(原文:http://www.doug-long.com/stimson9.htm)
(スティムソン日記の註)

1945年8月9日
長崎に原爆投下



 今朝、事務室に来てみると、記者会見がとても明るかったという肯定的なニュースが入っていた。
シュールズは記者会見を行って、原爆の成功が陸軍の将来の規模に対して及ぼす影響について、単に声明を出した方がいいと考えていた。
この国の誰もが堪え忍んで、陸軍から兵役を解かれたいと思っているかのように見える。
―中略― 
 最初の原爆の成功と昨日のロシア参戦の知らせは、(早く戦争を終わりたいという機運を)2倍に増幅した。
産業界も、それぞれの生産計画を推進するため、早く戦争からかえってきて欲しいと思っているし、この冬の石炭を掘り出すため、誰もがお互いの手を必要としている。
陸軍における士気の効果については極めて気になるものがある。私自身が最近のヨーロッパ旅行で見ている。
―中略―
 原爆とソ連の参戦は間違いなく勝利を早める効果がある。
しかし、その効果はどれくらい持続するだろうか、そして勝利のためにはどのくらいの人員を確保しておかなければならないだろうか。
それを今決定することはできない。
新聞やその他の批評家の中には、陸軍の首脳部はこのこと(できるだけ早くまた多くの人員を復員させること)に関して全然考慮を払っていないと考えている傾向がある。
そして単純に今存在している大規模な軍隊を維持しようとしている、と考えている傾向がある。
従って、こうした批判に真っ向から対立する様なことはひどく気になる(ticklish)ところだ。
従って、彼らの見解ももっともだし、われわれ(陸軍の立場)ももっともだと思わせるような声明原稿にしなければならない。


(原爆投下の背景、トルーマンが戦争終結を急いだ背景の一つは、アメリカ全体に漲る、厭戦気分とは云わないまでも、早く戦争を終えて、労働力を生産現場に戻して欲しい、という気分があったことも見逃せない。)

(スミス・レポートを公表するかどうかの会議が開かれ、科学者たちの意見を聞いて、公表するということでトルーマンが決断した。)



 その会議の後、私はバーンズに、休憩室で、確認してみた。
会議の目的の一つで、私はバーンズに、クロスマンから渡された、デ・フロスト・バン・スリックの書いた報告とスタンリー・ウォッシュボーンからの手紙及び記事について彼に意見を聞いてみた。
スリックもウォッシュボーンもその報告の中で、それぞれのやり方で、強くまた賢く、日本との交渉に置いて同情的な取り扱いをすべきだ、と主張している。(具体的には天皇制維持を認めること)
 難しいことは一緒に交渉するということだが、私はバーンズに強く、日本との交渉では日本がやりやすくすべきだと主張した。
(天皇制維持を認めるべきだという主張)


 今朝、長崎に置いても原爆投下が成功したというニュースが入った。
2つの強力な一撃は日本を手早く片づけるだろう。もう一つ落とす前には、少しの余地しかない。
この間に日本との降伏交渉で何かがなされることを望む。
私は大統領とバーンズにできるだけのことをした。
彼らは二人ともこの目的について理解してくれたように思う。


(次の日、8月10日、スティムソンは静養に出かける予定だった。しかし出発は大幅に遅れた。日本から降伏の第一報が入ったからだ。)