(2010.10.27)
 【参考資料】イラン核疑惑 

<イラン核疑惑> イラン、ブシェール原子力発電所
操業開始間近か
 
一面トップで、ブシェール原子炉の原子力燃料装填を伝える「テヘラン・タイムス」
(同サイトからコピー・貼り付け) 

 2010年10月26日(月)付けテヘラン・タイムス(英語電子版)(<http://www.tehrantimes.com/index_View.asp?code=229264>)は、同日ブシェールの原子力発電炉に原子力燃料を装填する、と伝えた。

 ブシェール原子力発電所には、ロシアのVVER-1000型原子炉が導入されており、これが第1号基。英語Wikipedia「List of nuclear reactors」(<http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_nuclear_reactors#Power_station_reactors_4>)によると現在、ブシェール発電所では、ドイツ・ジーメンス社のKWU原子炉を導入した2号基が計画されているが、現在計画は止まっている。(成り行きによってはこれもロシアが取るかも知れない。)また、2000年のIAEAの資料によれば(<http://www.iaea.org/cgi-bin/db.page.pl/pris.prdeta.htm?country=IR&refno=9>)、アフアーズの南70Kmにあるダクホバン(Darkhovin)でも原子力発電所建設を計画中で、ここではイラン国産の原子炉(ヨーロッパ企業の技術援助を受けている)を設置の予定で、2011年1月から着工される。

 今年の9月11日、イラン原子力庁長官アリ・アクバル・サレーヒは、核燃料注入について、
 『 (イラン暦の)メフル月(Mehr−9月23日から10月22日)にブシェール原子炉核心に原子力燃料装填を開始し、操業を始めるとしていたが、その後、小さな技術的問題のため、約1ヶ月予定が遅れる。』
 と述べていた。(テヘラン・タイムス)

 またテヘラン・タイムスは、
 『  発電所はペルシャ湾岸のブシェールにほど近いところに位置し、全ての核心に原子力燃料が装填されれば、1000メガワットの発電量となる。またロンドンに本拠を置く世界原子力協会は、ブシェール原子炉は、イランの原油を年間1100万バレル、あるいは18億立方メートル分の天然ガス節約の効果があるかもしれない、と推定した。』
 としている。
 
 (世界原子力協会=World Nuclear Associationについては次。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=13-01-03-02>を参照のこと。) 


 アメリカCIAの世界実情報告(World Fact Book)によると、イランは現在日産417万2000バレルの原油生産(2009年)を行っており、ロシア、サウジアラビア、アメリカに次いで世界第4位、また天然ガスは同じくCIA世界実情報告によると、1163億立方メートルの生産量(2008年)で、アメリカ、ロシア、EU、カナダに次いで世界第5位である。

(<https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/rankorder/2173rank.html>及び<https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/rankorder/2180rank.html>を参照の事。)

 テヘラン・タイムスは、

 『  ブシェール発電所は、繁栄する中東近隣諸国、たとえば、2020年までに4基の原子炉稼働を計画してアラブ首長国連邦の、さらにその十年先を歩んでいる。』

 と述べてこの記事を結んでいる。

 原子力の平和利用は、核兵器不拡散条約が認めたイランの権利であり、これはイランが核兵器保有の野心がある、というアメリカの非難には全く根拠がない、別に目的をもったプロパガンダであることを確認した上で、私はこうしたテヘラン・タイムスの「バラ色の原子力エネルギー」というイメージに危惧を覚える。というのは、原子力エネルギーの利用は、平和利用にしろ、軍事利用にしろ、実際応用優先の研究体制で進んできた。これはマンハッタン計画以来一貫している。なすべき幅広い基礎研究を後回しにして、科学技術分野の研究としては実にいびつな形で発展してきた。極めて危険な放射性廃棄物ひとつとっても、その処理問題未解決のまま、実際応用が進んだ。本来もっと慎重でなければならないのに、「ビジネス優先」で進んできた「原子力ビジネス」に本当にバラ色の未来が描けるのか・・・。