(2010.6.10) | |||||
<イラン核疑惑>関連資料 | |||||
国連安全保障理事会、イラン制裁決議 1929を採択 |
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信頼性と権威を失墜させる国連安保理 |
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国連安全保障理事会が2010年6月9日(ニューヨーク現地時間)、イランに対する4回目の経済制裁決議(決議1929)を採択した。 アメリカ国務省の発表によれば、提案国アメリカの国連代表スーザン・ライスは次のように述べた。 (<http://www.state.gov/p/nea/rls/142882.htm>) |
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このライスの声明にはこれまでの、イラン制裁に関する理由と同様な特徴がある。イランは国際社会に対する義務を果たしていない、というが、どう義務を果たしていないのか具体的に指摘できていない。その核活動が平和的であることを「国際社会」に対して示せ、というが、それはIAEAが「イランは核兵器開発を行っているという証拠はない。」と再三再四言明している以上、これほど明確な証拠提示はない、アメリカは一切IAEAの報告を無視しているという点だ。 言い換えれば、アメリカが疑えば、証拠はなくても「疑惑国」になると云うことだ。 次に、5月28日発表された2010年NPT再検討会議の最終文書はアメリカも賛成した全会一致の文書である。その中に核兵器を保有したと称する北朝鮮に対する非難、核兵器を保有していると見られるイスラエルに対する懸念は明記されたが、イランのイの字も出てこない。なぜアメリカは、イランのイの字も出てこない最終文書に同意したのか。 そしてその最終文書に同意しておいて、国連安全保障理事会では、「イラン核疑惑」を言い立てるのか。
理由は簡単である。NPT再検討会議という各国平等で民主主義的な議論が行われる枠組みでは、事実無根のアメリカの主張はまったく受け入れられないが、国連安全保障理事会という密室の談合の場では、依然アメリカの専横が通ってしまう、ということだ。 今回決議は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の拒否権をもつ5核兵器保有国とウガンダ、オーストリア、トルコ、日本、メキシコ、ガボン、ナイジェリア、ブラジル、ボスニア・ヘルツェゴビナ、レバノンの10カ国の任期制非常任理事国の間の投票で決定された。 15カ国のうち賛成が12カ国、反対がトルコ、ブラジルの2カ国、棄権がレバノン1カ国だった。 この決議が全会一致でないことはある意味驚きであり、これまでの対イラン制裁決議のいきさつから見るとアメリカの支配力が衰えていることの証拠だが、それ以上に「国連安全保障理事会」の談合性・密室性、非民主性を逆に際だたせる結果にもなった。 2010年NPT再検討会議では、NAM(非同盟運動諸国)を中心とする非核兵器保有国と核兵器保有国の「核兵器廃絶」をめぐる対立が一層鮮明になった。と、同時にアメリカ・オバマ政権の「核兵器のない世界」もまやかしであることが立証された。 そればかりか非核兵器保有国は、アメリカを始めとする核兵器保有国に対して「核兵器廃絶」の日程まで迫った。オバマ政権は防戦一方だった。にも関わらず、アメリカが最終文書に合意したのは、「最終文書破壊」の張本人になることが決定的に不利だったからだ。 一言で云えば「非同盟諸国」=非核兵器保有国の完全勝利であり、オバマ政権=核兵器保有国の完全敗北だった。 その背景には08年「リーマンショック」にきっかけとする世界経済恐慌を通して明確となりつつある、勃興する新興国・途上国と没落する西側社会という、際だった力関係の逆転現象がある。 その直後の「イラン制裁決議」である。 実効性はほとんどないとはいうものの、国連安全保障理事会の本質をさらけ出したばかりか、その信頼性と権威をさらに失墜させることになった、という他はない。 結局は「国連民主化」の動きに拍車をかけることだろう。 |
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