類から、「緊急被被曝状況」、「現存被曝状況」、「計画被曝状況」と『苛酷事故』を想定した3分類法を導入した。それまでのICRP勧告は「チェルノブイリ事故」のような苛酷事故は表向き全く想定していなかったのだが、1986年のチェルノブイリ事故の発生で苛酷事故が起こりうることを認めざるを得なくなったといういいかたもできる。『被曝状況』3分類に従えば、
ということになる。そしてそれぞれの『被曝状況』に応じて「公衆被曝」と「職業被曝」の上限が設定された。フクシマ原発事故の発生は2011年3月11日だから、実はICRP2007年勧告で打ち出した『被曝状況3分類』、日本の国内法整備の前に適用された。『緊急被曝状況』では公衆の被曝線量は『20mSvから100mSv』を上限とする。また『現存被曝状況』では『1mSvから20mSv』を上限とする。『計画被曝』ではこれまでどおり『1mSV』を上限とする。ところが日本の国内法では依然として公衆の被曝線量は『年間1mSv』である。厳密に言ってICRP2007年勧告の日本国内適用は違法状態である。フクシマ原発事故発生直後文部科学省は「福島県内の児童と生徒に対して年間20ミリシーベルトの被曝上限基準」を適用したが、これは『緊急被曝状況』の最低値を適用したものだ。しかしこれは日本の国内法違反である。この点を厳しく追及したのが神戸大学教授・山内知也である。山内は2011年5月11日付け第4回目の文部科学省への『申し入れ書』で次のようにいう。 「まずは、子供に対しては法令のいう年間1 mSvの基準を厳格に下回るように対処することを申し入れます。そして避難計画の一からの見直しを申し入れます。今回に震災の復興を担うのは若い世代です。そのような世代の健康を第一に考えるのは最も優先すべき課題かと存じます。」 こうしたいきさつを念頭に置いて見た時、原子力規制委員会の東電に対する計画書作成指示の狙いが見えてくる。まず「フクシマ原発事故」の現状を『緊急被曝状況』から『現存被曝状況』に移行したばかり、と捉えていることだ。次に彼らがもっとも恐れていることは『現存被曝状況』から再び『緊急被曝状況』に逆行することだ。その危険性は十分に存在する。この逆行懸念が、「原子炉の監視」に力点を置いた指示にもなっている。次に「残留熱の除去」に見られるようにこれ以上の悪化を防ぐため、格納容器内の残留熱(核崩壊によって生ずる熱)をあげないようにしなさい、という指示だ。注目されるのは、(容器内に核燃料及び溶融残骸大量に残っている現状では当然のことだが)臨界の恐れがあることを隠してはいない。(臨界とは核の連鎖反応が起きることをいう) そして、『緊急被曝状況』から完全に『緊急被曝状況』に移行するのは、『緊急被曝状況』に逆行する恐れがなくなった時といえるが、それはいうまでもなく壊れて密閉状況が保てなくなった格納容器内の燃料や溶融残骸、燃料プールに大量に残っているそれらを取り出して、完全に密閉した時だが、それが「5.燃料取出し及び取り出した燃料の適切な貯蔵・管理」に指摘されている。 規制委員会の「実施計画提出」指示書ともいうべきこの文書は、そのまま規制委員会の問題意識と懸念を表現している。 【参照資料】 ・<参考資料>哲野イサク『緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用』 (Pub.109)(2012年12月13日) <http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/icrp/01.html> ・日本アイソトープ協会・佐々木康人『放射線防護の体系―ICRP2007年勧告を中心に―』 (2011年4月28日) <http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/fukushima/foods/20110428_sfc2_sasaki.pdf> ・神戸大学教授・山内知也『児童・生徒の被ばく限度についての申 入書(4)』 (2011年5月11日) <http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/fukushima/yamauchi_20110511.html> |
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