(原文:http://www.doug-long.com/stimson3.htm )
(スティムソン日記の註)

1945年5月13日
ソ連問題と終戦後の東アジア体制

「・・・ジャック(ジョン・Jの誤り)・マックロイ(陸軍長官補佐官)がいっぱい問題を抱えて、ひょっこりやってきた。ほとんどが国務省がらみの問題だ。すぐに本来国務省が扱うべき問題が、われわれの重荷になっていた。しかし、そのほとんどが、陸軍省と衝突課題だったので、問題をあつかう機会があることを私は喜んだ。

 最初は、ハリマン(駐ソ)大使がモスクワに戻る前にもう一度会談を持つ予定だったが、同封している問題を列記したメモに関して、ジョー・グルーが私のコメントを求めている問題だった。
 質問のリストは以下のようなものである。

(1) 太平洋戦争に対するソ連のできるだけ早い機会での参戦は、参戦前に極東に置ける合衆国にとって望ましい政策にソ連の合意を取り付ける合衆国の試みを排除することになるだろうか?
(2)  極東におけるソ連の政治的欲求に関するヤルタ決定は再考する必要があるだろうか?あるいはその全部または一部について実効させるべきであるかどうか?
【ヤルタ会談では、ソ連参戦の見返りにある一定の領土を与える取り決めがなされていた】
(3) もしソ連が要求してきたならの話だが、日本本土における軍事的占領に参加させるべきであるかどうか、逆にソ連の軍事的占領参加は将来合衆国の日本への扱いに長期的影響を与えるだろうか?

次が、ヤルタ協定履行前に、極東における関与について、ソ連から引き出したい政治的譲歩に関する国務省の見解である。

(1) ソ連政府は、蒋介石の政府【国民党政府】の下での中国統一の方向で、中国共産主義者【当時国民党と内戦中だった】に対してその影響力を行使することに合意すべきである。
アメリカがヤルタ協定をもとに中国政府に接近するより前に、アメリカにとって望ましい形で中国統一が成し遂げられるようソ連と合意すべきである。[これに関連したヤルタ合意というのは、ソ連と共に鉄道権、港湾管理権を共有するように中国を鼓舞すること、である。ソ連と中国政府との間の、友好的な設定において困難な問題は、ソ連が新彊地区を、ソ連固有の領土であると主張していることである。
(2) 満州を中国の主権に返還することと将来の朝鮮の状態に関するカイロ宣言に対するソビエト政府の執着は紛れもない。
(3) 日本の降伏前であろうが後であろうが、朝鮮が自由化されればすぐに、ロシア、中国、ソ連、合衆国4各国の共同信託の下に朝鮮が置かれるべきであることはソ連も合意している。4カ国の信託統治権は仮の朝鮮合意として、単一の権威当局の下に置かれるべきである。
(4) 日本からの千島列島併合をソ連に承認する前に、ソ連から、千島列島のある島への商業機緊急着陸権を受け取ることが望ましい。
 
これらは極めて重大な問題であり、国務省がこうした問題を提起してわれわれがそれを知る機会を得たことは非常に喜ばしい。これらの問題は極めて深く掘り下げてあり、私の意見では、いずれもS−1問題の成功に極めて強く関連している。今週の前半、それらが議論される前にこれら問題はしっかり考えておかなければならないことであることを明瞭に指し示している。
【国務次官ジョセフ・グルーのメモランダムはこれと非常に似通ったことを云っている。以下略】