参考資料 <福島第一原発は今> | (2014.9.8) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
<参考資料>原子力規制委員会 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
2014年5月2日 特定原子力施設監視・評価検討委員会 第21回会合 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
(説明記事が長いため、中見出しをいれてある。資料へ飛ぶをクリックしていただくと掲載資料へ) |
|||||||||||||||||||||||||||||||||
この日の議事録と会合動画が面白い。この日の会合の主要なテーマは東電・鹿島連合が提案している凍土式遮水壁の妥当性である。 ややおさらいにはなるが、凍土式遮水壁なるものが急浮上してきた背景を確認しておきたい。 福島第一原発が抱える最大リスクは、いまもなお1号機から3号機炉内に残る、そして今のところ全く除去の見通しが立たない、全溶融した核燃料である。その量は半端ではない。新燃料換算でもともと約300トンの核燃料が入っていた。うち約130トン分が初期や初期大量放出期で東日本を中心に拡散した。残るは大ざっぱに言って170トン分である。 全溶融しているということは、もともと焼き固めたペレットも、燃料棒を覆っていたジルコニウム被覆管も溶けている、燃料デブリを密閉するものはなくなっている。核燃料を密閉する目的ももっている原子力圧力容器も1-3号機に関しては底が抜けている。いいかえれば密閉機能を失っている。コンクリート製の、電力業界が5重の壁の一つと豪語してきた原子炉建屋も全く健全ではない。1号機・2号機は爆発で屋根自体がなくなっている。2号機は屋根は残っているが、大雨のたびに雨漏りがしている。つまりはこれも核燃料密閉機能が失われている。(図1から図3を参照のこと) 残る壁は格納容器だが、メルトダウンや爆発の際、損傷しておりこれも健全とはいえない。特に2号機は圧力抑制室(サプレッション・チェンバー)付近で水素爆発を起こしており、穴があいているはずだ。満身創痍の格納容器だが、それでも全体形状は保っている。確かに完全密閉機能は失われてはいるが、少なくとも170トンの核燃料残骸を守っている。これが現実を直視した時の実態だ。 もし何らかのできごとで、たとえば東北大震災と同等以上の地震、大雨による洪水、土砂災害、あるいはあまり考えたくないことだが、航空機の墜落・・・、とにかく何かがきっかけでこの170トンのデブリを守るものがなくなれば、フクシマ事故を上回る大放射能惨事となる。世界中見渡しても、人間社会に対するこれ以上の現実的な脅威はないのではないか?
しかも問題はこれだけではない。核のデブリは水で冷やし続けなければならない。もしこれを怠れば、核物質のもつ性質、核崩壊で発生する熱でデブリはさらに危険な状態になる。水で冷やし続けなければならない。大きな視点で見れば、これ以外の対応策は今のところ見当たらない。従って現在その通りのことが行われている。水で冷やし続けるといってもこれも半端な量ではない。冷やした水は直接核燃料に接触するわけだから、これはたちまち放射能汚染水となる。
一方、発生している放射能汚染水は捨てるわけにはいかない。一応今のところセシウム134と137だけを除去して(完全に除去できているわけではない)、タンクにためている。現在(2014年8月現在)敷地内に36万トンある。タンク1基あたり1000トンの汚染水をためられるというから、3600基のタンクがあるということになる。毎日400トンの汚染水が発生し、タンクに1000トンの水がためられるのだから、2.5日に1基のタンクを消費していることになる。
えらく長い前置きになってしまったが、汚染水の量を減らす、という課題がいかに重要な課題を再認識するためには以上の基礎知識が欠かせない。
だから、凍土式遮水壁工法は、政府・経産省が決定・採用した工法で、なにも規制委の許可を得なくても良さそうなものだが、規制委には福島第一に新しい工法や技術を持ち込む場合、これを審議し妥当性を判定する、という任務がある。そこでこの工法の妥当性を審議するのが、当然特定原子力施設監視・評価検討会の議題になったわけだ。2013年度に決定し予算までつけたプロジェクトで、その妥当性が審議されるのが、2014年度の監視・評価検討会、というのも随分人をバカにした話だが、こうして監視・評価検討会のミッションは、政府・経産省の決定を追認するということになった。 「どうせ決まったことだから」というムードは監視・評価検討会全体に流れている。しかしもこの凍土式工法、専門家の立場から見て有効か、というと土を凍らせて遮水する、という発想そのものが、仮設工法であり、福島第一のような半永久的施設が要求される現場にはもともと二律背反性をもっている。従って検討会もはかばかしい評価がなかなかでない。「小田原評定」(検討会外部専門家の会津大学・教育研究特別顧問)を繰り返しているうちに期限が来てしまった。というのは東電・鹿島・経産省の立てたスケジュールでは「2014年6月を目処に本格工事着手、2014年度中の凍結開始を目指す」となっており、評価会合も一定の結論を出さなくてはならないからだ。
要するに、凍土壁が有効であることを説明するための作文であり、解析結果なのだ。 私が気がつくぐらいだから、この問題に春先から関わっている有識者や専門家はとっくに気がついている。 それが以下のような質問や批判になって出てくることになる。
「凍土壁」による遮水が有効とはいえないことは有識者・専門家にとっては常識みたいなものらしく、ついには次のような発言が出てくる。
そして東電・鹿島連合は、凍土式遮水壁を設けることによって、地盤沈下、特に不等沈下などが起きないことを縷々説明することになる。 この問題はここで扱われている以上に重要である。おさらいで見たように、現在1号から3号機炉内のデブリは剥き出しである。これを現在唯一守っているのは格納容器である。恐らくは穴だらけで損傷しているに違いない、格納容器があればこそ水も入れて冷やすこともできる。その格納容器は、原子炉建屋に支持されている。原子炉建屋の健全性は損なわれているとはいうものの、格納容器を保持できるほどの健全性は保っている。繰り返しになるが、格納容器は建屋に全面的に依存している。その建屋は地盤によって支持されている。東北大震災で福島第一敷地は全体で約7cm地盤が沈下した。幸いにして不等沈下ではなかった。その建屋の地盤が不等沈下を起こして、建物全体が傾いたり、壊れたりしたら、原子炉格納容器も全体形状を保てなくなるおそれは、十分ある。もし建屋に重要な損傷が発生し、原子炉格納容器が格納機能を保てなくなれば万事休すである。 だから更田がここで述べていることは、本来日本国民全体の関心事でなければならないはずだ。 この重要問題に対して、東電・鹿島連合は、地盤層が砂岩だから大丈夫だ、という答えに終始する。問題の重要性を考えれば、このような話で納得できるものではない。
この議論を通じて一つ明らかになったことは、東電・鹿島連合にしたところで絶対的な自信をもっているわけではない。それはそうだろう。この規模(総延長1500m、凍土量7万m3)で遮水壁を作るのははじめてなのだから。しかも現場は放射線被曝の危険や配管など構築物が入り組んでいて、通常のトンネル工事で遮水壁をつくるのとはわけが違う。やってみるまでわからない、といったところが正直な話だ。しかたがって説明資料にも『重層的な対策』という言葉がやたらと出てくる。『重層的な対策』とは、従来のサブドレインによる地下水汲み上げ、地盤改良による止水対策、従来実績のある様々な遮水対策と組み合わせての対策と言う意味だ。 事ここに至れば、規制委員会としてこのプロジェクトをやめさせる力もなければその気もない規制委員の更田は嫌みたっぷりに次のようにいう。
保険とすれば320億円は随分高い保険であり、鹿島とすれば美味しい保険でもある。 業を煮やしたのか外部専門家として検討会のメンバーになっている東北大学の金属材料研究所の阿部弘亨が次のように発言する。
以下22回会合(2014年5月26日)は、凍土壁が悪さをしないことを証明しろ、と言う点が焦点になる。詳しくは、議事録で見て欲しいのだが、第22回の議事録の中で、この日『ご意見をいただく専門家』として招かれた京都大学名誉教授の嘉門雅史の発言だけは紹介しないわけにはいかない。やや長いかも知れない。
特定原子力施設監視・評価検討会 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||