(2011.1.29)
No.019

沖縄県名護市に「ふるさと納税」しよう!

姑息・卑怯・卑劣極まる民主党・菅政権



 今日、私はあるグループメールを受け取った。(公表についてご本人の了解を得ていないので、匿名とする。)

さて、本日、名護市への「ふるさと納税」に関するメール、拝見いたしました。
以前より、名護市へ寄金をしたいと思っていましたので、大変、タイムリーなお知らせでした。

菅民主党政権の、大変卑劣な名護市への兵糧攻め、憤激の極みです。特に、 09 年度の繰越金までストップするとは、まさに契約違反です。
 
わたくしは、なんとか、本土の多くの人たちに、政府が出さないのなら、それにも増して人民が拠金して、政府の悪質なたくらみを粉砕し、沖縄と本土の巨大な連帯の意思を表明を出来ることを切望しております。
 
わたくしは、年金生活者ですが、2か月に一度出る年金支給日に、一年に亘り、貧者の一灯ですが、 5000 円ずつ 6 回に亘って「ふるさと納税」と言う名の寄付を行ないたいと存じて、今朝、名護市と連絡を取り、手続きを行なっています。

この募金を、もっともっと大きく広げて、米軍基地撤去の国民の意思を表明するためには、25 氏のアッピールだけでは弱いと思います。たとえば、安保破棄実行委員会、9 条の会、革新懇などなどの民主団体や平和運動の組織に呼びかけて、一大国民運動にする必要があると考えます。国民の一大運動になれば、アメリカ言いなりの菅政権への痛打となるでしょう。菅政権への大きな包囲網を作りたいと思います。』

 いったい名護市に何が起きているのか?

 すでにご存じの方も多かろうが、不勉強な私のためにおさらいをする。

 日本語Wikipedia「名護市」(<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E8%AD%B7%E5%B8%82>)を調べると、実に詳細な記述がある。

沖縄本島北部に位置し、総面積210.33km2で沖縄県の総面積(2275.94km2の約9.2%を占め、竹富町(334.02km2、石垣市(229.00km2に次いで3番目、また沖縄本島に属する市町村で最大の面積を有する。』

 しかし、名護市に関する記述で最も重要な1点が慎重に省かれ、ほとんど記載されていない。それはここにアメリカ海兵隊第3海兵遠征軍指揮下のキャンプ・シュワブが設置され、市の面積(約210平方キロ)の10%(20.43平方キロ)を占め、占めているばかりでなく、この基地に名護市が苦しめられてきた、と言う点だ。

 先の日本語Wikipedia「名護市」の記述は、「1958年 - 大浦崎収容所跡にキャンプ・シュワブ(在日米軍基地)の建設が始まる。ほぼ同時期に隣接するキャンプ・ハンセンの工事も開始された。」とわずかに歴史の中で触れるのみである。

 しかし、

1972年5月15日: 沖縄の復帰に伴い施設・区域が提供される。
1978年12月29日: 民家、畑、道路等に水陸両用車から機関銃の誤射がされた。
1981年8月14日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約22,000m2が焼失。
1981年11月20日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約60,000m2が焼失。
1982年2月19日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約12,000m2が焼失。
1984年5月18日: 実弾射撃訓練で発射された機関銃弾が、区域外に停車していた車両に命中。
1984年10月31日: 飛行中のCH-53ヘリコプターのドアが民間地に落下。
1985年8月29日: 廃弾処理により原野火災発生、約10,000m2が焼失。
1986年10月8日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約20,000m2が焼失。
1992年4月23日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約7,500m2が焼失。
1993年9月10日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約90,000m2が焼失。
1994年9月13日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約12,000m2が焼失。
1994年9月19日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約40,000m2が焼失。
1994年11月3日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約40,000m2が焼失。
1994年11月16日: 訓練中のUH-1ヘリコプターが基地内で墜落、1名が死亡し4名が重軽傷。
1995年9月19日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約10,000m2が焼失。
  1995年12月4日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約90,000m2が焼失。
  1996年12月16日: 水陸両用車両2台が訓練中に沈没(乗組員は全員救助)。
  2001年8月23日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約18,000m2が焼失。
  2002年2月5日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約14,000m2が焼失。
2002年2月20日: 実弾射撃訓練により原野火災発生、約285,000m2が焼失。』
日本語Wikipedia「キャンプ・シュワブ」より
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%
83%B3%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%
E3%83%AF%E3%83%96>


 というように、名護市民はキャンプ・シュワブに苦しめられてきたのである。しかも、上記の記述には、アメリカ兵の犯罪や交通事故、規則違反、市民ルール違反などは一切含まれていない。キャンプ・シュワブはまさに名護市を蝕むガン細胞なのである。

もっとも名護市の10%を占めるキャンプ・シュワブの1/4は私有地である。当然地主はいる。その地主に借り上げ料として年間約32億円が支払われている。もちろんアメリカ政府が払っているわけではない。日本政府、すなわち私たちの税金で支払われている。だからこの地代収入のおかげで潤っている地主もいる。一方で金はいらないから土地を返せ、といっている地主もいる。)

 この名護市に例の「辺野古」がある。普天間基地は宜野湾市にあるのだが、「1995年の沖縄米兵少女暴行事件を契機に、沖縄の米軍基地に反対する運動や普天間基地の返還要求をする運動が起こり、1996年当時では、5年から7年以内の返還を目標としていた。」
(<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%AE%E5%A4%A9%E9%96%93%E5%9F%BA%
E5%9C%B0%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E6%96%BD%E8%A8%AD%E7%A7%BB%E8%A8%AD%E5%95%8F%E9%A1%8C>
というとおり、当初は移設ではなく普天間基地の返還だった。それが、2006年「再編実施のための日米のロードマップ」(外務省<http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html>。ところで外務省はいつまでこの文書を「仮訳」のままにしておくのだろう。)では、「(a)普天間飛行場代替施設 * 日本及び米国は、普天間飛行場代替施設を、辺野古岬とこれに隣接する大浦湾と辺野古湾の水域を結ぶ形で設置し、V字型に配置される2本の滑走路はそれぞれ1600メートルの長さを有し、2つの100メートルのオーバーランを有する。」と定められた。

 すでにキャンプ・シュワブをかかえる名護市民がこの決定に大反対だったのは当然だろう。

 2010年2月に実施された名護市長選挙では、「沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設受け入れの是非が最大の争点となった同県名護市長選は24日投開票され、受け入れに反対する新人で前市教育長・稲嶺進氏(64)(無=民主、共産、社民、国民推薦)が、容認派で自民、公明両党の支援を受けた現職・島袋吉和氏(63)(無)を接戦で破って初当選した。」(<http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100124-OYT1T00692.htm>)さらに2010年9月に行われた名護市会議員選挙では、定数27のうち辺野古受け入れ反対派が16名、容認派が11名とここでも反対派が勝利をおさめた。(<http://www.youtube.com/watch?v=1MIID400RCg>のうち「基地移設反対派が勝利 政府移設作業が困難に」のビデオを参照の事)

 こうして名護市と名護市議会は政府に対して「辺野古移転」を受け入れない旨を民主党政府に申し入れた。これに対して菅民主党政権は報復措置をとったのである。琉球新報から引用しよう。

 まず2010年8月10日付けの「再編交付金手続き開始 名護市と防衛局」と題する記事(<http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-166173-storytopic-3.html)>)。この時は受け入れ反対の稲嶺市長がすでに誕生し、9月の市議会議員選挙の直前だったことを念頭に置いておいて欲しい。

名護市への再編交付金の交付が保留されている問題で、市と沖縄防衛局は10日までに、2009年度に交付が内示された事業の一部について、事前調整に入った。交付決定に向けた手続きが一歩前進した形だ。事前調整では、市の事業計画を沖縄防衛局が点検し、事業の適正性や添付資料の不備などを確認する。問題がなければ市から正式に交付申請書を提出し、あらためて審査した上で交付が決まる。
 
調整に入ったのは一部事業だが、市は09年度の未交付分である6事業、約6億円分について順次調整を進める。一方、10年度分についてはまだ内示がなく、調整の見通しも立っていない。
 
市は交付の見通しが立っていなかったことから、一部事業について、市民生活に支障を出さないために別財源を充てる検討も進めている。』

 菅政権・防衛省は市議会議員選挙の様子見だったことがわかる。

 ついで2010年9月3日の「名護市の反対が理由 再編交付金保留で沖縄防衛局真部局長」と題する記事(<http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-167127-storytopic-108.html>)。市会議員選挙が9月12日に迫っていたことを念頭に置いて欲しい。

真部朗沖縄防衛局長は2日の定例記者懇談会で、名護市への米軍再編交付金の支給が保留されている問題について、市側と調整しているとした上で、手続きが遅れている理由として、稲嶺進名護市長が普天間飛行場代替施設の建設拒否を公言していることを挙げた。再編交付金について定めた再編特措法施行規則は、再編実施への措置に遅延が生じ、市町村長が協力しない場合、年度交付額を減額やゼロにできるとしている。

一方で真部局長は「そういうこと(減額やゼロ)を念頭に置いているわけではない」とも説明した。

名護市への2009年度の再編交付金について、同年度、交付申請に至らず、防衛省は6事業約6億円を10年度に繰り越した。

交付の手続き遅れについては防衛省側と市の両方に理由があると説明。省側の事情としては代替施設の建設計画を再検討している途中であることを挙げた。

一方、市に対しては「市長が辺野古の海にも陸上にも造らせないと公式の場で累次に渡って発言している。現況調査の許可申請の答えもいただいておらず、関連の規定に照らしてどう評価するのか、まだ(交付の)結論は出てない」と語った。

政府が発表した代替施設建設の位置や工法などをめぐる専門家会合の報告書について、地元意見を聞く中で修正もあり得るとの認識を示したが、「最終的な決定は政治レベルの判断だ」と指摘した。』

 菅政権・防衛省が名護市民に最後の揺さぶりをかけ、市議会議員選挙に影響力を行使しようとした跡がありありと見て取れる。

 そして2010年12月24日付け「再編交付金、名護市支給見送り 防衛省が方針」の記事(<http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-171541-storytopic-108.html>)である。

 防衛省は、名護市への再編交付金支給を保留している問題で2009年度から繰り越しされている約6億円(6事業)について、交付しない方針を23日までに固めた。24日に方針を発表し名護市へ伝える。同省は10年度分約10億円についても交付しない方針を固めた。
 
名護市は、稲嶺進市長が2月に就任して以来、米軍再編で明記された普天間飛行場の辺野古移設を拒否している。同交付金が再編の負担に応じ自治体に支給されることから「法律の趣旨との整合性が取れない」(同省幹部)、「負担を受け入れている他の自治体に不公平感が出る」(首相周辺)ことが、交付しない理由とみられる。
  
 同省や沖縄防衛局は23日までに不交付について名護市へ連絡していない。

 名護市と防衛局は8月までに、09年度の繰り越し分の事業の一部について事前調整を始め、同局は今月23日までに4事業について市が提出した交付申請書を受理していた。
  
 名護市への再編交付金は07年度と08年度に計13億9千万円が交付されている。』

 つまりは、再編に協力する間は金を出してやるが、受け入れなければ金は出さないぞ、ということだ。

 岩国市で米軍岩国基地拡張・厚木の第5空母航空団(いわゆる空母艦載機)移設に反対する前井原勝介市政に対してとったのと同じ手口である。

 困るのは、名護市である。「再編交付金」と言いながら、名護市の予算はすでに一年前に計画され予算計上されて、市の事業が決まっている。金が入ってこなければ予定していた事業が出来ず、市民生活に支障が出る。逆に言えば菅政権・防衛省はそのことを知り抜いている。いわば人の弱みにつけ込むやりかただ。私が姑息・卑怯・卑劣というのもこの点にある。

 しかし名護市はへこたれなかった。2008年(平成20年)5月からスタートした「ふるさと納税制度」に目をつけたのである。「ふるさと納税」は何も地元出身者が「ふるさと」に納税するケースばかりではない。名護市出身者でなくても、名護市に住民税を支払うことができるのである。

 名護市のWebサイトから引用しよう。

ふるさと納税制度は生まれ育った“ふるさと”を応援したい、貢献したいという思いを寄附の形で実現する制度です。寄附先は生まれ育ったふるさと以外でも、応援したいと思う都道府県、市町村を選ぶことができます。寄附をした場合、お住まいの自治体の住民税などから控除されます。

  名護市では、平成20年9月に「名護市ふるさとまちづくり寄附金条例」を制定し、地域経済活性化・雇用創出、子ども支援・健康生きがいづくりなどの事業に、ふるさとを想う皆様からの寄附金を充てさせていただき、個性豊かなふるさとまちづくりを推進しようとするものであります。』
(<http://www.city.nago.okinawa.jp/5/4969.html>)

 この制度を利用して、沖縄ばかりでなく本土で名護市を応援しようという人たちに大々的に寄付を呼びかけたのだ。再び同サイトを引用する。

・税控除の対象となるのは、5,000円を超える分から住民税の概ね10%までです。
・寄附金受領証明書を、お住まいの地域で毎年の確定申告で提出して下さい。
・住民税は寄附をした翌年度から、所得税は寄附した年分から控除されます。』

 つまりこの寄付は堂々と税額控除されるのだ。つまり自分の住む自治体に納める住民税を一部割いて名護市に振り向けることができるのだ。このことは、自分の住む自治体が、名護市に寄付することでもある。ただし通常支払う住民税の10%までが目安というから気をつけて欲しい。

 名護市のサイトの「名護市ふるさとまちづくり寄附者一覧ページ」(<http://www.city.nago.okinawa.jp/6/5296.html>)を見てみると、圧倒的に2010年以降、特に菅政権・防衛省が交付金支払いを渋りはじめた2010年6月以降が多い。

 冒頭に紹介したメールの方と同じ思いであろう。

 冒頭のメールを再び引用しよう。

わたくしは、なんとか、本土の多くの人たちに、政府が出さないのなら、それにも増して人民が拠金して、政府の悪質なたくらみを粉砕し、沖縄と本土の巨大な連帯の意思を表明を出来ることを切望しております。・・・安保破棄実行委員会、9 条の会、革新懇などなどの民主団体や平和運動の組織に呼びかけて、一大国民運動にする必要があると考えます。国民の一大運動になれば、アメリカ言いなりの菅政権への痛打となるでしょう。菅政権への大きな包囲網を作りたいと思います。』

 先ほどの「寄付者一覧」の「ご意見・応援メッセージ」の項目を読むと、

辺野古・久志・豊原区の浄化槽設置など海を守るために使用してください。稲嶺進市長または基地反対の市長が続く限りふるさと納税を続けます。』
基地のない平和なまちづくりを祈っています。』
どうか軍事優先主義者に負けずに基地反対を貫いて下さい。少ないながらも稲嶺市政を応援すべく寄附いたします』
辺野古への基地建設に反対する辺野古のすべての勇気ある人々に心から敬意を表し応援します。こんなことしかできなくてごめんなさい。』・・・・・・。

 読んでいるうちに思わず目頭が熱くなる。

 今、チュニジアやエジプトでアメリカの傀儡政権を倒そうという動きがある。私たち日本の市民もいつまでもアメリカの傀儡政権とそれを支える官僚の支配のもとで暮らしていていいわけはない。私たちも続こう。ただし私たち日本の市民のやりかたで・・・。