(2009.6.20)


(その4へ)

<参考資料> NPT加盟呼びかけに対してイスラエルが激しく反発

そのD イスラエル:イランに対して行動する時は今だ!
Israel: Time to Act against Iran now !
  <http://www.israeltoday.co.il/default.aspx?tabid=178&nid=18982 >

最後はイエルサレムに本拠を置く、イスラエルの通信社、イスラエル・ツディ(Israel Today)<http://www.israeltoday.co.il/>である。日付は6月14日でゴットモーラー発言から1ヶ月以上経過している。この記事では、直接ゴットモーラー発言には言及していないものの、これもイスラエルの反応と見ることができる。この間、5月18日は、オバマーネタニエフ会談がワシントンで行われた。結果はイスラエルにとって思わしくないものと見える。更に6月12日にはイラン大統領選挙があった。結果はこれもイスラエルにとって期待はずれに終わった。イランの大統領に、アハマディネジャドが再選されたことは、オバマ政権にとっても期待はずれであった。今になってうすうすわかるのだが、オバマがプラハで演説をした時、またゴットモーラーがNPT再検討会議準備委員会会合で発言をした時、いずれもイランとの対話を表明し、イランの平和目的の核開発を認める、と表明した時、決してアハマディネジャド政権と対話をするとは言わなかった。イランと対話するといった。かなりの確度で、大統領選挙は接戦となり、対立候補の元首相のムサビが勝つと思っていたのではないか?ムサビ大統領誕生を見越しての、「プラハ演説」ではなかったか?さらに想像をたくましくすれば、オバマはそう言う報告を、アメリカの情報機関から得ていたのではないか?

 イラン大統領選挙当日の6月12日(金)の夜、アメリカのABCニュース(チャールス・ギブソンがアンカーの番組)は、はやばやと大接戦を報じ、両陣営とも勝利宣言を出した、と報じた。時差はあるものの、さすがにABCは、情報を的確に掴んでいるといったんは感心した。しかし、その後の選挙結果が明らかになるにつれ、この時のABCニュースに疑念を持ち始めた。現地で出口調査をしたわけではないのに、ABCは何故早々と「大接戦」を報じることができたのか。アメリカ政府筋から情報を得ていたのではないのか?

 アメリカのABCは、その後「反アハマディネジャド・デモ」をトップで報じた。イギリスのBBCもトップで報じた。イラン大統領選挙にそれほど関心が深かったのかと、私などは、逆に驚きもした。こうしたことを念頭に置いて見ると、このイスラエル・ツディの記事は、深読みもできてなおさら面白く読める。

 ついでに、この「反アハマディネジャド・デモ」の最中に、アハマディネジャドはロシアで開かれた上海協力機構の会議に出席した。この時のNHKBSニュースの女性の解説者のコメントが傑作だった。私の記憶が正しければ、彼女はしたり顔でこう解説した。

 イランは上海協力機構のオブザーバーなんです。無理して出席する必要がないのに、ここに出席して、自らの大統領選挙勝利を、ロシアや中国に認めてもらったんですね。」

  彼女は、恐らく誰かが書いた原稿を丸暗記して、テレビカメラの前でしゃべったのであり、上海協力機構がイランの今後にとってどれほどの重要性をもつかまるで理解していないだろう。そもそも上海協力機構が一体何なのか、わかっているかどうかも疑問だ。

 以下、この記事の本文である。


 イスラエルの外務相、アビグドール・リーバーマン(Avigdor Lieberman)は日曜日(*09年6月14日)、イランの大統領選挙においてマフマッド・アハマディネジャドが再選されたことは、イランの傲慢な(*defiant)核計画に対して、国際社会がとうとう行動を起こす時が来たことを意味している、と語った。
リーバーマンは、イランとの問題は単にアハマディネジャドだけの問題ではない、国策の問題なのだと強調した。議論の多いアハマディネジャドの勝利にともない、イランがその国策を一歩前進させることが明確になった。

 副外務相のダニー・アヤロン(Danny Ayalon)は、もしアメリカやヨーロッパに、イランがその選挙の結果を変更し、そのポジションを軟化させるというなにがしかの希望があるとしても、そんな希望は窓の外へ投げ捨てて、現実的な行動計画を形成すべきだ、と付け加えた。

 一方、アメリカのオバマ政権の高官(*senior members)は、ニューヨーク・タイムスに、イランの体制側と対話をもつという政策に重点を置くつもりだ、と語った。オバマは、この対話に期限を設けよ、そしてもし外交でイランの核計画を抑えることに失敗したら、より強い行動にコミットせよ、というイスラエルの要求を拒否した。

 先週のABCニュースとのインタビューで、国務長官のヒラリー・クリントンは、もしイランがこのユダヤ人国家を核攻撃しても、アメリカはもう直接イスラエルを防衛する計画はないと語った。

(* これはイランの大統領選挙前のインタビューで、恐らくこの時、オバマ政権はムサビ大統領の誕生を確信していたのだと思われる。)


 クリントンはこう語った。「もしイランが今日イスラエルを核攻撃しても、イランは幾ばくかの報復(*retaliation)を受けるだけだろう。

 2008年の大統領選挙の時、クリントンがもしイランがイスラエルを核攻撃したら、アメリカからの大量の軍事的回答を誘い出すことになる、と発言していたのを思い出してみると、彼女はこの問題を脇に押しやろうと意図している。重ねて念を押されたクリントンは、イランのイスラエル核攻撃はある種の報復に会うことになるが、アメリカからの直接の応答にはコミットしない、とくりかえした。

 多くのイスラエル人は、イランの敵対的意図を抑止するアメリカの核の傘をこれまであてにしてきた。しかしあるものは、今や、イランがこれまでよりも少ないコストでイスラエルを攻撃できるとのシグナルを送ったものとして恐れを抱いている。

(* この記事はここで終わっている。空想の話として。もしイランがアメリカの口車に乗ってイスラエルを攻撃したら、サダム・フセインの二の舞になるだろう。すきを見せて相手に先に手を出させるのは、第二次世界大戦前からのアメリカのお家芸だ。)


(この項終わり)


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