【参考資料】ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ 2012.2.8

<参考資料> チェルノブイリ事故後25年:未来へ向けての安全(英語)
-ウクライナ政府緊急事態省報告-
Twenty-five Years after Chornobyl Accident: Safety for the Future



 2011年4月20日から22日の3日間、チェルノブイリ原発を自国領土内に抱えるウクライナの首都、キエフで「チェルノブイリ事故後25年:未来へ向けての安全」(“Twenty-five Years after Chornobyl Accident: Safety for the Future”)と題する国際科学会議(主催:ウクライナ政府)が開催された。

 表題の文書はこの会議の時のウクライナ政府緊急事態省(“Ministry of Ukraine of Emergencies”)の英語報告全文である。(PDF文書で45MB)

 この会議の模様は、次のサイトhttp://www.chornobyl25.gov.ua/en/index.htmlにアクセスすると視聴できる。このサイトはその前文的文書で次のようにいう。

 2011年4月26日、チェルノブイリ大惨事(the Chornobyl disaster)から25年が経過しようとしています。核技術はエネルギーの供給において、増大するニーズに合致したもっとも効果的な方法の一つであり、温室効果ガスの排出をカットし、気候変動を緩和し、原油価格の変動に対して効果的にバランスを取る役割を果たす、と多くの諸国が考えています。しかし、同時にチェルノブイリ原子力発電所の惨劇の結果が忘れ去られてはなりません。

「チェルノブイリ事故後25年:未来へ向けての安全」と題された国際会議の目的は、核発電技術やその他の危険な技術の安全性に供すためチェルノブイリ大惨事から学ぶ教訓を生かすことであり、また緊急事態から環境や人々を防護することであります。』

 この会議はウクライナ政府の主催ではあるが、欧州共同体やIAEAをはじめとする国際的な核推進諸機構や組織の後援を受けているため、ウクライナ政府緊急事態省の口吻は、かならずしも、核発電(原子力発電)に頭から否定的なトーンではない。しかしこの報告書全体のトーンから察するに、明らかに核発電(原子力発電)による惨事がいかに地球とそこに暮らす人間を含む生態系に長期的で深刻な影響をもたらすかに鋭い危機感を抱いていることは明白であろう。

 ちなみにこの国際会議の共催者は、ベラルーシ政府、ロシア連邦政府、欧州委員会(European Commission)、欧州評議会(Council of Europe)、 放射線防護核安全研究所(Institute for Radiological Protection and Nuclear Safety) (IRSN、フランス)、GRS (技術及び核安全協会    Society for Technical and Nuclear Safety -- Gesellschaft fьr Anlagen- und Reaktorsicherheit、ドイツ)の6政府及び組織。

 さらに後援は、以下の国連機関。IAEA、国連開発計画(United Nations Development Programme -UNDP)、 ユニセフ(United Nations International Children’s Emergency Fund -UNICEF)、世界保健機関(World Health Organization-WHO)の4機関。

 なおこのウクライナ政府緊急事態省の報告は、一部『チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク』<http://akari-np.net/?p=4771>というNGOで、<『チェルノブイリ事故から25年 “Safety for the Future”』より(2011年4月20-22日、チェルノブイリ25周年国際科学会議資料)>という表題で日本語訳がなされている。この日本語訳では、

 『  …そうした私たちの危惧をさらに裏付けるような子どもたちの状況が、抜粋した報告に示されています。この「レポート」は政府系のものではありますが、事故により被曝した人々、汚染地帯に住み続けている人々の健康状態が年々悪化し、その人々の子どもたちにも健康上のリスクが年々高まっていることを明らかにしています。胎児・乳幼児だけでなく、思春期の子どもたちのリスクも高いことがわかってきました。これはウクライナだけの傾向ではありません。

 放射線の影響について、ガン・白血病といった重篤な病に限らず、多様な病気に目を向け、それらの兆候を見逃さず、時宜を得た対策をとっていくことが、これからの福島や日本の子どもたちの健康を守っていくことにつながると、私たちは考えています。この資料が、そのことに役立つことを願っています。』

 と述べているとおり、「フクシマ放射能危機」によって福島の子供たちに限らず日本全国の子供たちにこれから何が起きるか、その被害をどうしたら最小化できるか、といった問題意識のもとに抜粋翻訳が行われている。

 是非一読すべきだろう。
(なお次のセシウム137汚染状況は同報告書の抜粋である)

 なおウクライナの位置、チェルノブイリ原発の位置を確認しておいてほしい。

<ウクライナの位置>

1986年5月現在のウクライナのセシウム137汚染状況<同報告書83P>

2011年5月現在のウクライナのセシウム137汚染状況(予測)<同報告書84P>

2036年5月現在のウクライナのセシウム137汚染状況(予測)
<同報告書85P>