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さてその理由である。前文的パラグラフでいきなり次のようにいう。
『 |
この格下げは、悪化する負債返済能力とアメリカ政府の負債を返済していこうとする意図のドラスティックな低下を反映したものである。(drastic decline of the government’s intention of debt repayment.)』 |
返すつもりがあるが返せない、返す能力がない、というのはやむを得ないとしても、この報告書は、アメリカ政府には負債を返済する意志がそもそもない、その意図をドラスティックになくしている、と断じている。
なぜ、この報告書はアメリカに借金を返すつもりがなくなりつつある、と断ずるのか?(実はもう2年も前からインターネットの世界では公然とこの議論がなされていた。)
『 |
アメリカの経済発展モデルおよび経済運営モデルにおける深刻な欠陥は、アメリカの国家経済を長期にわたる不況に至らせ、基本的にアメリカの国家信用を下げるに至らしめている。
アメリカ連邦準備制度による一連の「量的緩和」(quantitative easing)政策はアメリカドル切り下げの明らかな傾向をもたらし、アメリカにおける信用危機の深化と継続をもたらしている。』 |
元が論文調なので私もついそれに引きずられているのだが、要するに、ドルを過剰発行してしまっていることが、ドルの価値を下げているばかりでなく、アメリカで一向に解消しない「信用危機」を長引かせているばかりか、さらに深刻化させている、といっているのだ。
それは、基本的にはアメリカの「経済発展モデル」とそれを支える「経済運営モデル」に根本的な問題があるといっているのだが、それではアメリカの「経済発展モデル」とは一体何か?という事になる。それは後で具体的に分析され、手厳しく批判されているのだ、ともかく―。
『 |
そのような動きは、完全に貸し手(the creditors)の利益を侵害しており、アメリカ政府の負債返済の意図の低下を示している。』 |
借金を解消するには基本的に2つの方法のどちらかしかない。
1. |
一生懸命働いて稼いで収入を増やし、出費を抑えて手元に余剰金を残し、そこから返済すること。 |
2. |
どんな手段をとってもいいから、踏み倒すこと。 |
アメリカが今行おうとしている「ドル安政策」を「通貨戦争」だと捉えている人には、この報告書が述べていることは到底理解できないだろう。現在発生していることは「通貨戦争」ではない。アメリカ政府による「ドル借金踏み倒し」だ。 |