(2009.6.19)


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<参考資料> NPT加盟呼びかけに対してイスラエルが激しく反発

そのC ホワイトハウス高官:イラン、イスラエルの核問題は無関連の議題
White House Official: Iranian, Israeli Nukes Unrelated Issues

  <http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/131227>

これは、5月6日付けの「イスラエル・ナショナル・ニュース」の記事である。イスラエル・ナショナル・ニュースは、「西岸」(West Bank)に本拠を置くメディアで、イスラエル入植者の声を代表していると見られている。つまりはイスラエルのなかでも右翼系ということになる。
<http://en.wikipedia.org/wiki/Arutz_Sheva>
記事の行間からアメリカに見放される恐れがにじみ出ている。



 オバマ政権の高官が、イスラエルが核兵器を保有していることを宣言するよう要求したことは、過去40年間にわたって、イスラエルの(*核)兵器敞を包み隠す和平条約の終焉を意味するかも知れない。

(* ゴットモーラーは、インド、イスラエル、パキスタン、北朝鮮にNPT加盟を呼びかけた。解釈によってはこの4カ国が、NPT外の核兵器保有国と認めたことになるし、実際イスラエルを初め多くの国ではそう解釈した。これをさらに解釈を進めると、アメリカはイスラエルに核兵器保有の宣言をうながしたことになるのかも知れない。)

 ホワイトハウスの高官はワシントン・タイムスに、水曜日(*09年5月6日)、イランの核計画とイスラエルの核計画は「リンゴとオレンジ」だ、つまり何ら関係がない、と語った。オバマ政権は、イスラエルがNPTに加盟するように圧力をかけるだろうかという問いに対しては、この高官は匿名を条件に次のように云った。「われわれはNPTの普遍的遵法性を支持している。長い期間のかかる目標だ。」

 その他のアメリカの高官とイスラエルの高官及び核問題の専門家はーあるものは現職、あるものはそうではないがーワシントン・タイムスに、核兵器の拡散を押さえ込もうとするワシントンの努力は、40年間にわたるアメリカとイスラエルの秘密協定、すなわちユダヤ国家の核兵器敞を国際的安全保障から保護する協定を「露見させ逸脱させる」かも知れない、と語った。

(* これは、1969年の当時の大統領、リチャード・ニクソンと当時のイスラエルの首相ゴルダ・メイヤの間の秘密協定で、当時の大統領補佐官、ヘンリー・キッシンジャーも立ち会った。この協定は文書化されているわけではないが、メモランダムが残っている。リチャード・ニクソン大統領博物館に所蔵されている秘密文書が解除になって、この件が公になった。だから今は秘密でも何でもない。大きく云うと、イスラエルが核兵器武装をするが、アメリカは知らない振りをする、という内容だ。なお1970年、イスラエル最初の10基の核弾頭には、フランスから供給されたミサイルが使われた。だからこの件はフランスも知っている。)


案件はトップに

 ワシントン・タイムスによれば、5月18日ワシントンにおける、バラク・オバマ大統領とイスラエルの首相ベンヤミン・ネタニエフの会談においては、この案件はトップの議題になるだろうとのことだ。ネタニエフは、オバマが引き続きアメリカが関与すること、この案件をイランの核開発問題で譲歩の道具として使わないことを求め、その保証を得たいとするだろう。

 国務長官補佐官、ローズ・ゴットモーラーは火曜日(*09年5月5日)の国連の会合においてイスラエルはNPTに署名すべきだと述べた。

 「NPT自身への世界的な遵法性という意味では、インド、イスラエル、パキスタン、そして北朝鮮も含めて、その問題はまたアメリカの基本的目標として依然として残っています。」とゴットモーラーは云った。しかし、彼女は、オバマ政権は、イスラエルが条約に参加するよう圧力をかけるとは云わなかった。


イスラエルを売る?

 ワシントン・タイムスは、水曜日の編集欄で、イスラエルが保有するとされる核兵器に関するアメリカの政策が変化する可能性があることを警告した。その記事の冒頭は、「最悪の敵に居心地のいい思いをさせるために、アメリカは中東における最強の同盟国を売るだろうか?」という文章で始まっている。ワシントン・タイムスは、イスラエルとイランの核兵器に関してアメリカは二重基準を使っているというイランの不満にこう答えている。

(*  話がどんどんエスカレートしている。イランは「核兵器を保有することは、イラン国民の権利だ。」とは云ったが、同時に「しかし核兵器を持つつもりはないし、その計画もない。」と明言し、IAEAも現在イランが核兵器開発をしている証拠はない、と再三再四明言している。それに対して、イスラエルは現に核兵器を保有している。二重基準もなにも、全然レベルの異なる話を、一緒くたにしている。)


 アメリカはイランとイスラエルを違えて扱っている。それは両者が根本的に違うからだ。イスラエルは信頼のおけるアメリカの同盟国であり、自由な民主主義国だ。イランは長い間のアメリカの敵であり、直接、間接にイラクの反乱分子と通じている。ベトナム戦争以来最大のアメリカ軍兵士の死亡が発生した国でもある。イランの人々は神権政治の圧制の下で苦しんでいる。」
 私たちがイスラエルの核兵器を承認する全く同じ理由で、イギリスやフランス、そしてアメリカの核兵力を承認する。われわれはそれが平和目的であることを知っているからだ。私たちはイランの核兵器に反対する。それと同じ理由で北朝鮮の核兵器にも反対する。私たちはそれが平和目的でないことを知っているからだ。核兵器問題に関する限り、イランとイスラエルを同じ土俵の上に置こうとするいかなる試みも、危険であり、ナイーブである。」
 取り引き材料として、イスラエルの疑わしい核兵器敞に圧力を加えることは、敵の牙を抜くことなしにわれわれの同盟国を弱体化させるだけだ。」

 これまでのところ、イスラエルは核兵器の保有を肯定していない。もしイスラエルがNPTに署名するなら、イスラエルは保有を宣言した上で、それをゴミ箱に捨てなければならない。1948年の独立宣言以来かつてなかった規模で、イスラエルのモスレムの隣人たちはイスラエルを破壊すべく大きな脅威となるだろうし、市民も殺戮されるだろう。

 何十年にもわたって、イスラエルは核兵器を保有しているかどうかについて曖昧さを維持してきた、ただ、最初に中東では使用しないと云ってきただけだ。

(*  これで記事は終わりである。ちなみにワシントン・タイムスは、ワシントンDCのローカル紙で、発行部数に相当差があるものの、ワシントン・ポストについで第二位である。
<http://en.wikipedia.org/wiki/The_Washington_Times>



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