<ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ>  2014.1.13

 <参考資料>原子力委員会 『原子力発電をめぐる世論の変化』

  2013年7月17日、平成25年度第27回原子力委員会定例会合で、東京大学名誉教授広瀬弘忠(安全・安心研究センター・代表取締役)が報告した「原発をめぐる世論の動向」である。広瀬の調査は専門家による面接で行われており、しかも質問も多岐にわたって極めて信頼性の高い調査だといえよう。この点大手マスコミの電話による世論調査とは全く異なる。(今時土日に自宅にいて固定電話にかかってくる“アンケート”に全く無警戒に、しかもやや誘導めいた質問に回答する人たちがどんな階層なのかおおよそ見当がつこう。大手マスコミの世論調査はサンプルが極めて偏っており、調査結果に対する信頼性は極めて低い)

 広瀬の調査はN=1200(サンプル数が1200)であり、やや少ないという感じもするが、大手マスコミの世論調査で有効回答が概ね1000であり、階層に大きな偏りが見られることからすると、ほぼ信頼に値すると考えて良い。

 興味深いことは、『原発は直ちにやめるべきだ』と回答している人が、13.3%(2011年6月)、19.8%(2012年6月)、30.7%(2013年3月)と福島原発事故から時間を経るに従って増加(急増といってもいい)していることだ。『一方で段階的に縮小すべきだ』と回答している人が、66.4%、63%、54.1%と一見逓減しているように見える。しかしこの2つの数字の合計が、79.7%、81.8%、84.8%と増加していることを考えると、むしろこれは「段階的に縮小すべき」から「直ちにゼロ」へ移行した結果、と見る方が合理的だろう。それは『現状を維持すべき』と答えている人が、16.5%、13.9%、9.8%と時間を経るに従って減少していることでも裏付けられる。(以上スライド34枚目参照のこと)

 ともかく「福島原発事故は風化しつつある」といった類の電力会社・マスコミの宣伝に惑わさないことだ。広瀬の報告の他のデータを見てみても、福島原発事故の影響を日本の国民がより深刻に考え、徐々に核心に近づきつつあるように、私には、見える。

 もうひとつ重要なことがある。広瀬の調査は決して「反原発」の立場から行われたものではなく、逆に「原発推進」の立場から、おこなわれているということだ。いいかえれば、原発推進勢力はこうした世論の動向を念頭に置きつつ、対策を講じ、推進していくのだろうということだ。

 こうした世論の動向に、もっとも有効な手だてはなんであろうか?それは恐らく「原発問題」に触れない、それを政治課題にしない、というやりかただろう。“触れない”という“触れ方”だ。安倍自民党政権は、2012年暮の衆議院選挙でも2013年夏の参議院選挙でも原発問題を主要なイシューとしなかった。賢いやり方である。

 逆に私たちの側からすると、どんどん「原発問題」を“イシュー化”することが必要、不可欠ということになる。マスコミの煽動に乗って右往左往することが下の下策ということでもある。
 
 なおこの調査をより深く理解するには、当日議事録と合わせ読むことが有効である。

『第27回原子力委員会資料第2号 原子力発電をめぐる世論の変化』…
 平成25年度第27回原子力委員会 議事録…