【世界各国の基礎データ】 | |
(2010.11.9) 追加更新:2012.11.26 |
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<参考資料> 世界の原子力発電所 |
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①西ヨーロッパを一変させた『フクシマ大惨事』 |
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▼「別表1:世界の原子力発電」に飛ぶ | |
▼「別表2:地域別原子炉」に飛ぶ | |
▼「別表3:原子力発電所を計画または検討している国」に飛ぶ | |
▼「別表4:国内電力生産にしめる国別原発シェアの推移 2001年-2011年」に飛ぶ | |
▼「リトアニア」に飛ぶ(更新 2012年11月26日) | |
「その②お金持ちの国だけが脱原発を議論できる」へ | |
原発と核兵器は醜い双子の兄弟 | |
本項目『世界の原子力発電所』を今見てみると、2010年11月9日の記事である。『フクシマ事故』の前だ。更新の必要がある、と思っていた。 私の勉強のすべての出発点は『広島原爆』にある。『広島原爆』がなぜ投下されたのか、その政策意図は何であったのか、この疑問に私自身が答えてみる作業がすべての出発点だった。するとトルーマン政権の『広島への原爆投下』の政策意図、この表現は事態を説明する言葉としては今や不適切なので『日本に対する原爆の使用』と言いかえるが(この2つは決して同じ意味ではない)、原子の分裂と融合を利用したエネルギー革命を起こし推進していくことがその政策意図であることがわかってきた。『フランク・レポート』の表現を借りていいかえれば、『広島原爆』とは核によるエネルギー革命への華々しい政治的デビューだったのである。 当時トルーマン権内部で行われたこの問題に関する秘密委員会(『暫定委員会』)の、今は公開されている議事録を読んでみると、軍事利用としての原爆は『核エネルギー革命』の第一段階であり、その先には産業利用・商業利用を意図していたことがわかる。戦争が終わり、核エネルギー革命の政策意図遂行の任務はアメリカ原子力委員会に託された。国際的には国際連合の下に国際原子力機関(IAEA)が創設されこの任務の遂行機関となった。 しかし『核エネルギー革命』はその生まれから2つの暗い解決し難い問題を持っていた。その一つは『核エネルギー革命』が必然的にもたらす電離放射線(放射能といいかえてもいい)の生命に対する深刻な影響である。これがある限り『核エネルギー革命』は、不可避的に人類の生存を根底から脅かす存在となる。もう一つの問題は、『核エネルギー革命』を推進する人たちの思想である。『核利益』のためには、人の命や健康で安全な生活を根こそぎ破壊してもいとわない、少々の犠牲はやむを得ない、という考え方である。『少々の犠牲』はやがて際限なく拡大していく。取りあえずこの思想を中川保雄に倣って『被曝の死の商人の思想』と呼んでおく。『核エネルギー革命』は、『被曝の死の商人の思想』を基盤にして、核の『軍事利用』(核兵器)と『産業利用』(原発)は醜い双子の兄弟として戦後大きく“発展”してきた。醜い双子の兄弟のうち、私は当初核兵器の危険を中心に勉強してきた。原発の危険について勉強しなければならない、と気づき始めたのは2010年に入ってからである。原発の危険はそれまで全くといいほど勉強してこなかった。それで勉強を始めようとしたのが2010年の夏過ぎである。ゆっくりやればいい、と思っていた。その時『2011年3月11日』など想像すらしなかった。 『世界の原子力発電所』のこの記事には当時の私の暢気な気分がそのまま投影されている。自分の必要性からこの記事を更新しなければならなくなった。今読んでみると誤りもある。 使用する資料は今回も英語Wikipedia “Nuclear power by country”と“List of countries by electricity consumption”であるが今回はもう少し幅広く資料を収集することにする。引用・参集する資料は煩雑だがそのつど明示する。前回記事はそのまま残し、誤りは赤字で訂正し、データは更新する。今回追加する記事は青字としておく。 |
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『被曝の輸出』へと向かう国際核利益共同体 | |
『世界の原発』という問題に関する私の最大の懸念は、『原発の危険』を電離放射線の危険という観点からしっかり把握し切れていない新興国や発展途上国が、これからの手っ取り早い発電手段として安易に原発を受け入れようとしていることだ。ヨーロッパやアメリカ、そして今回日本の“フクシマ事故”の手痛い経験から学ぼうという姿勢に欠けていることだ。『原発の輸出』とは『被曝の輸出』に他ならない。それは『人類生存の危険』を地球規模で拡大深化させることである。私たちはそれを止めねばならない。 |
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2009年4月、アメリカ大統領バラク・オバマの「プラハ演説」は、よく読んでみるとオバマ政権による「原子力発電」解禁宣言でもあった。その後、世界の原子力発電業界はにわかに活発となり、次々と水面下の動きを公にしていった。「原子力発電」そのものの是非は、原子力エネルギーの破壊的利用の一形態である「核兵器」ほど確定しているわけではない。未だに賛否両論が続いている。“フクシマ事故”の後でもなおかつ原発を支持したり、やむを得ないものとして消極的に容認する人たちがまだ広範に存在することは驚くべきことだ。 1979年3月28日、アメリカGPUニュークリア社所有のスリーマイルス・アイランド原子力発電所事故以来、表面なりを潜めていたアメリカの原子力発電ビジネスも、ブッシュ政権後半から息を吹き返し、オバマ政権下では大ピらに原子力発電の有用性を世間に向かって訴えるようになった。1986年4月26日に始まった旧ソ連チェルノブイリ発電所事故は「原子力発電」のイメージを決定的に悪化させた。 おそらく事故の件数ではもっとも多いフランスは、その後も原子力発電所を増やし、今や世界を代表する「原子力発電大国」になった。 また日本の原発器機メーカーは、核産業におけるアメリカの役割の変化、すなわち技術提供や運営・規制ノウハウの提供、政治的基盤環境作り、そしてファイナンスへの特化、に伴い原発建設の現場部隊へと姿を変えてきている。日立製作所や三菱重工、東芝などはフランスのアレバ社と肩を並べる世界的原発ベンダーへと成長した。 急速な経済成長と市民の生活水準の向上を目指す新興国では、こうした「原子力発電先進国」での数々の問題にあえて目をつぶる形で原子力発電に大きく依存しようとしている。 私は、この分野でも全く素人で、一市民がもつ知識と素養以上の内容を自分の中にもっていない。かといって専門家任せにする気もない。政治や経済の分野でもそうだが、専門家ほど怪しいものはない。かつて古代奴隷制社会や中世社会においては、必ず宗教で社会の支配を行った。宗教的ドグマを民衆に押しつけ民衆の生活ばかりでなく、心や頭の中まで縛り付けて支配した。それは宗教的ドグマを民衆に教え諭す司祭たちの存在があってはじめて可能となった。現代各方面の“専門家”は、ちょうど古代奴隷制社会や中世社会での“司祭たち”が果たした役割を果たしている。特に日本では、その傾向を強めている。 こうした社会にあっては、我々一般市民はよほどしっかりしなければならない。“現代の司祭”たちは、あらゆる分野でお告げを垂れて私たちの思考力を縛っている。特に原子力発電の分野ではこの傾向が顕著である。 と、まあ立派なことを言ってみてもこちらは所詮素人。遅まきながら今から勉強をはじめようという次第。手始めは世界の原子力発電所を概観してみる。格好な材料は、例えば日本語Wikipedia「原子力発電所」(<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5% 8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80#.E6.97.A5.E6.9C.AC>)もあって、一見情報豊富なのだが、なぜか私の頭を刺激しない。そこで、英語Wikipedia「Nuclear Reactor by country」(<http://en.wikipedia.org/wiki/Nuclear_power_by_country>)、「List of countries by electricity consumption」(<http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_electricity_consumption>)、などのデータを参照して作成したのが以下の表である。 |
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別表1:世界の原子力発電 | ||||||||||||||||||
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順位 | 国 名 | 原子力 発電容量 (万kW) |
原子力 発電実績 (億kWh) |
国内 原子力発電 占有率 |
原子炉数 | 特記事項 | ||||
操業中 | 建設中 | 建設中 発電容量 |
計画中 | 提案中 | ||||||
1 | アメリカ | 10,220 | 7,904 | 19.2% | 104 | 1 | 122 | 13 | 13 | 核兵器保有国。「フクシマ事故」の影響と天然ガス価格の下落で計画中案件は流動的。 |
2 | フランス | 6,313 | 4,235 | 77.7% | 58 | 1 | 172 | 1 | 1 | 核兵器保有国。 |
3 | 日本 | 4,440 | 1,562 | 18.1% | 50 | 3 | 304 | 10 | 3 | ”建設中”の原子炉は中国電力島根発電所3号機と電源開発大間原発1・2号機と見られる。大間2号機はまだ建設未着手。 |
4 | ロシア | 2,416 | 1,620 | 17.6% | 33 | 10 | 916 | 24 | 20 | 核兵器保有国 |
5 | 韓国 | 2,079 | 1,478 | 34.6% | 23 | 4 | 521 | 5 | 0 | |
6 | カナダ | 1,417 | 883 | 15.3% | 20 | 0 | 0 | 2 | 3 | |
7 | ウクライナ | 1,317 | 849 | 47.2% | 15 | 0 | 0 | 2 | 11 | 2030年までに新規原子炉2基建設の予定。 |
8 | ドイツ | 1,200 | 1,023 | 17.8% | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 | フクシマ事故の影響で6原子炉を閉鎖、既存の9原子炉も段階的に閉鎖。 |
9 | 中国 | 1,188 | 826 | 1.8% | 15 | 26 | 2,764 | 51 | 120 | 核兵器保有国。2020年までに70GWhにする計画。現在の約7倍。 |
10 | イギリス | 1,004 | 627 | 17.8% | 16 | 0 | 0 | 2 | 11 | 核兵器保有国 |
11 | スエーデン | 940 | 581 | 39.6% | 10 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
12 | スペイン | 745 | 551 | 19.5% | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 段階的廃止の予定はないが、スペイン政府は将来の増設については未確定と発表。現状維持と見られる。 |
13 | ベルギー | 594 | 459 | 54.0% | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 今のところ原発は段階的に廃止の予定。 |
14 | 台湾 | 493 | 404 | 19.0% | 6 | 2 | 270 | 0 | 1 | 建設中の2基はGEがゼネコン。原子炉は日立と東芝が受注。2基の発電機は三菱重工が受注。激しい住民の反対闘争でここ20年「建設中」。 |
15 | インド | 439 | 289 | 3.7% | 20 | 7 | 530 | 18 | 39 | 核兵器保有国。 |
16 | チェコ共和国 | 376 | 267 | 33.0% | 6 | 0 | 0 | 2 | 1 | |
17 | スイス | 325 | 257 | 40.9% | 5 | 0 | 0 | 0 | 3 | フクシマ事故の影響で、反原発集会の後2011年5月政府は原発の禁止を決定。2034年までに現在5基の原子炉を順次閉鎖。 |
18 | フィンランド | 274 | 223 | 31.6% | 4 | 1 | 170 | 0 | 2 | 2012年時点で2020年までに操業の計画。 |
19 | ブルガリア | 191 | 153 | 32.6% | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2004年と2007年の4原子炉閉鎖。2012年3月計画中案件は正式に中止となったがWNAは掲載している。 |
20 | ブラジル | 190 | 148 | 3.2% | 2 | 1 | 141 | 0 | 4 | |
21 | ハンガリー | 188 | 147 | 42.2% | 4 | 0 | 0 | 0 | 2 | |
22 | スロバキア | 182 | 143 | 54.0% | 4 | 2 | 88 | 0 | 1 | |
23 | 南アフリカ共和国 | 180 | 129 | 5.2% | 2 | 0 | 0 | 0 | 6 | |
24 | メキシコ | 160 | 93 | 3.6% | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | |
25 | ルーマニア | 131 | 108 | 19.0% | 2 | 0 | 0 | 2 | 1 | |
26 | アルゼンチン | 94 | 59 | 5.0% | 2 | 1 | 75 | 1 | 2 | |
27 | イラン | 92 | 0 | 0.0% | 1 | 0 | 0 | 2 | 1 | 最初のブシェール発電所が完成シタガ2011年は実用発電していない。ロシアとターンキー方式。 |
28 | パキスタン | 73 | 38 | 3.8% | 3 | 2 | 68 | 0 | 2 | 核兵器保有国 |
29 | スロベニア | 70 | 59 | 41.7% | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 隣国クロアチアが原子力発電所の50%を所有している。クロアチアにも電力供給を行っている。 |
30 | オランダ | 49 | 39 | 3.6% | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | |
31 | アルメニア | 38 | 24 | 33.2% | 1 | 0 | 0 | 1 | 2 | アメリカの支援で計画は既存の施設を入れ替え。進展がない。 |
合 計 | 37,415 | 25,180 | 13.4% | 436 | 61 | 6,141 |
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別表2:地域別原子炉 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
2012年11月現在:単位は万kW
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原発保有国はわずか31か国 |
英語Wikipedia “Nuclear power by country”はその項目冒頭で次のように述べている。 「原子力発電所は30か国で操業されている。『フクシマ・ダイイチ核惨事』の前の2010年、1年間平均約10基の原子炉が操業を開始すると見られていた。世界原子力協会(World Nuclear Association)によると、2005年から2007年の間で17基の民生用原子炉が操業を開始する予定だった。しかし17基のうち実際軌道に乗っているのは5基のみである。」 この記述はやや古く現在世界で原発を保有している国は、2011年ブシェール原発の操業を開始したイランを含めて31か国である。現在国連加盟国は193か国であるが、世界で原発を保有している国はわずかに31か国しかない、ということになる。また原発保有国の中でスイスと台湾は国連に加盟していないので、国連加盟国の中で原発を保有している国は29か国しかないということになる。 世界原子力協会(World Nuclear Association)はロンドンに本部を置く原子力業界の世界的な業界団体である。日本語Wikipedia 『世界原子力協会』によると、1975年に設立された『ウラン協会(Uranium Institute)』が前身で2001年に改組されたという。『核産業』の人たちはよほど『核』という日本語がきらいなようだ。英語で“Nuclear Power Station”を『原子力発電所』としてみたり、“Nuclear Reactor”を『原子炉』と訳してみたりする類である。しかし“World Nuclear Association”を世界原子力協会と訳すのはやり過ぎであろう。(定着した用語なので私はこれに従うが)『核』(Nuclear)と『原子力』(Atomic Power)は別物である。恐らくは『核』という言葉の軍事的響きを嫌って『原子力』という言葉のもつ平和的、科学的なニュアンスを一般大衆にイメージづけたいのだと思う。 英語Wikipedia “Nuclear Reactor by country”は次のように書いている。 「2011年6月現在、ドイツとスイスは原子力発電の段階的解消を進めている。また2011年6月現在、オーストラリア、オーストリア、デンマーク、ギリシャ、イタリア、アイルランド、ラトビア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルグ、マレーシア、マルタ、ニュージーランド、ノルウエイ、ポルトガルといった諸国は原子力発電に反対の立場をとっている。」 |
ドイツ・第2次メルケル政権の大転換 | ||||||||||
フクシマ事故の後、ドイツのメルケル政権は自国内の原発の段階的解消を決定したことはよく知られている。国内に堰を切ったような反原発パワーが渦巻いた。これを見たメルケル政権は、このまま原発推進政策を続けていては政権が持たないと考えた。 『社会民主党(SPD)のシュレーダー政権は2000年、90年連合・緑の党との連立の下で20年ごろまでの原発全廃をめざした。05年の総選挙でキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が勝ち、SPDと大連立を組んで発足した第1次メルケル政権は脱原発路線を継続。ところが09年、大連立を解消して成立した第2次メルケル政権は、世界的な「原子力ルネサンス」の流れに乗って原発推進に転じていた。』と朝日新聞のベルリン支局長松井健一は、2011年6月に書いている。(<http://globe.asahi.com/feature/110417/01_2.html>) ところがフクシマ事故が起き、2011年5月14日メルケルは再び原発推進から大きく舵を切って、原発推進から脱原発の方針を発表する。翌15日、この後は再び松井の記事を引用する。 「1980年までに運転を始めた古い原発7基の一時停止も決めた。『まるでローマ法王が突然、ピルを奨励するようなもの』(シュピーゲル誌)というほど唐突で急な方針転換だ。』」 「メルケル政権は(2011年)6月半ばまでに、安全基準の強化や早期の脱原発を含む新たなエネルギー政策をまとめる。事故後に止められた7基と、もともと止まっていた1基が、3カ月の凍結期間の後、そのまま廃炉にされるとの見方もある。」 結局もともと止まっていた原子炉も閉鎖廃炉の決定が下され、計8基が閉鎖廃炉、それまで17基だった原子炉は現在9基が稼働している。しかし今のところ原発の段階的解消はゆるがない。 |
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原発依存国スイスも段階的解消へ | ||||||||||
スイスのケースはどうであろか?2011年5月25日付けニューヨークタイムズは、ジェームス・カンター(JAMES KANTER)の署名入り記事で『スイス、原発の段階的解消を決定』(“Switzerland Decides on Nuclear Phase-Out”)を掲載している。少しばかり引用しておきたい。 「スイス政府は水曜日(2011年5月25日)原子炉新規建設計画の放棄を決定した。一方でEUの規制当局は、波紋を広げ続ける日本の惨事(フクシマ事故)を反映して、保有原子炉の耐性評価の枠組みに合意した。スイス政府エネルギー相ドリス・ロイトハルト(Dori Leuthard)は、3月11日の地震と津波の後日本のフクシマ・ダイイチの原子炉を直撃した事故の後、3基の新規原子炉承認プロセスを保留していた。水曜日-2万人の大群衆を集めたスイスの反原発集会の数日後-内閣は原発禁止が永久的なものであると決めた。スイスは5基の原子炉を有しており国内電力の約40%をまかなっている。5基の原発は操業の継続を許されるが、寿命が尽きたら更新は許されない、内閣は言明した。最後の原発が寿命ラインに達するのは2034年である。 内閣はその声明の中で、フクシマの原因となった地震や津波など重大な損害に直面する危険を減じたいとするスイス国民の要望に対応したものであると述べている。」 ニューヨークタイムズの記事の引用はここらへんでやめるが、この記事は長文で、直接的にはスイス政府の決定を報道するものだが、フクシマ事故が与えたヨーロッパ各国へのインパクトについても触れている。もちろんドイツ政府の原発段階的解消についても触れている。さらに加盟27か国で143基の原子炉が操業中のEU全体の反応にも触れている。 英語Wikiの記述に戻る。 「30か国(現在はイランを含め31か国)の原発操業国で、フランス、ベルギー、スロバキアの3か国のみが原発を国内電力の第一次電源ソースとしている。他方30か国の多くがかなりの原発発電容量を有している。<引用が必要、との注意書きがつけられている> 世界的な原発主唱業界団体世界原子力協会によれば、45か国以上が原発導入に真剣な考慮を払っているという。協会によれば、これら検討を加えている国々のうちトップを走るのは、イラン、アラブ首長国連邦、トルコ、ベトナム、ベラルーシ、ヨルダンなどの諸国である。また中国、韓国、インドは意欲的に原発拡大を追求しているという。特に中国は2020年までに6000万kW、2030年までに2億kW、2050年までに5億kWの意欲的な拡大計画を持っている。韓国は2012年の2070万kWから2020年には2730万kW、2030年には4300万kWの拡大計画を持っている。インドは2020年までに2000万kW、2032年までに4300万kWの計画。」 興味深いことに日本の動向については全く触れられていない。もし野田民主党内閣が『2030年代での原発ゼロ』を閣議決定していれば、この英語Wikiでも必ず「日本政府は2030年代までに原発を停止すると決定した」と書いたはずだ。『閣議決定』はそれほど重いことだ。閣議決定とは時の政府の決定であり意志表示だ。 「45か国以上が原発導入に真剣な考慮を払っている」という日本の経済界が聞いたら飛び上がって喜びそうな景気のいい話は、原発推進の世界的業界団体、世界原子力協会がネタ元だから若干割引して聞いておかねばならない。ネタ元の世界原子力協会のWebサイトは、さらに国別の詳細な情報を掲載している。 (<http://www.world-nuclear.org/info/inf102.html>) 一種の営業トークではあるが、気になる国について見ておこう。 (「 」内は世界原子力協会のWebサイトからの引用) |
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着々と原発再開に進んでいたイタリア、国民投票で原発否決 | ||||||||||
【イタリア】 イタリアは前ベルルスコーニ政権が原発再開計画を進めて来た。イタリアに限らないが原発を推進するグループはどこでも利益のためには人の命や健康を犠牲にすることを全く厭わない『死の商人の思想』の熱狂的支持者である。ベルルスコーニもまたその一人だ。 『フクシマ惨事』の後の2012年5月11日・12日の両日、イタリアはベルルスコーニ政権が提案した原発再開の是非を問う国民投票を実施した。この国民投票は投票率50%以上でないと成立しないとされたが、最終投票率は54.79%で国民投票は成立した。原発再開に反対した人は全体の94.05%でベルルスコーニの提案は葬り去られた。このことを念頭において以下の世界原子力協会の記述を読んで見よう。 「石油とガス及び輸入に対する依存が高いため、イタリアの電力価格はEUの平均より45%も上回っている。(原発なしでは電気料金が高くなると言うキャンペーンはどうも日本だけでなく世界中で行われているものと見える) 現在イタリアは自前の原子力発電を持たない唯一のG8諸国である。そして世界最大の純電気輸入国である。【実質的にその需要の約15%】ほとんどがフランスからの原子力発電に依存している。これは基礎負荷電力容量で約600万kWに相当する。 しかしながらイタリアは民生用原子力発電のパイオニアの一人であり、1963年から1990年の間に5-6基の原子炉を建設していた。しかし1987年11月に行われた国民投票の結果、その投票は18か月前のチェルノブイリ事故に対する憤激の結果だが、原子力開発は大きくストップした。1988年イタリア政府はすべての核施設建設の停止、既存原発の閉鎖、1990年からの廃炉を決定した。以来15年間イタリアは核エネルギー分野ではほとんど動きを見せなかった。2004年新エネルギー法は原子力発電所に関連して外国企業との合弁事業とそこからの電気の輸入を可能とする道を開いた。このことは明確な世論の変化をもたらした。特にイタリアの若い世代が原子力発電に好意を抱くようになった。 2005年フランス電力公社(Electricite de France)とイタリアのエネル社(Enel)が共同操業協定に調印し、フランスのフラマンビル(Framanvill)原発新3号機欧州加圧水型原子炉(EPR-170万kW)から約20万kWの供給を受けることになり、また次に建設予定の5基の原子炉から100万kWの供給を受ける道も開かれた。イタリアのエネル社は出資比率12.5%であるが、同原子炉の設計・建設・操業にも関与することとなり、このことはイタリアの電力安定を強化することになりまたイタリア経済の改善にも寄与することになろう。エネル社はフランスのペンリー(Penly)に建設中の2番目のEPR原子炉についても12.5%出資すると発表した。 またエネル社はスロバキア電気の設備の66%を買収した。スロバキア電気(SE)は6基の原子炉を操業している。またエネル社は2005年に(スロバキアの)モホッフェ(Mochovce)原子力発電所(現在94万2000kW)の完成に必要な16億ユーロ(1600億円。1ユーロ=100円)を含んでスロバキア政府からSEに対する投資計画の承認を受けている。」 |
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スペイン『エンデサ』買収劇 | ||||||||||
随分景気のいい話が続いているが、スロバキアは1993年旧チェコ・スロバキアから分離独立後国有資産の民営化を次々と実施、2003年にはスロバキアの電気供給や鉄道を一括運営するスロバキア電気の民営化を実施した。(<http://m.publicservice.co.uk/feature_story.asp?id=779>)そのため、イタリア・エネル社の投資が可能となったものである。この話は随分示唆に富む。 旧ソ連の崩壊、東欧諸国の『民主化』は一面『資本の自由化』でもあった。このことは東欧諸国が有していた国民の国有財産・資産を西側大規模資本に切り売りすることでもあった。ロシアも一時エリツィン政権の時に旧ソ連の国有資産・財産を西側資本に食い荒らされかけたことがあった。大スラブ主義の旗印を掲げて登場したプーチン政権はこの動きを阻止し、ロシア国民の手に取り戻した、という側面がある。アメリカの“プーチン嫌い”は直接にはこのことに起因している。『自由化・民主化』と浮かれていないで、経済的には何を意味するかをじっくり考えてみる必要がある。同時に日本の『郵政民営化』が何を狙ったものであり、アメリカに絶対的に後押しされた小泉政権の政策意図はなんであったかを考えてみる必要がある。はっきりしていることは、莫大な実質資産をもつ日本の郵政の民営化(それはわかりやすく言うと郵政の切り売りである)は、日本の大規模金融資本のみならず西側(特にアメリカの国際金融資本)が渇望している事実上最後の“金鉱”だという点だ。経済規模の小さいスロバキアは国民の財産・資産を切り売りして生きているということでもある。 世界原子力協会の『イタリア』に関する記述を続ける。 「それからエネル社は2009年2月にスペインのエンデサ社の株式を2009年までに92%買収した。エンデサ社は3基の原子炉を保有している。」 エンデサ(Endesa, S.A.)はスペイン最大の電力会社である。もともとはスペイン国営の電力会社だったが1988年株式を公開し民営化の道を歩んだ。2000年欧州連合による電力自由化の基準(2003年までに加盟各国は電力市場の33%を自由競争市場に移す)に合わせてスペインの電力市場の完全自由化が決まった。これに関して日本語ウィキペディア『エンデサ』は『エンデサに対するM&A』の項目で興味深い記述を行っている。引用しておく。 「しかし2006年以降、エンデサ自体がM&Aの対象となり、スペインのエネルギー事業を誰が握るかをめぐって政治問題に拡大している。まず2005年にバルセロナに本拠を置くスペイン最大のガス会社ガス・ナトゥラル(Gas Natural)が敵対的買収を仕掛け、次いでドイツのE.ON(エーオン)、イタリアのエネルが買収に名乗りを上げた。外国企業がスペインの電力の最大業者を傘下に置くことに対する経済ナショナリズムから来る反発がある一方、社会党の影響力の強いカタルーニャの企業の傘下になることを嫌う右派のエンデサ幹部やメディアはむしろドイツのE.ONの子会社になることを望んだ。2006年2月、スペイン政府は条件付でガス・ナトゥラルによる買収を認めたが、E.ONはさらに6兆円を超える巨額の買収金額を提示していた。しかし2007年4月、E.ONはエンデサ買収を断念、エネルとスペインの建設大手アクショーナが7兆円近くでエンデサを買収することとなった。これに対して欧州委員会はスペイン政府が自由化に逆行するさまざまな政策を行い、買収合戦に介入・関与し資本移動の自由を損ない欧州共同体競争法に違反したとして欧州司法裁判所に提訴している。」 世界原子力協会のイタリアに関する記述を続ける。 「2008年5月新たなイタリア政府は2030年までに8基から10基の大規模新型原子炉を買収することによって国内電力需要の25%をまかなうとした。」 その後イタリアの原発推進派はさまざまな新しい法律を導入し着々と原発再開に向けて手を打っていったのだが、前述のように国民投票で敗北した。世界原子力協会の記述はこの国民投票のいきさつについても悔しさを滲ませながら触れているが、全くあきらめた風はない。『フクシマ事故』は、チェルノブイリ事故後営々として築いてきたイタリアの原発推進派の努力を一挙にフイにしてしまったのである。 |
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期待を込めるノルウエイの産業界 | ||||||||||
【ノルウエイ】 およそ3000万kWの発電容量を持つノルウエイはほとんど全ての電気を水力発電でまかなっている。現在のところ原発導入の計画もない。しかし世界原子力協会は期待を込めて不穏極まる状況を次のように記述している。 「ノルウエイの産業界指導者たちは水力発電の補完として核エネルギーを望んでいる。彼らはトリウムをベースにした原子力発電が将来のエネルギー危機を防止するものだと信じている。」 トリウムはアクチノイド系の重金属で天然に存在する同位体はトリウム232だけである。世界各国に結構豊富に存在する。トリウム232は中性子1個を獲得(吸収)すると不安定な同位体トリウム233になる。トリウム233は2回のβ崩壊の後ウラン233に元素変換する。ウラン233は核燃料になるため、その原料であるトリウム233もまた核燃料として扱われている。ノルウエイにはトリウムが大量に埋蔵されているという。 「2008年2月政府が任命した委員会はトリウムを核燃料とした原子炉建設の可能性を探るためハルデン研究炉を使って試験すると報告した。委員会は、ノルウエイは核エネルギー分野で国際協力をもっと強化すべきでありまた核科学技術における人的資源を開発すべきであると言明した。」 「ノルウエイはハルデン研究炉からの使用済み核燃料を12トン保有している。2010年初めこれら使用済み核燃料は再処理のためロシアのマヤック核処理工場に搬送さるべきであると勧告された。この場合ウラニウムは黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(RBMK。ロシア独自開発の原子炉)の燃料及プルトニウム混合燃料としてプルトニム再処理に使用されることになるだろう。」 チェルノブイリ事故以来、ノルウエイは原発を国内に導入しないことを方針としてきたが、国内産業界や世界原子力協会などの原発導入の期待は大きいようだ。 |
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原発縮小の一途をたどる西ヨーロッパ | ||||||||||
ここで西ヨーロッパ諸国を見てみよう。西ヨーロッパ諸国といういい方ではなくEUという括りで見てみる事もできるし、それが一般的でもある。しかしEUという括りで原発の動向を見ることには無理があるように見える。というのは同じEUでも西ヨーロッパと東ヨーロッパでははっきりとした傾向の違いがあるからだ。前述のように、オーストリア、デンマーク、ギリシャ、イタリア、アイルランド、リヒテンシュタイン、ルクセンブルグ、マルタ、ノルウエイ、ポルトガル、イタリアなどは以前からはっきり原発非導入の方針を打ち出している。東ヨーロッパで原発非導入の方針を出しているのはラトビアとリトアニアだけだ。(バルト三国のラトビアとリトアニアを東ヨーロッパに分類するのは問題があるが旧ソ連圏という意味で東ヨーロッパに分類した) 【リトアニア】(2012年11月26日追記) 実はリトアニアは2009年まで原発保有国だった。しかもそれまで国内電力の70%から80%までを原発に依存する『原発大国』だった。それが2009年にスパッと原発をやめ、2010年から原発シェア・ゼロになる。しかしその事情は、反原発の動きとは全く別である。むしろリトアニア国民は原発支持のように見える。ここでは2012年に新たな沸騰水型原子炉建設が日立製作所の間で締結されたことだけを確認しておこう。 リトアニアが原発を廃止した理由は、EU加盟問題と関係している。世界原子力協会のリトアニアに関する記述を引用する。 「リトアニアの保有していたのは2基の大型ロシアRBMK型原子炉であった。建設が開始されたのは第1号機が1978年(操業開始は1983年)、2号機が1986年だった。」ソ連の崩壊後原発の所有権は旧ソ連からリトアニアに移管される。
その後事故を起こしたチェルノブイリ原子炉と同型のリトアニアの原子炉に対する隣国の懸念は高まる。ここで発電された電気はリトアニアの需要を満たすだけでなく、隣国のラトビア、ベラルーシ、ロシアのカリーニングラード近郊にまで供給された。最盛期原発電力の42%までがこうした地域に輸出されていた。原子炉の改良の話が持ち上がり、1994年、ヨーロッパ再建再開発銀行(European Bank for Reconstruction and Development -EBRD)の核安全枠(the Nuclear Safety Account)から3680万ドルの融資に合意して原子炉の改良をすることになった。これには隣国、特にスエーデンからの支持があった。 2004年リトアニアはEUに加盟申請をすることになった、EUの強い懸念はチェルノブイリ原子炉と類似型のリトアニアの原子炉だった。そこで加盟の条件として1号機・2号機の閉鎖廃炉を求めた。リトアニアはこの条件を飲んで1号機を2004年までに閉鎖、2号機を2009年までに閉鎖することとし、実行された。この時閉鎖について国民投票までおこなわれ、国民の圧倒的大多数は閉鎖に反対票を投じた。一つには原発地元の経済が衰退するということ、もうひとつは電力が同国の重要な“輸出品目”だったためだ。しかし結局EU加盟の圧力が勝って2つの原子炉は閉鎖となり、現在廃炉中である。廃炉の費用と廃炉の一部補償は2013年までEUが負担することになっている。閉鎖後、リトアニアに対してはロシアが電力供給を行っているが、「安かった同国の電気料金は原発停止に伴って大幅に上昇した」と世界原子力協会は書いている。 原発を廃止したリトアニアはこの時決して脱原発を国策としたわけでない。あくまでEU加盟のためである。EUもリトアニアに“脱原発”を望んだわけではない。
と世界原子力協会は書いている。ところでここの記述は極めて興味深い。というのは原発建設の陰には必ず国際金融資本が存在するからだ。世界に原発を推進する、その陰には必ず国際金融資本が存在する、この関係についてはあらためて報告記事を書きたいが、先進国では国内に大手金融資本が存在するため、『原発と金融資本』の関係が不鮮明だが、東ヨーロッパのように国内に資本の蓄積が乏しい諸国では、この関係が一層鮮明となる。わかりやすくいうと原発作るならファイナンスしますよ、投資しますよ、というわけだ。世界原子力協会の記述を続ける。
このプロジェクトは49.2億ユーロ(1ユーロ=100円で4920億円)の大型プロジェクトになる。残り20%は日立製作所が出資する。建設許可と原子炉設置許可は2015年までにおりる見通しだと、世界原子力協会は書いている。 ところがこれで終わらない。2012年10月にリトアニア議会総選挙とビサギナス計画の是非を問う国民投票が同時に行われる。この後は日本語ウィキペディア『2012年リトアニア議会選挙』と『原発新設の是非を問うリトアニアの国民投票』から引用する。 まず議会選挙は一院制総議席171のうち中道左派政党であるリトアニア社会民主党が第1党に躍進(38議席)、中道右派でそれまで与党だった祖国同盟=リトアニアキリスト教民主党は第2党(33議席)に後退した。第3党の労働党は29議席で19議席増の大躍進である。またビサギナス計画の是非をめぐる国民投票の結果は投票率52.58%で国民投票成立、計画に賛成が34.09%、反対が64.77%でビサギナス計画に反対が多数を占めた。イタリアの国民投票ほどはっきりした結果ではないが、国民の半数以上が国民投票に参加し、そのうちおよそ2/3が原発新規建設に反対したことになる。国民投票の結果はあくまで参考として止められるが、新しく成立したリトアニア社会民主党政権ははっきり「原発反対」を打ち出しており、ビサギナス計画は一挙に流動的になった。2004年のEU加盟の条件だった旧ソ連型原子炉廃炉の是非を問う国民投票の時は、圧倒的多数が存続賛成だったことを考えると様変わりといえる。この理由は2つある。一つは新規原発建設に思いのほか費用がかかり、それだけの投資にリトアニアが耐えられるか、という懸念。もうひとつはいうまでもなく『フクシマ大惨事』の影響である。今のところ情報不足で複雑な背景についてはわからないが、リトアニア国民もまた「原発にノー」の意志表示を示したことになる。新たな内閣がこの流れに逆らって、また公約に反してまでビサギナス計画を推進するとは非常に考えにくい情勢だ。 フクシマ事故を契機にイタリアが原発非導入の方針を国民投票で再確認したし、ドイツは方向転換し原発の段階的解消を打ち出した。またスイスも原発の段階的解消を打ち出した。 西ヨーロッパ諸国のうち原発を保有している国で原発堅持の方針を持っている国は、原発大国フランス、それからイギリス、スエーデン、スペイン、ベルギー、フィンランド、オランダの7か国にしか過ぎなくなっている。この7か国についても詳細に見てみると、スエーデン、スペイン、ベルギーの3か国は世界原子力協会の資料によっても、建設中はもちろん、計画中も提案中もないのだ。世界原子力協会の分類によれば『計画中』は8年から10年後に操業を期待できる、としている。『提案中』はほとんどの場合15年以内に操業が期待できる、としている。またこれら計画中や提案中はかなりの割合で世界原子力協会の営業期待値も混じっている。こうして考えると、スエーデン、スペイン、ベルギーがこの先まったく原発に前向きでないということはいえると思う。イギリスは計画中2件、提案中11件とこの先新規原発建設を考えているように見えるが、今から3年前も『計画中4件』、『提案中5件』だった。1988年にサフォーク州の寒村にあるサイズウェルB原発が建設開始(操業開始は1995年)になって以来、1基の原発も『建設中』になっていない。常に計画中、提案中である。逆に閉鎖廃炉処理となった原発は、2000年代に入ってからだけでも7基もある。今のイギリスの現状で新たな原発建設を行うには相当な政治リスクがある。市民社会の反原発運動が根強いからだ。 オランダは1件が提案中となっている。オランダの原発は1973年に商業運転開始という古い原発で発電容量も49万kW。続ける気なら新規原発をもう計画するかあるいは建設に入っていなければならない。しかしいつまでも提案中だ。オランダも市民社会の反原発運動に逆らってまで新規原発建設に踏み切るとは到底思えない。 従って西ヨーロッパで現在建設中の原発は原発大国フランスで1基、フィンランドで1基の合計2基のみだ。なおも原発に傾斜する東ヨーロッパ諸国とは全然様相を異にしている。 なぜ西ヨーロッパと東ヨーロッパでこうも原発に対する姿勢が違うのか?それを東ヨーロッパの原発動向、さらにはロシア、中国、韓国、インド、トルコ、ブラジル、メキシコなどの諸国を概観しながら考えてみたい。 |
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(以下次回) | ||||||||||
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別表3:原子力発電所を計画または検討している国 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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別表4:国内電力生産にしめる国別原発シェアの推移 2001年-2011年 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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